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きた よしひろ
喜多 芳裕弁護士
喜多芳裕法律事務所
近鉄奈良駅
奈良県奈良市中筋町33 喜多ビル
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不動産・住まいの事例紹介 | 喜多 芳裕弁護士 喜多芳裕法律事務所

取扱事例1
  • 売買トラブル
接道義務違反の建売住宅につき、売主と重要事項説明をした宅建士に損害賠償請求し、弁護士費用も認められ、宅地建物取引業保証協会の保証金から1000万円を回収した事例。

依頼者:40代 男性


Aさんは家を買い替えようと思い、仲介業者に売却を依頼したのですが、今の家は接道義務を満たしてないので売れないと言われました。

土地に建物を建築するにはいろいろ法令上の制限があり、一般の人にはその制限がわからないので、「宅建士」という国家資格があって、不動産の売買には宅建士が法令上の制限等を満たしているかどうかなどについて説明した重要事項説明書を作成し、契約の際にはこれを読み上げることになっています。
建物は原則として一定の条件で公道に接していないと建築確認が出ません。
私道はその所有者の意向次第で車が通れなくなることがありますが、建物が私道にしか接していない場合、火災になったときに消防車が入れないという事態も起こります。
そのような場合は火災が延焼して近隣の建物にも危険が生ずる可能性がありますので、建物は原則として一定の条件で公道に接していないと建築確認が出ないのです。

Aさんの家の前の道は私道であり、位置指定道路などの特例措置も取られていなかったので、 Aさんの家は公道に接しておらず違法建築なのですが、売主はそのことは説明しておらず、重要事項説明をした宅建士(当時は宅地建物取引主任者)は「接道義務を満たしている。」という虚偽の説明をして、重要事項説明書は渡していなかったのです。
そこで売主と重要事項説明をした宅建士に損害賠償請求をしましたが、双方とも弁護士を代理人とし、その弁護士はいずれも請求に応じませんでしたので、違法建築であることによる価値低下分と、「不法行為にも匹敵する悪質な事案である。」と主張して弁護士費用を加算して請求しました。
 売主と宅建士は「接道義務を満たしていないことは説明した上で売却している。」という不合理な弁解をし、宅建士は「Aさんには重要事項説明書は渡しているが、Aさんが紛失しただけだ。」と主張しました。
 しかし、接道義務を満たしていない建物であれば通常より安くなければなりませんが、この不動産の売却価格は当時の相場であり、宅建士は重要事項説明書の控を提出できませんでした。

 一審では全面的に勝訴し、弁護士費用も認められました。
 我が国の裁判制度では、不法行為については一般的に弁護士費用を加算して請求することが認められていますが、債務不履行については弁護士費用を請求することを認める判例は少ないので、この判決は担当した裁判官が判例集を掲載する雑誌に投稿し、掲載されており、判例集を見た何人かの弁護士から、「どういう経緯で債務不履行なのに弁護士費用が認められたのか。」という問い合わせがありましたので、債務不履行において弁護士費用を請求する場合のポイントを助言しました。

 売主と宅建士は双方とも控訴し、控訴審では弁護士を変えてきましたが、控訴審で宅建士についた弁護士は能力が優れており、「喜多先生の言うとおりだと思います。」と責任を全面的に認めて、金額を減少して欲しいという和解の申し出をしてきましたので、請求金額を減額して和解し、知事に対して懲戒処分も求めませんでしたので、その後も宅建士として業務を続けていると思います。
 売主についた弁護士は相変わらず不合理な弁解を繰り返すだけでしたので、控訴審でも全面勝訴しました。

 売主は宅地建物取引業者だったのですが、私の請求書を受け取ってから2日後に長年連れ添った妻と離婚して自宅を財産分与として妻に譲渡し、自分は小さなアパートに移って、資産を隠匿して弁済しなかったところから、宅地建物取引業保証協会に1000万円の請求をしました。
 宅建業法により宅地建物取引業者が顧客に損害を与えて弁済しなかった時のために法務局に1000万円の保証金を供託しなければならないのですが、宅地建物取引業保証協会に分担金を納めることにより保証協会が弁済をすることになっています。
 ところが、この売主が所属する大阪の保証協会の事務局長は手土産を持って奈良の私の事務所まで来て、「協会も経営が苦しいので、保証金を減額してほしい。」というのですが、何のために保証協会が設けられたのかを理解していないと言うほかありません。
 私はこれを断り、1000万円を回収しましたが、売主は分担金を補填しないまま廃業しました。
 裁判においては「どの弁護士に依頼するか。」によって、その人の運命が大きく変わることがあります。
 この売主も宅建士が控訴審で依頼した弁護士のように正確な見通しができる弁護士に依頼していれば妻と離婚せずに済んで、その後も事業を続けることができた可能性もあります。
 ただ、残念ながら正確な見通しを語ることができる弁護士は少なく、「見通しがないまま受任して着手金を取り、結局弁護士が着手金を手中にするだけで終わる。」ということもあるのでしょう。
取扱事例2
  • 売買トラブル
家が知らない間に他人名義となり競売されていたので、競売を取り消して名義も取り戻した事例。

