叔母から生前に受け取った500万円が相続に該当するかについて相談したい
叔母から生前に受け取った500万円が相続に該当するかについて相談したいです。
2年前に叔母が末期がんで亡くなる数日前、叔母から500万円を受け取りました。叔母は医師の診断書を基に生前に生命保険金500万円を受け取り、その全額を私に渡したいと意思表示しました。叔母の夫と兄弟3人の相続人全員がこの意思を承諾しました。
叔母は自力で動けなくなっていたため、私が代わりに銀行から10日間にわけて毎日50万円ずつ引き出し、叔母に渡しました。叔母はその500万円を私に渡し、「誰にも言わないように」と言いました。私は500万円を受け取りました。
さらに念のために遺言書も書きました。その1週間後、叔母は亡くなりました。
叔母の死後、相続人全員が相続を放棄しました。しかし、1年後、叔母の賃貸住宅の家賃滞納により負債が発生し、相続財産清算人が通帳を確認し500万円が引き出されたことを知り経緯説明を求めています。相続人たちは何も知らないため、私が説明しようと思っています。
ここで相談ですが、私が相続財産清算人に「私がもらいました」と説明することで法律に触れることがありますでしょうか。
生前贈与（民法５４９条）も相続放棄(民法９３８条)も法律で認められた行為です。
また、生前贈与と相続放棄は全く異なる制度ですので、生前贈与があったからといって相続放棄ができない、ということもありません。
ですので、相談者が相続財産清算人に「私がもらいました」と説明したからといって法律に触れることはないでしょう。
ただ、そのような説明や相続放棄とは関係なく、場合によっては生前贈与が取消しになる可能性がないわけではありません。
被相続人である叔母さんが、債権者に対して多額の借金があるような場合に、自分の財産を他人に贈与するような場合には、
詐害行為取消権(民法４２４条１項)といって贈与を取消すことができる可能性があります。債権者を保護するためにこのような制度があるのですね。
相談者の詳しい状況がわかりませんが、叔母さんの死後に負債が発生したのであって、生前はそうではないということであれば詐害行為ということにはならないでしょう。
また、受益者（生前贈与を受けた相談者）が債権者を害することを知らなかったという場合も、取消権を行使することはできないと考えられます。（民法４２４条１項但書）
弁護士 倉林伸明 先生
非常にわかりやすいご説明を頂きまして、ありがとうございます。
相続財産清算人は、相続放棄をした父や叔父など全員に通帳のコピーを郵送し債権者養護の姿勢を明確にしています。
また、毎日50万円ずつ引き出された通帳コピーは叔父たちには刺激的だった様で「悪いことはできないぞ、相続財産清算人の言うことを聞いた方がいい、お金を返した方がいい」と言ってくる者もいました。
ですので倉林弁護士の適切なアドバイスをお伺いして気持ちが軽くなりました。
重ねてお礼申し上げます。
私が相続財産清算人に「私がもらいました」と説明することで法律に触れることがありますでしょうか。
贈与はおばさんが判断能力がある状態でなされたものであれば有効です。
ただし、借金がある状態で、500万円を贈与し、そのために返済ができなくなった場合は
贈与は詐害行為として取り消される可能性があります。
しかし、贈与を受けた当時借金がなかった、あるいはあなたはおばさんに借金があるとは
知りようがなかったという場合は詐害行為とはなりません。
弁護士に詳しい事情を話して相談された方がよいと思います。
詐害行為の判断は微妙なことが多くあなたが不利なことを説明してしまうかもしれません。
場合によっては相続財産清算人への回答は弁護士に依頼した方がよいかもしれません。
高島 秀行弁護士
非常にわかりやすいご説明を頂きまして、ありがとうございます。
高島先生のアドバイスを頂き、弁護士の先生に相談をしようかと存じます。
贈与を受けた時点で叔母に借金は無く、賃貸の不払いにて負債が発生しました。
＞贈与はおばさんが判断能力がある状態でなされたものであれば有効です。
叔母が亡くなる1ヶ月前に自筆の遺言状を書き実印を押したものを渡されました。内容は以下の内容です。
「遺言書 （叔母の名前）
遺言者は下記の財産を含む全部の財産を甥である（私の本名）（昭和〇年〇月〇日生）に相続させる。
1.ゆうちょ銀行 店名●● 預金種目、普通口座 口座番号●●●●
令和4年5月14日
〇〇市〇町1-6-9号
遺言者 （叔母の名前）（実印押印）」
贈与のつもりだがもし先に何かあれば相続してもいいということでした。
結果、叔母が息を引き取る前に贈与できたと思い、遺言状は使いませんでした。
これを相続財産清算人に叔母の明確な意思ととらえてもらえる可能性は高いでしょうか。