不貞行為の求償権、相手男性への法的対応は可能か?

【相談の背景】
先日、既婚男性との不貞行為の慰謝料で奥様へ100万を支払いました。
男性側へ求償権執行の件で連絡を入れたところ「すでに不貞慰藉料として嫁へ150万円(私が奥様と慰謝料の金額について決まった後に)を支払っているため、求償請求に応じる義務はない」との回答でした。
証拠の提出を求め、支払い明細と奥様との合意書についてコピーをもらいました。

※合意書内容の一部
第2条(慰謝料)
甲は、前条の不貞行為により乙に与えた精神的苦痛に対する慰謝料として、乙に対し金150万円を支払う義務があることを認める。

第7条(第三者との関係)
甲は、乙が甲の不貞行為の相手方その他の第三者に対して有する権利の行使を妨げないものとする。

第8条(本合意と他の請求との関係)
本合意に基づく甲から乙への慰謝料150万円の支払いは、甲の不貞行為によって乙が被った精神的損害に対する賠償の一部として行われるものである。

【質問1】
この場合、私は男性側へ求償権の行使を諦めたほうがいいでしょうか?
またこれ以外にいい法的対応が良いとなどあれば合わせて教えていただきたいです。

男性が既に150万円を支払っているというだけで、当然に貴方の求償権がなくなるわけではありません。ただし、その150万円をいつ支払ったのかという点は非常に重要です。裁判例でも、不貞配偶者が先に妻へ慰謝料を支払い、その後、不貞相手も妻との合意に基づき100万円を支払って求償したところ、不貞配偶者による先行支払によって既に共同の債務について免責が生じていたことなどから、不貞相手の求償請求を棄却したというケースがあります。

男性が150万円を貴方の100万円の支払より先に実際に支払っていたのであれば、「自分は既に相応の負担をしており、貴方の支払によって自分が免責されたわけではない」との反論には相応の根拠があります。この場合、求償請求は当初想定していたより難しくなる可能性があります。
一方、男性の150万円の支払が貴方の100万円の支払より後であれば、事情は異なります。貴方の支払によって男性の債務も一部免責された後に、男性が別途妻へ支払ったことになりますので、後からされた男性の支払だけを理由に、既に発生した求償関係が当然に消滅するとはいえません。

高橋様

ご回答ありがとうございます。
慰謝料を支払ったタイミングは下記となります。
この場合、求償権の関係はどうなりますでしょうか?

■男性が奥様へ支払った金額と日付
9月7日 100万
9月8日 50万

■私が奥様へ支払った金額と日付
9月4日 50万
9月29日 50万

支払時期を見る限り、9月4日の50万円と9月29日の50万円は分けて検討する必要があります。

まず、9月4日の50万円は不貞相手の150万円より先の支払ですので、その限度で不貞相手側も免責を受けたのであれば、求償の問題が生じる余地があります。実際に求償できる額については、不貞慰謝料の総額や、貴方と不貞相手との内部的な負担割合などを踏まえて検討する必要があります。また、9月4日の支払後、その事実を不貞相手に通知しないまま、不貞相手がこれを知らずに9月7日・8日に合計150万円を支払ったのであれば、民法443条2項の事後通知との関係も問題となり得ます。

一方、9月29日の50万円については、この時点で不貞相手妻は既に貴方から50万円、不貞相手から150万円の合計200万円を受領しています。本件不貞による慰謝料総額が200万円以下と評価されるのであれば、9月8日までに共同債務は既に填補されていたことになります。その場合、9月29日の50万円によって不貞相手の債務が新たに免責されたとはいえず、この50万円について不貞相手に求償するのは難しいと考えられます。逆に、慰謝料総額が200万円を超えると評価されるのであれば、9月29日時点でも共同債務が残っていた可能性があり、この50万円についても求償関係を検討する余地があります。なお、不貞相手とその妻との合意書に「150万円は損害賠償の一部」と記載されていても、夫婦間の合意により貴方との関係における客観的な損害額を決めることはできないので、その記載のみで慰謝料総額が250万円以上と確定するわけではありません。