依頼者:50代 男性

 Aさんは近所の人から「うちの家の郵便ポストに競売物件を買いませんかというチラシが入っていたが、これはあなたの家ではないか。」と言われました。
 驚いて裁判所に問い合わせたところ、Aさんの家は知らない間に競売になっていたのです。
 Aさんが法務局で登記簿を調べたところ、Aさんの土地建物は知らない間にCという人の名義になっており、Cが D金融会社に対して抵当権を設定して、D会社が競売申立をしたということになっていたのです。
 裁判所からは競売開始決定などが送られてきたと思うのですが、Aさんは仕事の関係で不在がちであり、見ていないと言います。

 Aさんはいろいろつてを頼って私のところへ相談に来ました。
 この時点でAさんの妻BはAさんの家から出て行方が分かりませんでしたが、登記をした時点ではまだAさんと同居していたので、Bが土地建物の権利書、実印、印鑑証明カードなどを使って不正な登記をしたものではないかと思われました。
 このままではAさんの家は競落されてしまいますので、とりあえず競売を止めなければなりません。
 そのためには、第三者異議という訴訟を起こして競売を許さないという判決を求め、それに伴って強制執行停止の申立をし、 更にはAさんからCへの所有権移転登記の抹消を請求しなければなりません。
 AさんからCへの所有権移転登記においては司法書士が代理人となっていますが、司法書士は本人確認をすることになっていますので、どのようにして Aさんの本人確認をしたかが問題になります。

 裁判の結果、次のような事実が明らかになりました。
 AさんからCへの売買契約の当日、Aさんの家に買主Cと、Cが売買代金を借りるというD会社の担当者Eが行くと、 Aさんの妻Bが男性と待っており、その男性が「私がAです。」と言い、権利書、実印、印鑑証明書を示しました。
 D会社の担当者EがAさん本人であることの確認として運転免許証の提示を求めたところ、その人物は「運転はしないので運転免許証は持ってない。」と言い、Eがパスポートの提示を求めたところ、「海外旅行はしないのでパスポートはない。」と言い、「夫婦で撮った写真がある。」と言って、 奥の部屋からその男とBが一緒に写っている写真を何枚か持ってきて示しました。
 その中には背広を着た写真もありましたが、その男は奥から Aさんの背広を持ち出して、「この背広を着て撮ったんですよ。」と言いました。 
 それらはいかにも夫婦のような写真だったので、Eはこの人物がAさんであると判断して、司法書士への登記申請委任状へ署名捺印を求めたということです。
 Cは同日金融会社Dから1500万円を借りて、Aと称する男に売買代金として渡し、自己名義となるこの土地建物に対してDに対して根抵当権設定登記をし、Dはこの登記に基づいて競売申立をしたのです。
 司法書士はD社がいつも委任している人物であったので、Eの言葉をそのまま信じたということです。
 この日は平日で、Aさんは勤務で留守であるということがわかった上でのお芝居でした。
 Bが「この男性が私の夫Aである。」として示した男性と一緒に写っている写真は、もっともらしく見せるために予めAさんの背広を着て2人で撮影しておいたものです。
 この事案は請求は全面的に認められ、競売は取り消され、 Cへの所有権移転登記は抹消されて、この土地建物はAさんに戻りました。
 後にわかったことですが、Bは宗教団体に入信しており、Cはその宗教団体の幹部であり、この1500万円はその宗教団体に献金されたものでした。
 Bは「すべては神様のため」と思っており、犯罪意識はなかったようです。
 その後、AさんはBと離婚しました。

 このような手法での不実の登記は最近は「地面師」として新聞でもしばしば取り上げていますが、、私は幾つも遭遇しており、「替え玉ケース」と呼んでいます。
 一般的な地面師による替え玉ケースではCが善意で金銭的な損害を被るのですが、善意の人をこのような方法で騙すというのはなかなか難しいところがあります。
 事情を知っている人をCにした場合、金銭を手中にするためにはCは事情を知らないFに転売する必要がありますが、登記に公信力がない結果、Cが所有権を取得できない場合Fは所有権を取得できないのでCに求償することになります。
 そこで競売という方法を使っているのです。
 Fが競売で取得した場合は完全な所有権を取得できるので、Cは請求されません。
 
 このような事案の被害者は加害者を刑事告訴すると思うのですが、あきらめる人もいるようです。
 私はAさんにBを含むグループの刑事告訴を勧めたのですが、Aさんは「妻がやったことだから。」と言って刑事告訴をしませんでした。
 
