相続放棄の取り消しは可能か?錯誤による誤解が原因で
祖父の遺産に関する「相続放棄の取り消し(錯誤)」が可能かどうか知りたいです。
【状況の概要】
・被相続人(祖父)は9年前に死亡しました
・祖父には3人の娘(A・B・C)がおり、Bが私の母です
・Aは祖父より先に17年前に死亡
・Aの長男も今年死亡
・相続当時、母Bと叔母Cは家庭裁判所で相続放棄をしました
【重大な誤解の内容】
相続放棄をした当時、家族全員が
「相続放棄しても、その子(孫)が代わりに相続する」
という誤った理解を持っていました。
そのため、母と叔母は
「自分は相続しないが、孫が相続できるなら問題ない」
と考え、相続放棄を申述しました。
今回A長男が死亡し、行政書士に相談した際、
「相続放棄をすると子にも相続権が移らない」
という事実を初めて知りました。
母Bも叔母Cも、
「正しい制度を知っていたら絶対に放棄しなかった」
と明確に言っています。
母と叔母の相続放棄は取り消すことが可能でしょうか?
法律を離れた事実関係の錯誤でないため、取消しは認められないでしょう。仮に錯誤に該当したとしても重過失ありとなりそうです。「法の不知は害する」という原則からしても、残念ながら救済の見込みはなさそうです。
そもそも相続放棄の取消し自体が難しいところ、「(法律解釈を誤って)孫が相続できると思ったから相続放棄した」という錯誤なので、動機の錯誤ということになります。
動機の錯誤はその動機が表示されている必要がありますが、当然そのような動機は表示されていないでしょうから、錯誤取消しはできないということになります。
そもそも「孫が相続できるから相続放棄した」と動機を表示すれば、家裁はそもそも相続放棄申述を受理しなかったことも考えられます。
相続放棄は原則として撤回できず、錯誤による無効主張や、詐欺・脅迫・未成年者の単独の放棄などの事情がある場合の取り消しが認められるにとどまります。
ただし、錯誤による無効主張は、判例によれば、民法95条の錯誤の無効主張と同様の要件を要求するものであり、①放棄する動機が相続放棄申述書に記載されるなど、外部に表示されている、②その錯誤が相続放棄を取り消しうるほどの重大な影響をもたらしたこと、③相続放棄をした人が十分な調査を行っていたなど重大な過失がなかったことを証明する必要があります。
なお、前提として、相続放棄の無効を単独で主張し認めてもらう法制度は現在、日本にはありません。
そのため、個別具体的な権利主張・請求を行う中で、相続放棄の無効を主張する、という流れになろうかと思います。
結論として、重要な問題であるため一度は法律相談を実際に受けられたほうが良いとは思います。
もっとも私見としては、
>相続放棄しても、その子(孫)が代わりに相続する
というのは、真実と受け取ってもやむを得ないほど多くの人に広く誤解されている知識、とはいえません。
そのため、個人的見解としては上記③において(場合によっては①も)認められない可能性が高いのではないかと考えます。
ご参考まで。
錯誤による取消は難しいと予想されます。
が、あえて相続人として相続財産を処分、消費するなどすれば、相続放棄後であったとしても単純承認をした相続人と取り扱われる余地があるでしょう。