不当解雇裁判での証拠提出と復職回避の戦略について相談
地位確認訴訟を起こされた
被告会社側です。
上場前のアプリ開発会社で
私は専務をしております。
不当解雇の裁判で
証拠を出すタイミングというものはありますか?
不当解雇ということで、
社員から弁護士を立てられております。
まずは交渉となります。
能力不足という理由での
解雇ですので、
企業側が不利になるのは重々承知ですが。
社員は年俸1400万円の
プログラマーです。
社長といつも喧嘩するので
苛立つ社長が強引に
クビをきってしましました。
我が社が不利なのはわかっております。
とにかく
復職はしないで欲しいです。
させたくないです。
そこで相談です。
①
裁判前の交渉では
決着がつかないことを想定して、
次の段階の訴訟を意識して、
交渉段階では、あえて、証拠を出さないという作戦もあり得ますか?
墓穴を掘るより、
あえて、のらりくらりと
話し合いに応じないというのもありますか?
そうすると原告も
再就職したりして、復職への道を諦めるかもしれないという作戦です。
②
訴訟になること自体は、
企業にとっては負担ですか?
辞めさせたい社員がいる場合、
お金かかっても、
訴訟になっても構わないという
社長の会社も多いですか?
うちの社長は
他の会社に、
再就職するのを待っていよう!
と言っています!
お金はたいして気に留めておりませんが、風評被害は心配です。
上場前ですので。
③
原告も復職する気なんてないはずなのに、交渉や訴訟をしてくるのは、お金目的でしょうか?
そうであるならば、
そこをあえて、
復職を指示して、相手の請求権を拒絶する作戦もありですか?
クビにしておいて、裁判中に、復職の指示を出すのはムシが良すぎますか?
裁判所も嫌がりますか?
①について
裁判前の交渉段階であえて証拠を出さず再就職を待つ作戦はないとは言えません。
しかし、不当解雇の可能性が高いと判断して労働者が弁護士を立てたということは、遠くないうちに労働審判等の手続が始まる可能性が高いと思います。
解雇事件では立証責任が会社側にあるので、結局、証拠は出さざるを得ません。
したがって、証拠を出さずに時間をかけて再就職を待つ作戦が功を奏する可能性は、今回はあまり高くないと思います。
②について
再就職を待つ作戦が通用するのは、大前提として、解雇の法的な有効性が微妙な場合(=それなりに会社に有利な事情がある場合)で、かつ、労働者が強気でなく争いを好まない場合、労働者側の弁護士が好戦的でない場合、労働組合が関与しない場合など、労働者が再就職を優先する事情がある場合です。
今回は不当解雇の可能性が高いと会社側も見ているという状況で、労働者が弁護士を立てた場合ですから、再就職を待つ作戦がうまく行かない可能性が高い事例でしょう。
上場前であれば上場審査に関係するので、できる限り裁判は避けた方が良いかと思います。
③について
復職する気がない労働者が、お金目的で復職を求めるのは良くあることです。
解雇が無効でも労働者に金銭支払請求権がないので、金銭解決するには復職を求めて和解するしか方法がないからです。
ですから、ご指摘のように、復職を指示して相手の金銭支払請求権を拒絶する作戦というのはあり得ます。
復職を認めるなら裁判が始まる前にすべきでしょう。
裁判になってから解雇を撤回すれば、労働者は早期解決を諦めたあげくに勝訴を目前にして和解を持ちかけられるので、強気の条件を要求する可能性が高いと言えます。
裁判前に復職の可能性を持ち出せば、労働者側の要求が緩くなって交渉しやすくなる場合もあります。
ただし、労働者が本気で復職を覚悟した場合は持久戦になりますので、本気で労働者が復職を覚悟しているのか、代理人弁護士が何を意図しているのか見極めながら解決金を提示するなど、硬軟織り交ぜた賢い交渉が必要です。また、労働者が「退職に追い込まれた」と主張して損害賠償請求に切り替える場合や、交渉窓口を労働組合に切り替えて「不当労働行為だ」と主張する場合もあります。長期戦にならないよう労働者側の意図を見極めた適切な判断がその都度求められます。