ビジネスをする上で避けて通れないのが「契約書」。インターネット上からダウンロードできる雛形を利用する会社もあるようですが、問題はないのでしょうか。以下で詳しく見ていきましょう。
▼この記事でわかること
▼こんな方におすすめ

身近なようで意外によく知らない「契約書」。そもそも契約書とはどういうものなのでしょうか。
「契約書」とは、その取引に関して当事者両者が合意した内容が記載されている書面です。
具体的には、その取引について
といった取り決めを記した書面になります。
ちなみに、契約書には様々な種類があります。代表的なものについては後述します。
契約書の存在意義は大きく分けて2つあります。
特に二番目は重要です。ビジネスにおいては当初想定していなかったトラブルが起きることもしばしばあります。訴訟に発展することもあり得ます。そうした場合においても判断の基準となるのが契約書の内容になります。
従って、いざと言う時のことを考えると、どちらの立場で作成されたかも不明なネットに落ちている雛形を安易に流用するのはやめたほうが良いでしょう。

上でも説明した通り、契約書は取引の内容について書いてある書面です。従って、取引の内容が変われば当然、契約書の内容も変わります。
もっとも、よくある取引は法律や取引慣行によって一定程度、類型化されています。代表的なものとしては以下が挙げられます。
特定の商品について、継続的な売り買いが発生する際に差し入れる契約書です。企業活動において広く扱われるタイプの契約書です。
対象となる商品の定義や引き渡し方法、価格の決定方法など、取引の大枠について書かれている一方、具体的な金額や納入する品物の数などは、その都度注文書や請求書を発行する必要があります。
外注先などと締結する、仕事の依頼に関する契約書です。システム開発を外注先の会社にまるっと依頼する、等という場合に用いられる契約書です。
契約書を取り交わす当事者は、法人同士とは限りません。片方が企業で片方が個人、ということもあります。特に近年では社員としてではなく、業務委託として就労する個人が増えてきたこともあり、企業と個人との間で業務委託契約書が取り交わされる機会も増えているようです。
業務委託契約書の一種で、ものの製造が業務内容になっている契約書です。
業務委託契約書の一種で、顧問業務が業務内容になっている契約書です。
お互いの秘密を外部に漏らさない約束をする契約書です。NDA単体で使われることもありますが、売買基本契約書など他の契約書とセットで使われることも多くあります。
例えば商品を取引する際、程度の差こそあれ、通常であればその商品の製造技術や運搬方法等についても知ることが多くあります。その中には、他の企業に対する競争力の源泉、企業秘密が含まれていることもあり、これらの情報が外部に漏れると不利益を被る恐れがあります。そうした事態を防ぐために差し入れる契約書です。

実際に契約書を締結する際は、どういう手順を踏めばよいのでしょうか。ここでは契約書を締結する流れについてご説明します。
料金の決め方や対象物など、取引の大枠や重要事項について相手方と口頭で合意します。意見の相違がある場合は、相手方との交渉が必要なこともあります。
当事者の一方(Aさん)が、口頭で合意した内容を反映させた契約書ドラフトを準備して相手方(Bさん)に送付します。
契約書のドラフトを送付された相手方(Bさん)が、契約書をチェックします。その際、必要に応じて書面上で修正の提案を行います。
契約書をチェック・修正した当事者(Bさん)が、もう一方の当事者(Aさん)にチェック済みの契約書を送り返します。
お互いに文言に合意できない場合、この書面によるやり取りが繰り返されることになります。
すべて合意できた段階で、契約書の内容が決定することになります。
双方の当事者(Aさん・Bさん)が署名をし、押印します。当事者が企業であれば、基本的には代表印を押します。
署名押印の際は、書面ベースの契約書を2通用意し、2通とも署名・押印します。そのうえで、それぞれの当事者が1通ずつ保管するのが通例です。



