子供のいる夫婦が離婚した場合、特に親権を母親側が持った場合、元夫に対して養育費の支払いを請求するのが一般的です。
しかし、近年では養育費の未払いによるトラブルが社会問題化しています。この記事では、養育費の支払いをしてもらうにはどうしたらいいのかを解説します。
▼この記事でわかること
▼こんな方におすすめ

養育費とは「子供が経済的に自立するまでに要する費用のこと」です。
特に離婚した元夫婦の間で取り決めがされることが多く、具体的には収入の多い側(多くは元夫)が、親権者(多くは元妻)に対して子供の生活や教育に関して支払う費用のことを指します。
最近までは取り立てに関する法制度が甘かったことから、養育費の未払いによるトラブルが多く、社会問題化している部分もあります。ここでは養育費の未払いや滞納の実態について、さらには支払ってもらえない時にはどうしたらいいのかを説明します。
養育費を支払ってもらえない元妻(あるいは元夫)は意外に多いのが実情です。
実際、「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果」によると、養育費の支払いを受けられている、ひとり親家族は3割にも満たないことがわかりました。
さらに2020年6月からは、法務省で「養育費不払い解消に向けた検討会議」が行われているほど、養育費の未払いが社会問題化しています。
なお、教育費の未払いが問題となっていることを背景に、2020年4月より「改正民事執行法」が施行されました。
今回の法改正のポイントは、簡単に言うと以下のとおりです。
特に離婚協議書等で養育費について規定がある場合、相手が養育費の支払いに応じなかった場合には強制執行(財産の差し押さえ)という法的手続きをとることができます。
今回の法改正では強制執行をするために必要な「財産がどこに、いくらあるか」「どの会社から、どのくらい給料をもらっているか」といった情報が集めやすくなりました。したがって、強制執行がしやすくなり、結果として養育費を手にできる可能性が高くなった、というわけです。
いままで養育費の支払いを受けることを諦めていた方も、これを機に養育費の請求・回収をすることを考え直してみても良いかもしれませんね。
養育費に関しては、民事執行法が改正されたこともあり、回収しやすい環境は以前よりも整ってきています。では、実際の請求はどうしたら良いのでしょうか。
基本的には
などの方法が一般的です。これらの詳しい話について、以下で解説していきます。

実際に未払いの養育費を請求する場合、もらえる金額はどのくらいなのでしょうか。また、請求にあたってはどのような流れになるのでしょうか。養育費を請求する際に気をつけるべきポイントと共に、以下で見ていきましょう。
そもそも、請求できる養育費の金額はどうやって決まるのでしょうか。
離婚の際、あらかじめ養育費の金額について合意していれば、その内容に従って請求できます。
しかし、離婚する際に取り決めがない場合、口頭で曖昧な約束をしただけという場合もあるでしょう。そうした場合は以下の表をもとに、機械的に金額を決めるのが一般的です。
実際に養育費を請求する際の手続きは、以下のようになります。
実は、養育費を請求する際の流れはいくつかあり、調停や裁判を挟む場合もあれば、調停などを挟まずに強制執行をして終了、という場合もあります。ここでは弁護士に依頼した上で、調停などを挟まずに強制執行へと進む流れを中心にご紹介します。
まずは自分で連絡し、養育費を支払ってもらえるよう請求をしましょう。
この際、「請求した」という証拠を残すためにも、電話ではなく、メールやLINEなどを使い、文章として記録しておくことが後々のことを考えると有効です。
メッセージをスクショ・印刷するなどして保管しておくのも良いでしょう。
元夫(あるいは元妻)に養育費を支払うよう請求しても、相手が応じなさそうな時は、弁護士に相談するのも一手です。
養育費を支払う一定の合意があったと弁護士が認めれば、弁護士が内容証明郵便などを送り、相手に請求してくれます。
この場合、請求する人が弁護士、ということで、自分で連絡するよりも相手に支払ってもらえることも多くあります。弁護士によっては養育費の回収をより確実にするために、振込口座を(請求元の)個人の口座ではなく、弁護士事務所の口座を指定することも多く、一定の効果があるとも言われています。
また、「離婚協議書などの公正証書で既に養育費の支払いが規定されている」等、強制執行が可能な書面を持っている場合には、この段階で支払ってもらえる事も多くあります。
弁護士から養育費の支払いを請求しても払ってもらえない場合、あるいは自分で公正証書等の書類を持っており、かつ自力で法的手続きを進めたい場合は、強制執行の手続をとることになります。
強制執行とは、相手の給料、または銀行口座から強制的に養育費を回収できる手続きのことです。
強制執行をする際は、少なくとも下記の書類のいずれかがないと手続きを取れません。特に自力で強制執行の手続きをする際は、強制執行の根拠となる書類が手元にあるかどうか確認しておきしましょう。
【必要な書類の例】
強制執行は書面の準備や手続きなどが煩雑であること、法的な手続きであるがゆえのわかりにくさもあるため、弁護士に依頼するのも一案です。
強制執行が可能な書面を持っている場合には、そのまま強制執行へと進むことが一般的ですが、必ずしも合意文書があるとは限りません。そうした場合は「調停」という、家庭裁判所で話し合うための手続きを申し立てることになります。
調停で話がまとまると、調停調書という書面をもらいます。この書面は強制執行の際の根拠となる大事な書面です。
調停は自分でもできなくはありませんが、裁判所への申し立てであり手順もわかりにくい部分があるため、弁護士に相談するとより安心です。
調停を経ても話がまとまらない場合に、裁判所が出す結論を「審判」といいます。審判には強制力があるため、多くの場合、審判を経ると強制執行が可能になります。
審判に不服がある場合は裁判手続きに移行します。この場合、和解、判決のどちらの場合でも、強制執行が可能になることが大半です。
ただし実際には、養育費の問題で裁判になるケースはごく稀です。
裁判をしても相手が支払わない場合には、裁判所に対して履行勧告の申出ができます。裁判所が相手に対し、養育費を支払うよう勧告してくれます。
なお、履行勧告自体は弁護士ではなく、自分でも申し出ることができます。

未払い養育費の請求について、よくある質問を以下にまとめました。
【一旦「養育費はいらない!」と言ってしまった】
【口頭だけで養育費を取り決めている】
【公正証書ではない書面で養育費を取り決めている】
【面会交流と養育費について(1)】
【面会交流と養育費について(2)】
【未払い養育費のさかのぼり請求について】

養育費の支払いは子供が持つ権利であり、親が勝手に支払いをなくすことはできません。
もし養育費を支払う義務がある人が支払いをしない場合には、自ら、あるいは弁護士に依頼して養育費を支払うよう請求することができます。
2020年に民事執行法が改正され、以前よりも養育費の回収がしやすい環境になってきました。養育費の支払いが受けられずに困っている方は、これを機に未払いの養育費請求を試みてみてはいかがでしょうか。