婚姻中の夫からの一方的な支払い停止通知、法的問題は?
婚姻関係中の相手から、以下のような内容の文書(司法書士助手名義)で連絡がありました。
•今後ローンを支払わない
•生活費や保育料の支払いを停止する
•携帯やWi-Fi契約を一方的に名義変更・解除すると通知
•子どもの送り迎えなどは今後妻に任せる
当該住宅はペアローン(共同名義)で、支払い用口座にはこれまで双方の給与から入金していました。
また、婚姻中にもかかわらず、夫が自分の口座内の資金をほぼ全額引き出している状況です。
児童手当の振込先も夫名義の口座となっています。
このような一方的な通告・資金引き出し行為は、法的に問題ないのでしょうか。
今後どのように対応・返信すべきかご教示ください
1 生活費等の支払について
婚姻中、夫婦は民法760条に基づき、各自の資力や社会的地位に応じて婚姻費用を分担する義務を負います。したがって、正当な理由なく一方的に生活費や保育料の支払を停止する行為は、この義務に反し、法的に許されません。
2 資金の引出しについて
婚姻中に形成された財産は、名義にかかわらず、実質的に共同生活のために蓄積されたものであれば「共有財産」と評価される可能性があります。したがって、これを一方的に引き出す行為は不当であり、後日、財産分与請求や不当利得返還請求により返還を求められるおそれがあります。
お困りのことと思います。
>法的に問題ないのでしょうか。
ご質問の趣旨が、刑法上の罰則が与えられるか、何らかのペナルティが課されるか、という意味でしたら、形式的には問題は無いことになります。
婚姻中の夫婦には、民法上、夫婦扶助義務がありますので、相手を扶助すべく収入に応じた費用を支払う義務がありますが、その違反がペナルティを負うような規定はありません。
また、夫婦扶助義務を怠った場合の離婚事由として「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)がありますが、この場合の悪意とは、積極的に害する意図が必要と解されますので、相談者さんの事例がこれに当たるかは、はっきり言えません。
もちろん、他の事由も含めて、悪意の遺棄が認められると、離婚慰謝料の請求対象になりますし、相手からの離婚が認められにくくなります。
同居の有無、そのような関係に至る経緯が不明ですが、対応としましては、相手に対し、「婚姻費用分担調停」を申立て、婚姻費用を請求してください。
また、相手の引き出し行為は、離婚に伴う財産分与に備えたものだと思われます。
相手の財産処分を止める法的方法は、慰謝料を被保全債権とする仮差押え程度しか思いつきませんが、その他、相手の財産に関する資料は集めるべきでしょうし、不貞の影があるのでしたら、不貞の証拠もなんとか集めていけるといいと思います。
ここでのご質問だけでは、一般論になってしまいますので、詳細は、お近くの弁護士にお聞きいただいたほうが良いのではないかと思います。
以上、私見ながらご参考まで。