取扱事例3
  • 売買トラブル
銀行が不動産に知らない間に抵当権を設定し、競売申立をした事例。

依頼者:50代 女性

 不正な競売申立の事例は数多くありますが、もう一つだけ紹介しておきます。

 Aさんは父から相続した不動産を持っていましたが、夫Bは事業に失敗して家を出て連絡が取れなくなってしまいました。
 その暫く後、裁判所からAさん所有の不動産に対して競売開始決定が送られてきたので、登記簿を調べてみると、Aさんが父から相続した不動産には C銀行が抵当権を設定しており、それに基づいて競売申し立てをしたのです。
 しかし、AさんはC銀行に対して抵当権を設定したことはありません。

  Aさんは大阪に住んでいましたが、不動産に詳しい弁護士を探して私のところに相談に来ました。
 この場合も競売を止めなければなりませんので、第三者異議訴訟を起こして競売を許さないという判決を求め、それに伴って強制執行停止の申立をし、 更にはC銀行の抵当権設定登記の抹消を請求しなければなりません。
 C銀行の抵当権設定登記の時点ではAさんは夫と同居していましたので、夫が権利証、実印、印鑑証明カードなどを持ち出して抵当権設定したものと思われます。

 裁判において、C銀行は抵当権設定のための貸付をする際にAさんの本人確認をした旨の社内の資料を提示し、「確かに各種書類はA本人が担当者の面前で署名したものである。」と主張してきました。
 Aさんに署名を見せたところ、「私の字に似せて書いているが、自分は書いていない。」と言います。
 Aさんの本人確認をした旨の資料は確認者が「D」になっていますが、Dは支店長でした。
 この貸付は3000万円程度でしたが、銀行でこの程度の金額の貸付の場合に支店長が担当者として確認するというのは不自然です。
 そこで確認日時を見たところ、その日のその時刻はAさんはパート先で勤務しているということがわかりましたので、勤務先のタイムレコーダーのコピーを提出しました。

 その暫く後、Aさんから私の事務所に、「勤務先にD支店長から電話がかかってきて、『弁護士を外して2人だけで会いたい。会社が終わる時間に会社の近くの喫茶店で待っているから、来て欲しい。弁護士を外して話をしよう。』と言ってきているが、二人だけで会えば何をされるかわからないので怖い。どうしたらいいだろうか。」という電話がかかってきました。
 Aさんは一人暮らしの50代の女性ですので、奈良であればすぐ行くのですが、大阪に住んでいます。
 携帯電話が普及していない時代でしたので、私は、「Dと二人だけで会ってはいけない。喫茶店には行かず、いつもの道と違う道を通って自宅に帰り鍵をかけなさい。私は事務所にいるので、何かあれば私の事務所と警察に連絡しなさい。」と指示して、C銀行の代理人の弁護士の事務所に、「D支店長が弁護士を外して2人だけで会いたいなどと言ってきているが、Aさんに危害を加える可能性がある。女性一人で夜会うというのは不安があるので会わせないこととした。速やかに適切な対応を取ってもらいたい。」というファックスを送りました。
 数日後C銀行の代理人から、「この度は誠に申し訳ございません。競売は取り下げ、抵当権は抹消します。」という電話がありました。
 後日関係者から事情を聴取したところ、D支店長がBに不正融資をしたがこげついたので、Bに担保を入れるよう要請したところ、Bは、「自分は不動産を持っていないが、妻は不動産を持っている。しかし、妻は抵当権を設定することは承知しないと思う。」と言ったので、Dは「あなたは奥さんと一緒に住んでいるのだから、権利証と実印と印鑑証明カードを持ち出をせるだろう。奥さんの筆跡がわかるものを持ってくればこちらでなんとかする。」と言って、 Aさんの筆跡を偽造して、勝手に抵当権を設定したのです。
 私はAさんにDを告訴するよう勧めたのですが、Dが解雇されたこともあり、AさんはDの告訴はしませんでした。
 このほかにも不当な登記の事例は数多く扱っていますけれども、事例2と3の2つにしておきます。
取扱事例4
  • 売買トラブル
一審の原告代理人、被告代理人、裁判官のいずれもが選択債権であることを理解していなかった事案について、高等裁判所で「選択債権である」と認めて勝訴した事例。

依頼者:50代 男性

(以下ではわかりやすくするために数字は変えています)
前提状況
1 Aは売主Bとの間で「面積600平米の土地の一部400平米を売買する契約」を締結した。
Aが必要であったのは 400平米程度の土地であり、この土地の全部は必要なかったのである。
Bもこの土地全部でないと売らないとは言わず、Aの申し出を了承した。
2 売買契約成立後、AはBとの間で売買範囲を特定する協議をしたが、それぞれ自分に都合のいい範囲を主張したため、合意に達しなかった。

