業務上横領罪や詐欺罪の起訴猶予について。
業務上横領罪または詐欺罪で、被害額5万未満、初回、単発、単独、全額返済可能な場合、示談が成立しなくても起訴猶予になるのでしょうか。
【業務上横領罪または詐欺罪で、被害額5万未満、初回、単発、単独、全額返済可能な場合】
①示談が成立すれば,起訴猶予の可能性が大きいでしょう。但し,本件では示談がない場合とされていますので,②以下となります。
②示談が成立しなくても,被害弁償ができれば,やはり,起訴猶予の可能性は大きいでしょう。財産犯ですから,被害回復は大きな意味を持ちます。
③被害弁償ができなくても,全額返済可能な場合ですから,準備をしていることを示すことができれば,やはり,起訴猶予の可能性は相応に認められます。
ただ,相手が被害弁償の受領を拒否している場合には,別の角度での検討が必要となります。
業務上横領罪や詐欺罪は,窃盗罪と違い,関係のある相手が被害者の場合が多いです。横領は,自分が管理する他人の財物が対象ですから,預けてもらっている時点で信頼関係が存在します。詐欺も,欺罔行為を信用してしまう錯誤を利用した犯罪ですから,やはり信頼が基礎にあります。このように,信頼を裏切られたから犯人を許せないとして,被害弁償の受領を拒否して,強く処罰を求める場合もあるのです。
業務上横領も詐欺も,どちらも財産犯ですから,刑事処罰の基礎にある結果無価値(結果が悪い)の観点から,被害額の大小は処分に影響するでしょう。しかし,処罰感情の大小も処分に影響しますので,その点がどのように評価されるかの問題になると思います。
竹本 真紀様
お忙しい中具体的にご回答いただき、誠にありがとうございます。
相手が被害弁償の受理を拒否している場合についてですが、被害弁償が全額できる状態であれば起訴猶予の可能性が高いのでしょうか。
被害回復の見込という観点からは,起訴猶予の可能性は大きくなるでしょう。
被害弁償受理の拒絶という観点からは,被害者の処罰感情が強いと評価されるため,起訴猶予の可能性は小さくなるでしょう。
被害回復も処罰感情も,結果無価値(結果が悪い)の観点からは,どちらも重要な事情です。
処罰感情の理由がどのような内容によるかで,起訴猶予になるか否かの判断が分かれる可能性はあるでしょう。