社員の経歴詐称による解雇の法的有効性と対策は?
年商500億円の不動産会社で
人事部長をしています。
不動産の世界は
さまざまさな営業マンが転職してきますが、
結構、経歴詐称をして入社しているものもいます。
今回、営業成績の良くない
年俸の高い中途採用者を3人解雇しました。
それぞれ無期限雇用の年俸900〜1200万円クラスの社員です。
全員、能力不足と経歴詐称を解雇理由にしております。
※経歴詐称は、過去企業の営業成績の嘘や所属年数の嘘などです。
ネットで調べたところ、
社員の経歴詐称は、解雇理由として十分となり得るものの、その詐称の内容や程度、会社に与える影響などによって判断が分かれると書いてありました。
解雇手続きとしては、
この半年の営業成績が給与を下回る成績だったので、呼び出して、一発解雇をしております。
経験豊富な中途採用だったので
特に、指導も教育もしておりません。
経歴詐称は、
不動産の世界は
同業種企業で営業を渡り歩いている方が多いので、2〜3か所の経歴を1社にまとめている方が少なくないため、
それを解雇理由にしております。
今回解雇にした3人は全員それをして履歴書を詐称しておりました。
解雇は有効だと思っておりますが、
その3人から、それぞれ、
弁護士名で、解雇無効の内容配達証明が届きました。
どうなりますでしょうか?
どのような手順を踏むのが良いでしょうか?
裁判になると負けるでしょうか?
1.解雇の有効要件
労働契約法16条により、解雇が有効とされるためには、
①客観的に合理的な理由があり、かつ、
②社会通念上相当と認められること、
の両要件を満たす必要があります。
2.経歴詐称を理由とする解雇の判断要素
経歴詐称を理由とする解雇は、次の事情を総合考慮して判断されます。
・採用時に、該当経歴をどの程度重視していたか(職務適性・給与設定への影響等)
・詐称の内容・程度(在籍年数の誤記か、実績の虚偽記載か)
・会社に与えた影響(採用判断を誤らせたか、信用失墜等の実害があるか)
したがって、在籍期間の誤記や経歴の一部誇張にとどまる場合は、採用判断を左右する程度でなければ、直ちに解雇が有効とされるとは限りません。
一方、成績・実績を虚偽記載し、採用・待遇決定に影響した場合は、有効と判断される余地があります。
3.能力不足を理由とする解雇の判断要素
能力不足を理由とする解雇は、以下の点が重視されます。
・成績評価や目標未達の具体的数値
・指導・注意・配置転換等の改善機会を与えたか
・能力不足が一時的なものではなく、継続的・顕著であるか
裁判例上、一度の成績不振や短期間の未達のみでは解雇が認められにくく、指導・教育の欠如は会社側の不利要素となります。
4.想定されるリスクと今後の対応
今回のケースでは、経歴詐称の内容が「在籍年数の調整」レベルである場合、採用判断に与える影響が小さいとみられる可能性があり、能力不足解雇も、指導・教育を経ずに一発解雇した点で、解雇無効と判断されるリスクがあります。
解雇無効となった場合には、復職命令、または解雇から判決までの未払賃金(バックペイ)の支払命令が出るおそれがあります。
したがって、現時点では、労働審判・訴訟への発展を見据えて、弁護士と協議のうえ、経歴詐称の証拠(履歴書・面接メモ・社内評価等)の整理・保全を進めることが重要です。
場合によっては、会社都合退職や一定の解決金による和解も現実的な選択肢となります。
経歴詐称での解雇は難しそうですね
ありがとうございます