一次訴訟
 Aは甲弁護士に依頼して Bに対して「600平米の土地の一部400平米の引渡し」を求めて訴えを提起し、Bの代理人に乙弁護士がつき、奈良地方裁判所では丙裁判官が担当した。
 奈良地方裁判所はAの請求を認めたが、Bが控訴し、大阪高等裁判所では「目的物が特定されていない。」としてAは敗訴した。
 甲弁護士は上告しても勝てないだろうと言うので、Aはいろいろと弁護士を探した結果、当事務所に相談に訪れた。

検討
 他の弁護士に依頼した結果敗訴した事件の控訴審を依頼されることは屡々あるが、敗訴するのは当然のものもあれば「弁護過誤」と言えるものもある。
 これは「選択債権」であることを理解していないために起こった「弁護過誤」である。
 BがP、Qの二頭の馬を持っているとき、Aが「この二頭の馬のうちどれかを買いたい。」と申し出て、Bがこれ承諾すれば 売買契約は成立する。
 このような債権を「選択債権」と言い、Aはそのままでは履行が請求できず、まず P、Qの二頭のうちどれを目的物とするか選択しなければならない。
 選択債権においては売主であるBが選択権を持つが、Bが選択権を行使しない場合、Aは Bに対して「相当の期間内に選択するよう」催告し、その期間内にBが選択権を行使しない場合は選択権はAに移転するので、Aが どちらの馬か選択すれば履行を求めることができる 。
 この理は土地についても同様である。
Aは選択をしない状態のもとで奈良地方裁判所に訴えを提起したのであるから、目的物が特定されていないので、訴えは棄却するべきである。
 しかし、甲弁護士はこれが選択債権であることに気がつかず、 乙弁護士もその旨主張しなかった。
 多くの場合裁判官が「これは選択債権で、選択しなければ目的物は特定できない んじゃないですか。」などと指摘するのであるが、丙裁判官も選択債権であることに気がつかないまま 判決に至ったのである。
 法律をあまり知らない弁護士というのは結構いるが、裁判官がその旨指摘するので違法な判決に至ることは少ない。 
 しかし、裁判官も法律をあまり知らない場合にこのような結果になることがあり、私のところには「原告代理人も、被告代理人も、裁判官も法律を知らない。」という判決を持って相談に来る人が時折あり、これを「三位一体過誤」と呼んでいる。
 これは「司法過誤」であるが、殆どの場合当事者は「司法過誤」であることに気がつかず、そのままになるのである。

二次訴訟
 Bに対して「選択債権であるので相当の期間内に選択するよう」催告したが、Bの代理人乙弁護士はその意味がよく理解できずそのまま放置して期間内に選択権を行使しなかったので、選択権はAに移転した。
 そこで、Aが選択権を行使して400平米を指定して履行を求めたが、Bが履行しないので、奈良地方裁判所に訴えを提起した 。
 Bの代理人乙弁護士は選択債権の意味がよく理解できなかったので、「AとBの間で目的物が特定できなかったから、本件契約は無効である。」という主張をしたので、Aが勝訴した。
 Bは控訴し、大阪高等裁判所は選択債権に関する当方の主張を認めたのであるが、「Aの選択した土地を売却の目的物とすると、西側道路を4メートルとするとの特約条項に抵触することになるので選択の効果は生じない。」という点を指摘して、敗訴となった。
 残地のBの利用の便宜を考えた結果このような選択をしたのであるが、この選択でも西側道路は4メートルとれているので高裁は道路の位置を誤認している。
 しかし「西側道路が4メートルとれることは当然わかる筈だ。」と考えていたため、西側道路の幅員について十分な証拠を提出していなかったのでこの点は私のミスであった。

三次訴訟
そこで、Bの残地利用は制約されるのであるがどのような観点からも西側道路が4メートルとれることがわかるよう選択し直して三次訴訟を提起した。
 Bは相変わらず選択債権について理解しておらず、「AとBの間で目的物が特定できなかったから本件契約は無効である。」という主張を繰り返しただけであったので、奈良地方裁判所で勝訴となり、控訴審の大阪高等裁判所でも勝訴してこの判決は確定した。

取扱事例5
  • 売買トラブル
媒介契約期間が終了した後に従前の仲介業者が紹介した物件を別の仲介業者の仲介によって購入した場合に、従前の仲介業者の報酬請求権が認められなかった事例。

