労基法22条違反で退職証明書の慰謝料請求は可能か?
先日、雇用されていた企業とトラブルになり、結果として企業を解雇されました。
そこで公的支援などの個人的な手続に必要があったので、「離職日のみを記載」と指定して退職証明書の発行依頼をしたのですが、発行された退職証明書には離職日だけでなく「在籍期間」「業務内容」「退職事由」と、指定していない3項目が記載されていました。
おそらく企業側の無知と対立関係にあったことから嫌がらせの意図も感じられますが、明らかに労働基準法第22条違反であり、公的な手続も遅れてしまい死活問題になってしまいそうな状況です。
お聞きしたいのは、このようなケースで慰謝料請求をできうるものなのかという事です。
不当解雇などであれば判例もあるようですが、労基法22条違反については調べても判例があまりないようなのでお聞きしました。
尚、解雇そのものについては現状争点とはしておりません。
宜しくお願い致します。
労働基準法では、22条1項が退職証明書の交付について、22条2項が解雇理由証明書の交付について定めております。
そして、22条3項では、退職証明書及び解雇理由証明書について、「労働者の請求しない事項を記入してはならない。」と定められております。そして、この条項に違反すると、120条柱書き及び同条1号により、罰金30万円以下の処罰を受けます。
なお、厚生労働省の通達においても、解雇理由証明書の交付に関してのものではありますが、「解雇された労働者が解雇の事実のみについて使用者に証明書を請求した場合、使用者は、法第二二条第二項の規定により、解雇の理由を証明書に記載してはならず、解雇の事実のみを証明書に記載する義務がある」とされています(基発第45号(平成11年1月29日)。
【慰謝料請求は可能か】
実際のところは非常に困難です。
まずは、労基署へ情報提供を行い、行政指導を行なってもらった上で、それでもなお使用者側が態度を改めずに同様の退職証明書しか発行しないのであれば今後の就職活動へ影響が生じるかと思います。ですが、退職証明書の交付は何度でも求めることができますし、現状では、相手方が態度を改めて交付する可能性もあり、このような段階であると、不法行為として慰謝料請求が実際に認められるかは非常に難しいところです。
ただし、使用者側が従前から証明書の交付を無用に長引かせてきており、ようやく交付したかと思えばこのような内容のため、すでに就職活動に多大な支障が現実に出たというのであれば損害賠償は可能な余地もあり得ます。ですがこの場合でも、就業先に事情の説明をして提出を待ってもらうなどすれば、支障を回避できたのではないかと言われてしまう余地もあり得ます。
ですので、解決という意味では、慰謝料請求はできないとしても、労基署から行政指導を行なってもらい、必要な事項「のみ」が記載された退職証明書の交付をしてもらった方が良いと思います。
実害があれば、損害賠償請求できる可能性はあります。ただ、請求額通りが法的に認められるとは限らないです。損害賠償請求は可能ですが、損害との因果関係の立証が容易ではないと思われます。客観的証拠が不可欠です。法的責任をきちんと追及されたい場合には、労働法にかなり詳しく、上記に関係した法理等にも通じた弁護士等に相談し、法的に正確に分析してもらい、今後の対応を検討するべきです。