職場トイレ盗撮被害、示談金20万円は妥当か?
今年、会社の上司に職場のトイレにカメラが仕掛けられ、盗撮されました。犯人は自首して逮捕され、会社もクビになりました。相手の弁護士から、示談の話があり、20万と金額が提示してきました。信頼していた上司から、こんな形で裏切られ、また自宅以外のトイレに行くのも、未だに気になって仕方ありません。私としては、金額に納得がいきません。でもこの金額が妥当なのでしょうか?
刑事事件の示談金ですが、民事の例えば交通事故の損害賠償請求(慰謝料請求)のように判例が算定基準を定めているわけではなく、被害者が許してもいいと考える金額と加害者が出せる金額との相対関係で決まるものと考えております。質問者が被疑者側から提示された金額20万円で許せると考えればそれが妥当な金額ですし、質問者が20万円では許せないと考えれば示談金としては少なすぎることになります。弁護人として過去担当した職場の盗撮事案では20万円より少ない金額で被害者全員に示談いただいたことがあります。
回答になっているかどうか不明ですが、よろしくお願いいたします。
盗撮の態様や元上司がどのような制裁を受けているかが示談金額の考慮要素として挙げられるでしょう。
職場での盗撮で加害者が元上司という顔見知りの人物による犯行であればご相談者様の精神的苦痛も大きいと存じます。この事情は、増額要素といえるでしょう。また、ご相談者様にとっては撮影された内容が流通されることへの懸念があるものと存じます。盗撮の目的も確認する必要があるでしょう。
さらに、元上司が自首した経緯が気になるところです。法律上の「自首」(刑法42条1項)は、罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に適用されるものであって、一般の方が想定される自首よりも適用範囲が狭いケースが多いので注意が必要です。例えば、カメラがトイレ内で発見され撮影者も映り込んでいてすでに会社から元上司にヒアリングがされ、捜査機関に連絡がなされているような状況で、元上司が追いつめられて自らが犯人であることを名乗り出たといった経緯だと「自首」とはいえないでしょう。
他方で、元上司が会社をクビになったということは一定の社会的制裁を受けていると評価されますから、減額に働く要素となるでしょう。
以上、縷々述べましたが、20万円はやや低い印象です。上記の増額要素を指摘して金額の上積みを求め得るのではないかと考えます。
職場での関係性や行為の悪質性や内容、精神的苦痛の程度からすると、やや低額であるという印象です。
ケースバイケースですが、相手としては1回目は低めに提示する傾向はありますし、それで示談できれば良いということで、20万円を提示したのだと思います。
実際には幅を持たせて30万円から50万円程度で収めたいと考えているのではなかろうかとも思います。