依頼者:60代 男性

事案
 Aは事業用地を探しており、大手の仲介業者Bに仲介を依頼したが、Bの所長Cは仲介業者Dを紹介し、BではなくDと媒介契約を締結するよう勧めたので、AはDと三ヶ月の専任媒介契約を締結した。
 Dは事務所を持っておらず、Dとの話はすべてBの営業所で行われていた。
 Dは甲地を紹介したが、Dの提示した価格は高すぎたので、Aはもう少し安くするよう交渉して欲しいと依頼した。
 しかし、Dはこれ以上価格が下がらないと言い、この価格で買うよう勧めたのであるが、Aが応じなかったため、三ヶ月が経過して媒介契約は終了した。
 その後AはB、Dの仲介を断念して、Eに事業用地の仲介を依頼したが、Eが紹介した土地の中に甲土地があったので、Eに価格交渉を依頼したところ、売主FはDが示した価格より低い価格でよいと言った。
 AはFに「Dが示した価格はこれより高かったので、もう少し安くするよう交渉して欲しいと頼んだら、これ以上価格が下がらないということだったけれども、なぜ今この価格で売ってくれるのか?」と尋ねたところ、Fは「Dからはそのような価格交渉はなかった。」と言った。
 AはEの仲介で、甲土地を購入した。

 ところがその後、DはAに対して仲介手数料を請求する訴訟を提起した。
 媒介契約の標準約款には、媒介契約終了後であったとしても従前の媒介業者を排除して直接取引を行った場合は一定期間は報酬請求権が認められるとの特約条項が入っているので、Dはこの条項をもとに訴えを提起したのである。

検討
 媒介契約期間が終了した後に、従前の仲介業者が紹介した物件を別の仲介業者の仲介によって購入した場合、標準約款に従って従前の仲介業者に報酬を支払う必要があるか否かは、従前の仲介業者の活動と最終的な売買成立との間にどの程度の因果関係があるか、どの程度従前の仲介業者の寄与があるかによって決まるのであるが、一般的にはこの問題は非常に困難な問題である。
 このような訴訟はいくつか受任しているが、すべて従前の仲介業者の活動と最終的な売買契約の成立には因果関係はなく、従前の仲介業者の寄与はないと主張立証して従前の仲介業者の報酬請求を排斥している。

経過
 この訴訟では、G弁護士がDの代理人になったが、専属専任媒介契約と専任媒介契約との差異もわからないというような状態で論点を理解しておらず、「AはBの紹介した物件を購入したのだから、Dに仲介手数料を支払う義務がある。」と主張するだけであった。
 しかし、この場合、AはDに「もう少し安くするよう交渉して欲しい。」と頼んでいるにも拘わらず、Fは「C、Dからはそのような価格交渉はなかった。」と言っている。
 Dは市営団地に住んでいる主婦であり、面識がある大手仲介業者Bの所長Cから紹介を受けることを前提で宅建業の免許を取ったものと思われる。
 Dは市営団地の一室を事務所として届けているが、ここで顧客との面談などできないから、Dの業務はすべて大手の仲介業者Bの営業所で行われているのである。
 Dの業務はすべてCと共同であり、大手の仲介業者Bの所長CはBに来た案件のいくつかをDに紹介し、これをD名義で処理して、媒介報酬をDに入れて山分けしていたのであろう。
 AはDに「もう少し安くするよう交渉して欲しい。」と頼んでいるにも拘わらず、Fは「Dからはそのような価格交渉はなかった。」と言っていることから、DはFと減額交渉をしていないのであり、有効な媒介活動をしなかったのである。
 その理由は不明であるが、主婦の片手間で仲介をしているDがAの要望を正確にCに伝えなかったのか、そのときCが多忙でFと交渉することができなかったためではないかと思われる。
 Dの代理人G弁護士はこの点については何も答えず、「AはBの紹介した物件を購入したのだから、Dに仲介手数料を支払う義務がある。」と主張するだけであった。
 しかし、C、DがAの要望通りFと減額交渉していれば、Fは減額に応じ、Aはその時点で甲土地を購入していた可能性があるが、D、Cの怠慢によりその機会が失われたので三ヶ月間の契約期間が満了し、AはEに仲介を依頼して、Eの仲介で甲土地を購入したのである。
 このような事情を勘案すれば、Dの活動と最終的な売買成立との間に因果関係を認めることはできないし、契約成立にDの寄与を認めることはできない。
 この事件は全面勝訴であった。
 私は「Dの訴え提起は不法行為を構成する。」としてAが支払った私の弁護士費用を損害としてDに対して訴えを提起したのであるが、DはG弁護士に委任することはなく、答弁者も出さないため欠席判決で勝訴した。
 しかし、この件は宅建業者の保証金の範囲外であるし、Dの財産は見当たらず、差押さえはできなかった。