ここまで読まれた方は、「契約書を交わすのって意外と大変」と思われたかもしれません。トラブルの少ない契約書を締結するには、誰に頼めば良いのでしょうか。
「誰に頼むか」の前に、そもそも、「後でもめない契約書」とはどうあるべきでしょうか。
契約書を作成する上で、大事なことは以下の2点です。
こうしたことを念頭に置いて契約書を作成するためには、一定程度の法律知識がないと自分だけで完結させるのは難しいと言えます。
これまでにご説明したとおり、契約書の作成やレビューは法律的な問題を含みます。しかも、適用される内容は個別の状況によって変わるため、契約の当事者と取引の実態についてディスカッションしながら作っていくのが望ましい姿です。
さらに、契約書の内容に当事者同士が合意できない場合、相手方との交渉も必要です。こうしたことに対応できるのは、外部の人であれば、弁護士のみとなります。
なお、取引の内容が完全に固まっている場合、それを書面にするだけなら行政書士でも対応ができます。しかし通常、契約書作成前にそこまで固まっている取引はあまり見かけません。
「契約書の作成は弁護士に依頼すべき」ということですが、では、どのタイミングで弁護士に依頼すればよいのでしょうか。
上でも触れましたが、契約書の締結には口頭での合意を経て、当事者の一方が契約書ドラフトを用意する必要があります。
弁護士に依頼する場合、契約書の「作成」、つまり、ドラフト作成から依頼する場合と、契約書の「レビュー」、つまり、出来上がった文章におかしな点がないか見直してもらう、の二パターンがあります。
依頼の細かいタイミングは取引によって多少異なりますが、もし弁護士に契約書の作成から依頼したい場合は、口頭で相手方と取引条件がまとまりそうな段階で相談するのが理想です。
法律的に整合性の取れた文章の作成には、それなりの時間と労力が必要です。そのため、時間的な余裕を持って弁護士に依頼したほうが、弁護士の方でも対応しやすくなります。
たとえば、売買契約であればいつ・何を・いくらで売るのか、といった重要事項について、口頭で合意がほぼ取れた、という段階で依頼するのがベストです。
契約書のドラフトを弁護士に依頼するのであれば、遅くともドラフトを作成する直前までに、弁護士に相談する必要があります。
弁護士に相談する方の中には「ドラフトを自分で作成したが、やっぱり不安なので弁護士に依頼したい」という方も見かけます。その段階でも弁護士に対応してもらえなくはないのですが、弁護士からすると「誰かの作った契約書を修正するよりは、一から作った方がやりやすい」という側面もあるようです。
一般的に弁護士費用は、はじめから頼むより途中から頼んだ方が安いということもありません。自分で手をつけるより先に弁護士に頼む方が、自分の時間も節約できる分、良いと考えられます。
契約書ドラフトを用意しない当事者で、契約書のレビューだけ依頼したい場合は、タイミングが少し異なります。
相手方の契約書ドラフトをチェックする必要があるため、遅くとも、相手方から契約書ドラフトを受領した段階で弁護士に相談しましょう。

契約書の作成・レビューを弁護士に依頼する場合、どのような流れになるのでしょうか。
弁護士に依頼するとなると、かしこまった印象を受けるかもしれませんが、実際はそれほど肩肘の張ったものではありません。
契約書の前提となる取引の内容を弁護士に共有します。具体的には、何を・いくつ・どのくらいの頻度で売買するか、等といったことを弁護士に伝えます。
弁護士から追加の質問事項が来た場合は、質問に回答します。
回答は必ずしも対面とは限らず、メールや電話などで回答することも一般的に行われています。
弁護士から作成、あるいはレビューが済んだ契約書を受け取ります。期間としては、依頼を開始してからだいたい1週間から2週間程度かかる場合が多いようです。
弁護士費用については、契約書のボリュームや難易度、相談する先生の経験やスタンスにもよりますが、イメージとしては以下のとおりです。
※以下はあくまで参考値であり、個別の内容により変動します。
契約書の種類 |
費用イメージ |
取引基本契約書・売買契約書 |
4〜15万円 |
業務委託契約書 |
5〜15万円 |
秘密保持契約書 |
2〜5万円 |

今回は、契約書を締結する際に気をつけるべきこと、契約書の作成やレビューをどう進めるべきかについて見てきました。重要なことは以下の3点です。
これから契約書の作成・レビューを考えられている方のお役に立てるようでしたら幸いです。