不動産におけるエージェントの業務責任について

お世話になります。まず、今何か実際に問題が起こっているわけではありません。未然のご質問です。
今不動産購入を検討しており、エージェントさんにご対応いただいています。
その方は、管理委託や売却も業務範囲とされており、一括で依頼することを考えています。
その方には、以下の業務も対応いただく予定になっております。
1)現賃借人への次回契約更新時に向けたスムーズな賃上げ打診や交渉
2)賃借人退去を早めに把握して、空室リスク最小化・賃料最大化を達成するための、効果的な募集活動
3)物件売却時の利益最大化を達成するための販売活動(囲い込みももちろんしない)
これらに関しては、基本、表現は直接そのものではございませんが、
内容的には、エージェント自身からご提案いただいたり、それが見込めると仰られてきたものであり、
そのことはメールやLINEチャットでも記録が残っております。
もちろん私も、ただ鵜呑みにするわけではなく、その実現可能性の裏取りはとっております。
ただ、あくまで実行いただくのはエージェントさんとなるため、
そのような状況下で、物件購入後に、エージェントさんが万一言われていた通りの業務をされなかった場合、
ひらたくいえば、約束通りに動いてくれなかったとした場合、
損害賠償を受け取ることにつなげることはできるものでしょうか?
なお、エージェントさんとは管理委託契約書を結ぶことになりますが、
その中に、業務範囲として、2に関して、単に募集の活動が含まれている点は書かれておりますが、
2に記載したような、その活動の「質」であったり、また、1や3についてはそのこと自体を、
契約書に書くことは難しい(不可)と、エージェントさんからはお伺いしています。
お手数おかけしますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

結論から申し上げますと、
エージェントが上記1)~3)の業務を行わなかったことを理由として
エージェントに対して損害賠償を請求を行うことは難しいように思われます。

まず、1つ目の理由としては、上記1)~3)の業務というのが具体的に何をするのかが明確ではないため、
エージェントが契約義務違反を行ったことを立証することが困難であるためです。

例えば、上記1)の業務として「スムーズな賃上げ打診」とありますが、
具体的に、一般的な賃上げ打診業務と比較して、どのような業務を行うのかが明確ではありません。
(Q&Aで質問する関係で簡潔に記載していただいているだけかもしれませんが、
その点は実際の法律相談ではなくQ&A出のご相談という特性上致し方ないことではございますので、ご容赦ください。)

また、上記2)の業務として「賃借人退去を早めに把握」「効果的な募集活動」とありますが、
具体的に、賃借人が退去することを早期に把握するために何をするのか、通常の募集活動と比べてどのような募集活動を行うのかが明確ではありません。

さらに、上記3)の業務として「利益最大化を達成するための販売活動」とありますが、
具体的に、通常の販売活動と比べてどのような販売活動を行うのかが明確ではありません。

以上のように、いずれも抽象的・曖昧な表現であるため、
そもそも【エージェントが通常の管理業務を超えて、特別な業務を行うことについて合意があったこと】を立証することは難しく、
その結果【エージェントが契約義務違反を行ったこと】を立証することも困難であるように思われます。

2つ目の理由としては、エージェントが上記1)~3)の業務を行わなかったことによって生じた損害を立証することが困難であるためです。

エージェントに対して損害賠償請求するのであれば、
エージェントが上記1)~3)の業務を行っていれば【利益】を得ることができていたのに、
エージェントが上記1)~3)の業務を怠ったせいで【利益】を得ることができなかったため、
質問者様が【損害】を受けたということを立証する必要があります。

しかし、上記1)~3)の業務は、
いずれも質問者様の利益を最大化し、損失を最小化するために【努力する】という話に過ぎず、
【結果を保証】するものではありません。
すなわち、「スムーズな賃上げ打診や交渉」を行ったとして、賃借人が賃上げに応じない可能性は十分考えられますし、
「効果的な募集活動」を行ったとして、新たな入居者が見つかる保証はありませんし、
「利益最大化を達成するための販売活動」を行ったとして、条件の良い購入希望者が見つかる保証はありません。

そうしますと、エージェントが上記1)~3)の業務を行わなかったことが原因で、
「賃借人が賃上げに応じてくれなかったこと」「新たな入居者が見つからなかったこと」「条件の良い購入希望者が見つからなかったこと」と立証することは困難であるように思われますので、
質問者様が損害を受けたことを立証することは難しく、
冒頭で述べましたように、エージェントに対して損害賠償を請求を行うことは難しいように思われます。