取扱事例6
  • 境界線
地籍調査の結果無番地とされた土地について依頼人の土地であると主張して自治体を相手に境界確定訴訟をして、無番地に番地を入れて公図を書き換えて、依頼人の所有であると確定した事例。
 Aさんは乙土地に居住しており、隣接しているB市道に面している甲土地を来客用の駐車場として使っていましたが、道路を挟んだ向かいの土地の所有者の Cが「この土地は無番地であり国有地だから自由に車を駐めてもいい。」と言って車を駐車するようになり、来客が駐車できないようになりました。
 Aさんが公図を調べてみると地籍調査の結果甲土地は無番地となっていました。
 Aさんは土地家屋調査士に何とかならないかと尋ねたのですが、「地籍調査の結果で決まっているのでどうしようもない。」ということであり、何人かの弁護士に相談しても同じ回答だったので、つてを頼って私のところに相談に来ました。
 調べた結果この市道は従前は里道で幅員が90cm程度しかなかったのですが、両方の土地の所有者から少しずつ土地を提供してもらって車が通れるようにしたということがわかりました。
 その後B市は提供してもらった土地も含めて市道であることを確定するために官民境界確定手続をを行ったのですが、甲土地の前後は官民境界が確定されてるにもかかわらず甲土地の部分は官民境界確定ができていなかったのです。
 Aさんから話を聞くと、Aさんは乙土地で生まれてずっと居住していたけれども、乙土地を離れて別の土地に住むようになったが住民票は移していた。乙土地はある程度の期間誰も住んでおらず、何年か前にAさんが乙土地に戻って住むようになった。地籍調査には立会していないし、立会の通知を受け取ったことはない。」ということでした。
 B市の担当者に「何故甲土地の部分は官民境界確定が出来ていないのだろうか?」と聞いたところ、「当時の担当者はもう在籍していないのでなぜか分からない。」ということだったのですが、Aさんの話を伝えると、「甲土地の官民境界確定をしようと思った時、誰も住んでいなかったので立会ができず、確定ができなかった可能性もあるのではないか。」ということです。
 土地と土地との境界というのは客観的に決まっており当事者の合意では動かせません。
 土地の所有者は所有権の範囲を隣地所有者との合意で決めることができますが、境界は動かすことができないのです。
 地籍調査で確定した境界が動かせない理由は「客観的な資料に基づいて確定した。」ということのですが、その資料が客観性を有するか否かは当事者の検証を要するのであり、「当時者が立会しているから。」ということも重要であって、当事者の立会権を保障することが必要なのです。
 当事者の立会権の保証のためには、まず立会について事前の通知をすることになっており、事前の通知を受けた当事者が立会しなくとも地籍調査の結果を市役所などで縦覧させ、縦覧期間が経過しても異議が出ない場合に初めて確定する、という二段の手続を設けています。
 この事件ではAさんは住民票を移していたのですが、Aさんの住所地に立会の事前通知が来ていないにもかかわらず立会が強行されたという点に問題があります。
 Aさんに何故だと思うかと聞いたところ、「ここは以前はb町であり、甲土地の向かいの土地の所有者の兄はb町の町議会議員だったから担当者に圧力をかけたのではないか。」ということでした。
 判例を調べると、地籍調査で確定した境界の変更を認めた裁判例は二例あり、二例とも立会手続きに不備がある場合でした。
 そこで、Aさんの手元にある古い図面を資料として、 B市を相手に境界確定訴訟を提起しました。
 担当裁判官は民事部の部長でベテランでしたが、このような事例に遭遇するのは初めてのようで、どのようにしていいのか戸惑っており、訴訟は空転しました。
 しかし、四か月後に裁判官が交代して、大阪高裁の右陪席をしていた裁判官が担当裁判官になりました。
 この裁判官は前年に私が一審で勝訴して控訴された事件で担当裁判官として私の膨大な準備書面を読んで私の考え方を理解して、全面勝訴の判決をいただいた方です。
 裁判長はB市の代理人に「裁判所も喜多先生のご主張の通りだと思いますので、訴状の内容で和解をされたらどうですか?」と言われ、B市もこれに応じて私の訴状の通りの内容で和解しました。
 境界確定訴訟には測量図を添付しなければならず通常は土地家屋調査士に依頼するので数十万円かかります。 
 Aさんは費用がないということで訴状では私がB市にある旧測地系による測量図をもとにこれを修正して図面を作成しました。
 この時に「測量」について文献を買い込んで「ジオイド」、「測地系」などについて学び、古い文献や旧測地系、新測地系なども勉強しました。
 和解成立後B市に「寄付して拡張した部分を分筆登記してB市の所有とすることを同意するので、B市で測量して登記したらどうか。」と恩にきせてB市の費用で測量して登記させました。
取扱事例7
  • 建築トラブル
土地を掘削して隣地の一部を崩落させた土木業者に対し隣地所有者が4500万円という過大な請求をしたが、理を説いて妥当な金額で和解した事案。

