不貞示談における無期限接触禁止条項の妥当性と交渉リスク

不貞の示談交渉において、相手方(被害者側)から提示された合意書案についてご相談です。

現在、相手方から提示された合意書案に期間の記載がない接触禁止条項が含まれています。違反すると1回30万の違約金を払うよう書かれています。

相手方弁護士からは甲は離婚する方向で考えてるという話も聞いておりますが、まだ具体的に動いてはないみたいなのでいつになるかは全くわかりません。

こちらとしては将来的な縛りを懸念しており、甲と丙の婚姻関係が継続している期間に限りというような条件修正を提案したいと考えています。
しかし代理人弁護士からは、そのような提案をすると相手方配偶者の感情を害し、現在提示されている示談条件が白紙に戻るリスクや、かえって示談交渉が決裂するリスクがあるため大変悩ましいと言われています。

そこでお伺いしたいのですが、
1. 相手方夫婦が離婚する可能性・意向がある場合でも、不貞示談書に「無期限の接触禁止」を入れるのはよくあることなのでしょうか?
また、もしこのままサインし、その後離婚となった時、法律的には効果は残るとは思うのですが、実務上はどんな感じでしょうか?色々なサイトで調べると失効するとも書いてあり混乱しております。
2. 「離婚後は接触禁止を除外する」という交渉を打診した場合、実務的に相手方の感情を害して示談条件が悪化するリスクは相当高いのでしょうか?

弁護士の皆様のご見解をお聞かせいただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。

私見を回答させていただきます。

1について
不貞の示談において、今後の接触を禁止し、違反した場合に違約金を定めること自体は珍しいものではありません。
もっとも、期間を定めずに接触を禁止した場合に、離婚後も当然にその効力が続くかは別問題です。
接触禁止条項は、一般的には夫婦の婚姻共同生活の平穏を守ることを目的とするものです。そのため、夫婦が離婚した後まで接触を禁止し、違反した場合に違約金を負担させることについては、その効力が問題となる可能性があります。
ただし、離婚したからといって、合意した接触禁止条項が当然に消えるとは限りません。期間の定めがなく、離婚後の接触も条項の文言上は禁止されているのであれば、接触したこと自体は合意内容に反することになります。その場合、相手方から違約金を請求され、その段階で条項の効力を争うことになるなど、紛争となるリスクは残ります。
将来の紛争を避けたいのであれば、「離婚すれば効力がなくなるだろう」と考えてそのまま合意するよりも、合意する段階で接触禁止の期間や条件を明確にしておく方が安全だと思います。

2について
「婚姻関係が継続している期間に限る」と修正を求めること自体は、不合理な提案とは思いません。
ただし、示談交渉は法律上どちらの条件が正しいかだけで決まるものではありません。相手方がその条件でなければ示談しないというのであれば、修正を求めたことをきっかけに、現在提示されている条件を撤回したり、交渉自体がまとまらなくなったりする可能性は十分に考えられます。
特に不貞の示談では、接触禁止について被害者側が強くこだわっていることもありますので、相手方がどのように受け止めるかは、これまでの交渉経緯や相手方の意向によるところが大きいです。そのため、「修正を求めても問題ない」「条件が悪化する可能性が高い」と一般論で判断することは難しいと思います。
すでに代理人弁護士を立てて交渉しているのであれば、相手方とのこれまでのやり取りを最も把握しているのはその弁護士です。接触禁止の範囲を限定するメリットと、現在提示されている示談条件が変更されたり、示談が成立しなくなったりするリスクを踏まえて、よく相談して判断されるのがよいと思います。

1:不貞慰謝料の示談では、接触禁止条項が設けられること自体は珍しくありませんし、期間を明記しない案が提示されることもあります。特に、夫婦が婚姻関係を継続する場合には、婚姻共同生活の平和を維持するという意味があります。もっとも、「期間の記載がないから、離婚後も当然に違約金付きで有効」というわけではありません。例えば、不貞相手との接触・不貞について違約金を定めていても、夫婦関係が破綻した後の部分については、保護すべき「婚姻共同生活の平和」という利益がなくなることなどから、公序良俗に反して無効とした裁判例もあります。したがって、「離婚すると条項そのものが自動的に失効する」わけではありませんが、少なくとも離婚後の単なる接触まで違約金をもって継続的に禁止することについては、法的有効性に相当程度の疑問が生じ得ます。

2:「離婚後は接触禁止の対象外とする」と提案すること自体は、法的には不合理な要望ではありません。実際に、そのようにして解決するケースもあります。ただし、交渉上は、相手方から「離婚したら再び交際するつもりなのか」と受け取られ、感情を害する可能性はあります。その意味では、代理人弁護士が懸念されていることにも相応の理由があります。もっとも、そのリスクが一般的に「相当高い」とまではいえず、現在の示談条件、相手方の感情、離婚の具体性などによります。既に代理人がついているとのことですので、最終的には、条項修正によって得られる利益と、現在まとまりつつある示談全体を崩すリスクとを比較して、代理人と検討されるのがよいでしょう。

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