離婚に伴う慰謝料の妥当性と念書の法的効力についての相談
当方、結婚15年になり、中学3年の息子が1人おりますが、お恥ずかしながら私の不始末(度重なる風俗店等の利用に伴うカードキャッシングによる借金)が原因で2歳下の妻とは2021年より別居しております。借金は母に肩代わりしてもらい、今はその金額を母に返済中です。
別居にあたり、生活費として月10万円を妻の口座に支払っていますが、その他に、事案発覚から程なく行われた今後に関する話し合いの場にて、妻及び妻の両親と1対3という状況の中、精神的慰謝料という名目で1,600万円(半年ごとの賞与から80万円ずつ、年間160万円を10年分)の支払を求められ、念書の作成と署名・捺印を要求されました。本来であればその場で署名・捺印は行わず、家族や弁護士に相談すべきだったと今は考えますが、当時は残念ながら作成・捺印しない限りそこから帰れないような状況でもあり、冷静な判断力もなかったことから、言われるまま自筆にて念書を作成し、署名・捺印してしまいました。その後、2年ほど前にこちらの収支状況を妻に説明し、1回の支払額を80万円から40万円に減額してもらいましたが、その際も「支払総額に変化はなし」と妻から言われています。
家族からは、「仮に離婚に伴う慰謝料と比較しても、有責度合いが大きかったとして精々300万円程度が相場。相手に離婚するメリットがないから離婚しないだけで、どう考えても1,600万という金額はおかしい。しかも、事前に相談があったとはいえ、この8月に19年務めた正社員の企業を退職し今は無収入、息子の受験のサポートという名目だが、すぐに仕事に就く予定もなく、こちらからの支払で生活する魂胆が透けて見える。すでに別居から4年が経過し、一般的に離婚に相当する事由にも当たる状況なのだから、これまでの支払額を離婚に伴う慰謝料として、きちんと整理すべきだ」と言われております。
身を置かせてもらっている実家の母からは、なぜ自分がわざわざ息子の面倒を見てやらなければならないのかという思いがよぎることも少なくないと言います。ただ、正直自分がどうすべきなのか、離婚に向けて粛々と準備をすべきなのか、関係修復に向け何かできることがあるのか、お恥ずかしながら別居から4年が経つ中でも具体的に考えられていない状況で、甘い考えであるとは思いつつも、もう一度やり直すことができたらと思ってしまいます。妻からは「息子の高校受験が終わるまでは具体的な話はあまりしたくない」と言われていますが、家族からは「そうだとしても準備はすべき」と当然の指摘を受ける始末です。
そこでお伺いしたいのですが、
1 仮に離婚請求を行う場合、念書に基づきすでに支払った金額は慰謝料に含めることができるのでしょうか?
2 一般的な慰謝料請求額に比較して著しく高額と取れる金額について、離婚請求と同時に減額の申出を行うことはできるのでしょうか?
3 仮に相手方が、「不正な手段で作成されたものでない限り、念書の内容は有効なので支払義務は残る」といった場合、作成当時の状況を「署名・捺印を間接的に強要された状態」と考えることはできるのでしょうか?
正直、自分がどうしたいのか、そのために何が必要なのかを決めるだけだとは思っているのですが、少なくとも離婚の結論を取るとした場合、妻は別途慰謝料請求も行うのではと考えていて、今後自分で生活を立て直していくことがそもそも難しい状況になるのではという大きな懸念があり、今回相談させていただいた次第です。
2週間に1度(時々は週に1度)週末は自宅に戻り、息子の顔を見てある種普通の一日を過ごし実家に戻るという生活ももう4年になり、最近は、別居の期間が長くなったこともあるのか、当初のような事務的な態度は見えず、その瞬間だけを切り取れば、まるでこのまま関係が修復できそうな気もしています。
ただ一方で、正社員の職をやめる際も、全く実務経験もない中で「Webデザイナーをやってみたい」「環境保護に関する仕事がしたい」「息子が高校に入ったら職業訓練校に通う」といった、私としてはあまりに非現実的な発言もあり、最近は「息子が高校に入ったら、アルバイトでも始めようか」といった様子で、そんな中で私に対しては「もしかしたらまた元に戻れるかもしれないけど、今はまだわからない」といった言葉をかけられます。正直、こちらの家族からすれば「家にはそのまま住むし家賃と生活費の大半はこちら持ち、実家で監視させているから自分は気にしなくて済む」としか見えないそうです。
個人的にも、これから先どうなっていくのかわからないまま、今のような生活を続けることには気持ちの面で整理がつかないでいます。元は自分の起こした過ちとはいえ、アドバイスをいただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。
私見を述べさせていただきます。
>1について
1600万円が何に対する慰謝料かにもよると思いますが、相談者さんの不貞行為に対するものでしたら、不貞を原因とする別居離婚であるならば、当然含まれるでしょう。
もっとも、相談者さんの風俗通いは不貞行為とみなされると思いますので、相談者さんは有責配偶者であり(民法770条1項1号)、お子様もいますし婚姻期間も長いので、別居4年程度では離婚請求は認められない可能性が高いです。
そうすると、原則的に、離婚慰謝料もしくは解決金名目で相手が納得のいく金額を支払わないと離婚できませんので、既払いが幾らかなどの議論はそれほど意味が無いものと考えます。
>2について
現在支払い中の1600万円は離婚とは別に定められているものと思料します。原則的には離婚請求(離婚調停)とは無関係です。
ですが、あまりに高額ですので、離婚調停の中でその減額を話し合う余地はあるように思えます。
一般的には、相談者さんが1600万円の合意の無効等を争うのでしたら、支払いを停止し相手が訴訟等を提起するのを待つか、こちらから、1600万円の債務不存在確認訴訟を提起することになるでしょう。
>3について
「間接的に強要された」との主張は、なかなか認められないでしょう。主張の合理性が認められにくいと思います。
もっとも、本件で慰謝料1600万円はあまりに高額ですので、公序良俗に反する範囲で無効といえる余地は十分あります。
本件は、おそらく妻側は、相談者さんからお金を取れるだけ取りながら子どもと安定した生活をするぐらいの考えしかないと思います。普通の夫婦のやり取りではありません。
無職なのに月に50万円の支払いを求めることは、相談者さんの立場に全く理解を示していない証拠でしょう。
相談者さんとしては、今後、妻との離婚を前提に、妥当な婚姻費用を支払い別居を続け、自分の生活を安定させ、最終的に子供が成長したらすんなり離婚できるような体制を整えるべきでしょう。
そうしないと、妻はいつまでたっても自立ようとしないのではないかと思います。
以上、ご参考まで。