依頼者:40代 男性

 甲土地とその西側に隣接するD所有の乙土地は同じ高さの土地だったのですが、甲土地は道路から高かったので甲土地の所有者Bは土建業者のAさんに2メートル程度切り下げるよう造成工事を依頼しました。
 造成工事はC設計士が設計したのですが、 その設計図によれば甲土地の西側を乙土地ギリギリまで養生もせずに切り下げるようになっていましたので、AさんはC設計士の設計通り乙土地ギリギリまで切り下げていったところ、乙土地の南東が崩れ、境界線付近あった倉庫が落下してきたのです。

 DはAとBに、「乙土地ギリギリまで切り下げたために家全体が傾いた。この家には住めないから家の改築費用を出してもらいたい。」と言ってきました。
 Aが建築業者に家の改築費用を見積もってもらったところ2500万円程度かかるということでした。
 ところがその後風呂場の下の水道管の継ぎ目から漏水があり乙土地の東側はこの漏水で地盤が軟弱になっていることが明らかになりました。
 そこで、AとBは私のところに相談に来たのです。
 私は妥当なDの損害額とそれぞれの責任を勘案し、A、B、Cそれぞれが200万円、計600万円の示談金を提示したのですが、Dはこれに応じずP弁護士を代理人としました。
 私はP弁護士に乙土地の地盤の強度を調査したい旨申入れたところP弁護士もこれに同意しましたので、サウンディング調査という方法により乙土地の地盤の堅さを調査をしたところ、N値(地盤の硬さを示す数値)はとても低く、調査をした担当者は「豆腐の上に家が立ってるような状態だ。」と言いました。
 倉庫が落下した直接の原因はAの掘削によるものですが、この家が傾いた原因は長年の風呂場の地下からの漏水により地盤が軟弱化し、その軟弱な地盤の上に基礎を増強しないまま2階部分を建築して基礎にかかる重量が増えたことなどによるものと思われます。
 そこで私ははP弁護士にその旨説明して、「 A、Bそれぞれ200万円ずつなら支払う。」と言ったところ、Dはこの申し入れには応じずに訴訟を提起してきました。

 Dは訴訟において地盤の改良費用と家の取壊し、再築費用として約4500万円を請求してきました。
 この家の台所の流し台は古いステンレス製のものでリユースショップに行けば 5万円程度でも買えると思われますが、 Bの見積もりでは数十万円するシステムキッチンが入っており、風呂場も安価なポリエチレン製のバスタブですが数十万円のシステムバスで見積もっていました。
 例えば 200万円で買った自動車を十年使った時点で壊された場合、中古車市場が確立していますので20万円程度あれば中古車市場から同等のものが購入できますから、賠償額は20万円でいいのです。
 しかし、家の場合は200万円の中古家屋があってもその土地に定着しているのであり、簡単に移動できないので損害額の算定には極めて困難な問題が生じます。
 裁判長はどのように対処したらよいか困惑しているようでした。
 私は理を説いた詳細な準備書面を提出し、裁判長に「因果関係は認めます。しかし問題は損害額と寄与度(被告らの行為が原告の損害に及ぼしている度合い)だと思います。寄与度の立証には相当額の費用がかかりますので、原告のためにも和解で解決することが望ましいと思います。」と言い、「 A、B、Cそれぞれ 200万円、計600万円。」の和解案を提示しました。
 Dは4500万円を請求していましたのでその説得には相当の時間がかかったようですが、裁判長は私の書面をもとに和解に応じることがDの利益だと強く説得したようであり、和解期日を数回重ねた結果Dは私の和解案に応じることになりました。
 ところが設計したCは自分には責任はないと言い張って 200万円の支払いに応じないのです。
 私は裁判長に「ABとCの弁論の分離して、ABのみ和解を成立させてほしい。 Cには大きな責任があると思うので引き続いて裁判を続けてもらいたい。Dが私に委任状を書いてくれるのであれば、私は弁護士費用なしで、私の弁護士としての全ての能力を投じてCに対する請求をしてもよい。」と言ったところ、裁判長は「弁論を分離せず、なんとかCについての和解を勧めたい。」と言われました。
 裁判所が強く和解を勧めるのはこの事件の判決を書くのが大変だからであり、ABと和解をしてもCとの審理が続行するのであれば判決を書かざるを得ず、裁判所にとって大変であることは変わりないのです。
 私は裁判長のこの言葉を了承し、その後も和解期日を重ねた結果、Cも200万円を支払うことで和解が成立し、結局は私の最初の案通りで解決したのです。
 この事件の裁判長は翌年4月に転勤しましたが、印刷された転勤の挨拶状に手書きで「お世話になりました。」と書いてありました。

