モデル事務所と契約トラブル、解約拒否や金銭要求への対処法は?

今年4月からモデル事務所に所属しています。
業務委託契約なのですが、直前まで時間や仕事の有無がわからないことが多く、他の仕事を入れることができません。
また、その仕事を受けていくらギャラが発生するのかも、給料をもらうまでわからないという状況です。
加えて、所属して唯一もらった仕事はイベント会場の設営という、モデルとは関係のない仕事でした。

このことをモデル仲間に相談したところ、「レッスンを受けないと仕事はほぼもらえない」と言われたので、仕事の幅を広げるため、2025年7月にモデルスクールに申し込みました。
ですが、契約書に不備が見つかり、契約日に担当者が不在だったことで、正式契約をしないままレッスンを受けるよう促され、3、4回レッスンを受けました。この時に頭金(約半額)のみ支払いました。
その後、契約対応について杜撰な点が多かったため、解約と退所を申し入れ、9/1に話し合いの場を持ちました。
個人的には頭金は諦めるにしても、対応が信頼に値するものではなかったため、契約はしないつもりでしたが、【口頭でも契約は成立する、レッスンを消化しているため契約は有効】と言われ、半ば強制的に7/18での契約を記入させられました。
その後、不信感が拭えないことと持病の悪化により退所を申し入れました。
すると、残金を一括で払わないと退所できないといわれてしまいました。確かに契約書には記載がありましたが、病気で働くこともできず、支払いも難しいなか【支払え、払わないと法的手続きに移行する】の一点張りで、交渉も難しい状況です。
また、金銭面ではレッスンは数回受けたのみで、先方としてはマイナスは出ていないと思われます。
対応についてご教示いただけると助かります。

事務所側の主張を鵜呑みにせず、冷静な対応を心掛けましょう。
 例えば、近時、芸能事務所とタレントとの契約関係を雇用契約と扱い、労働基準法を適用して、以下のような解決をする裁判例が出て来ています。

① 一年を超える契約期間の定めのある労働契約につき、労働者は、労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができるという労働基準法第137条の規定を適用して、タレントの退所を認める

② 労働基準法第16条を適用し、退職時の違約金の定めを無効とする

ただし、芸能事務所とタレントとの契約関係を雇用契約とは認めない裁判例もありますので、より詳しくは、お手もと契約書を持参の上、お住まいの地域等の弁護士に直接相談してみて下さい。

【参考】労働基準法
(この法律違反の契約)
第十三条 この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。
(契約期間等)
第十四条 労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、三年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては、五年)を超える期間について締結してはならない。
一 専門的な知識、技術又は経験(以下この号及び第四十一条の二第一項第一号において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約
二 略

第百三十七条 期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百四号)附則第三条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。

(賠償予定の禁止)
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

契約成立について(争えるか)
口頭でも契約は成立するのは正しいですが、その詳しい内容について知らされていない契約締結日以前の状態では、事務所側も詳細な違約の定めに基づく請求はできなかったでしょう。

半ば強制されながらも7月18日に契約書にサインをしたことで、一応は契約書にある全てについて相談者様が同意した、という体裁が整ったことになり、事務所はこれを盾に各種請求を行うし、強気にもなっているということです。

強迫による契約を取り消しうるとする民法の規定がありますが、訴訟等において争う場合、証拠があれば良いですが、無い場合には強迫により契約を締結したとの証明は難しく、取消しが認められる可能性はその分低くなるでしょう。

成立した契約は業務委託契約か労働契約か
業務委託契約とのことですが、これは労働法による雇用者に厳しい各種規制の適用を逃れるためによく使用される契約形態です。

ただ業務委託契約との名称でも、その実質的な内容により契約形態が判断されますので、拘束が厳しい、事実上他の仕事ができないような場合には、労働契約とされる可能性が高まるでしょう。

成立した契約が労働契約とされる場合(その保護について)
レッスン料の残額を払わなければ解約できない等の条項は、強制労働禁止(労働基準法5条)、賠償予定禁止(同16条)に反し、仮に訴訟になるとしても無効とされる可能性が高いと思われます。

今後の展望
相談者様が事務所に求める事項は現時点では退所させてくれということに尽きるでしょうから、今はむしろ事務所から、解約など認められないから金を払え、と相談者様が請求を受ける立場にあります。

そのようなわけで、一方で、既払いの頭金の回収を諦めている相談者様としては、会社に対して契約解除の意思を確実に伝え、4月以前どおり普通に生活していればそれで良いということになります。

他方、解約に納得しない事務所は、幾度かレッスン料残金の支払の請求をした上で、最悪訴訟を起こしてくることもありえます。

相談者様としては、その訴訟で上述のいくつかの契約上の問題点を指摘して、レッスン料については支払う必要がない旨御自身の権利を主張され、訴訟で勝ちを得ていくという流れになろうかと思います。

ひとまずは、契約解除の意思の確実な伝達のため、事務所に内容証明郵便で解除の意思を伝える必要があります。