父の生前贈与が兄の遺留分に与える影響について教えてください

父、母、兄、弟の4人家族で、2020年に父が弟に1000万円贈与、2021年に父が兄に1000万円贈与しました。
父は公正証書遺言を残し、母と弟に均等に相続するという内容です。父が2045年に死亡し、財産が4000万円の場合、兄が請求できる遺留分は500万円でしょうか?または1000万円の贈与を受けているため、遺留分は〇円でしょうか?
宜しくお願い致します。

ご質問のケースでは、兄は遺留分額を上回る生前贈与を受けているため、遺留分侵害額は0円となる可能性が高いでしょう。

相続人に対する10年以上前の生前贈与は、遺留分を算定するための財産の価額に原則として加算されないので(民法1044条3項)、遺留分額は1000万円になるものの、生前贈与が控除される結果として、遺留分侵害額は0円になると考えられます。
一方、「当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って」(同条1項後段)いたと仮定した場合は、10年以上の前の生前贈与が加算される結果、兄の遺留分額は1500万円になり、生前贈与が控除される結果、遺留分侵害額は500万円になると試算されます。

<参考:民法1043条、1044条>
(遺留分を算定するための財産の価額)
第千四十三条 遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。
2 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。
第千四十四条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
2 第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。