取扱事例8
  • 建築トラブル
不当な建築工事差止仮処分命令申立を却下させ、建築工事差止仮処分命令申立却下後に市長が出した建築工事停止勧告に対して違法行為を行わないよう勧告してマンション建設を完成させた事例。

依頼者:40代 男性

 A社がD市の甲土地に4階建のマンションを建築しようとしたところ、甲土地の東側の乙土地の豪邸に住んでいるCが建築計画を縮小するよう申し入れてきたのですが、A社がこれに応じなかったので、Cは建築工事差止仮処分命令を申立ててきました。
 この建築工事差止仮処分命令には大阪の二つの法律事務所の弁護士数名が申立代理人になっており、裁判所の審尋においてもベテランの弁護士三名を含む四名の弁護士が来ていました。
 しかし、その建築工事差止仮処分命令申立書の内容は極めてお粗末なものでした。
 差止めの理由の一つに日照権をあげていましたが、 日照権においては太陽が最も低い位置に来る冬至の日の日照がどれだけ確保されているのかということが重要になるので、冬至の日の日照状況を示す日影図を添付することが通例であるにも拘わらず、この申立は日影図も添付していないのです。
 そもそもA社がマンションを建築している甲土地は乙土地の西側にありますので日照が問題になることは少ない上に、建築中のマンションは4階建とはいうものの乙土地は甲土地より相当高く、乙土地より上に出る部分は2階分位にしか過ぎないので、この意味でも乙土地への日照の影響が問題になる余地は少ないのです。
 また、「隣地にマンションが建設されて不特定多数が隣地に出入りすることにより、治安が悪化する可能性がある。」などということを申立理由としていますが、この論法では「集合住宅が隣地に建築されれば治安が悪化する可能性がある。」ということとなり、非常識な発想であると言わざるを得ないでしょう。
 A社の代表者Bの話では、Cは自分が言えば何でもその通りになると思っているようであり、 Cの建築計画を縮小するようにとの申し入れに対して A社が応じなかったことから、「どうせ奈良の田舎の会社だから、大阪の大きな法律事務所の何人もの弁護士の名前を出せば驚いて自分の言う通りになるのではないかと思っているのではないか。」ということでした。
 裁判所に詳細な却下理由を説いた意見書を提出したところ、第一回の審尋で裁判官は「この申立書では難しいのではないか。」と言われたので、次にCは「Aの建築はB市の規則に違反しており違法なものなので、差止めを免れない。」などと主張してきました。
 Cの主張は「 B市の規則ではB市内で一定規模以上の住宅の建築を工事する場合は市長との協定の締結を義務付けているが、A社は協定を締結しないまま建築を始めたので規則違反である。」というのです。
 しかしB市の規則では「市長はB市内で一定規模以上の住宅の建築工事をする者と協定を締結をしなければならない。」としており、市長に協定締結義務を課しているものの、事業者には協定締結義務は課していません。
 A社はB市長に対して協定の締結を求めたのですが、 B市長は「A社がB市が求める協力金を支払わなければ協定は締結しない。」と言って不当に協定の締結を拒み、A社が「協力金の支払いは任意であり、義務でない筈だ。」として協力金を支払っていないため、市長は義務を怠って協定を締結していないのであり、規則に違反して協定を締結しないのはB市長であって、A社は規則には違反していないのです。
 尚、私のこの主張は裁判所の仮処分申立却下決定にそのまま理由として記載されています。
 又、仮に条例や規則に違反している行為の差止めを求めるのであれば、申立てができるのは市長であって、個々の市民は申立てはできません。
 条例や規則によって市民が受ける利益は反射的利益であり、個々の市民に建築業者を規制する権利はありません。
 Cの主張はすべて法を知らない陳腐なものであり、ベテランの弁護士三名を含む四名の弁護士が審尋に出頭しての建築工事差止仮処分命令申立は却下されました。

 ところが、その後B市長からA社に対して「B市が定める協力金を支払わない。」という理由で建築工事停止勧告が出されたのです。
 しかし協力金の支払いは条例や規則に定められているものではなく行政指導である「通達」によるものであり、この協力金は市の予算の不足を業者から徴収するお金で補填しようというものです。
 行政手続法によれば「行政指導」に従うか否かは任意であり、これを強要してはならないことになっていますので、B市の建築工事停止勧告が強要に該当するものであれば違法ですが、強要に該当するか否かはこれに従わない場合に何らかの不利益を課すか否かによります。
 B市長にはこの点を指摘して「建築工事停止勧告に従わない場合にもA社に何らかの不利益を課さないよう、違法行為をするようであれば市議会に市長の政治責任を問うよう求める。」との勧告書を送付したところ、B市は何も言わなくなりマンションは無事完成しました。
 その後B市長は選挙で落選しました。
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