高度専門職の能力不足による解雇は法的に可能か？
上場を控えたベンチャー企業の
私は企業側人事マネージャーの立場です。
１年前に、
弊社の給与レベルでは
大変優遇された条件で
雇ったスタッフがいます。
無期限雇用正社員で
開発部の
年棒1800万円程の給料条件です。
一般社員です。
そのスタッフが、
社長との折り合いが悪いので、
予告手当を出して、
能力不足という理由で、
社長指示のもとに
解雇にしました。
※解雇に当たって、配置換えも、教育も、面談も、一切しておりません。
その後、
1か月たってから
弁護士を通じて、
不当解雇を申し立てて来ました。
「退職同意の条件として、
給与3年分を出すなら退職に同意する。
そうでないならば裁判にする。」
と。
社長は
お金を払う気がないので、
困っております。
ネットで調べると、
社会的客観的な解雇要件を全く満たしていないのに、
手順を踏まずに解雇したわれわれに落ち度はありそうです。
しかし、
開発者のように、
職種を限定した
高年棒の
高度な専門職である場合は、
能力不足を理由にすると
解雇可能のような判例もあるのを見つけました。
質問です。
「高度人材の中途採用の
能力不足理由は解雇しやすいでしょうか？」
社長とよく言い合いをしていたので、
協調性もなく、能力も劣って、
業務に支障が出た！
という建て付けにしようと考えておりますが、甘いでしょうか？
無理でしょうか？
能力不足は解雇のハードルは高いのでしょうか？高度人材の中途社員は解雇しやすいのでしようか？
専門職や幹部枠等での採用の場合には、一般職に比べて解雇が認められやすいという話はあります。ただし、手放しに有効となる訳ではなく、①能力不足であることの立証（実際の成績の定量化と貴社の採用時の期待値や他の従業員の成績との比較）、②勤務評定や注意・勧告・指導等を複数回実施しても課題が解消されない実績の立証、③（マストではありませんが）配置転換の打診等解雇回避措置の実施が前提になるでしょう。
今回は通常の正社員とのことですし、単に折り合いが悪い、というだけでは解雇有効となるのは難しいと思われますので、①解雇を撤回するか、②今はごねて労働審判の中で裁判官の仲立ちもあるなかで和解金額の引き下げ交渉をされるのが現実的ではないかと存じます。
回答ありがとうございます。
①能力不足であることの立証（実際の成績の定量化と貴社の採用時の期待値や他の従業員の成績との比較）
→
今度発売するアプリの
試作開発版のプログラムを間違えていたことが度々あったので、
それを理由にしようと思いますが、
甘いですか？
期待値とかは
マネジメントも期待していたのですが、イマイチだったとの理由づけで良いでしょうか？
ぜんぜん定量化の評価ではないですが。
※私は解雇は無効だと思っております。
が、社長を説得しないといけないので、厄介です。
復職させないとなると、
落とし所の解決金はどれくらいでしょうか？
上記の情報からすると、法的な意味で解雇を有効とするのは難しいでしょう。
だからこそ労働者側がこれほど強気の交渉態度を見せているのでしょう。
他方で、労働者側が「退職同意の条件として、給与3年分を出すなら退職に同意する。」と申し出たのは、交渉術として上手くないと思います。
このような場合、労働者側は内心では復職する意思がなく、できるだけ高額の解決金を手に入れようと、強気の交渉をしている場合がほとんどです。
したがって、会社側が復職を認める姿勢を見せたら、交渉態度を一変させる可能性が高いと思います。
解雇事件では、労働者側が法的に主張できるのは、
「契約上の地位確認請求」と言って労働契約が終了していないことの確認を求めること（＋解雇後の未払賃金請求）です。
強気の交渉をできるのは、あくまでも会社側が復職を認めない場合だけです。
会社側が復職を認める場合は、労働者側は法的な請求権をほぼ失ってしまうので、強気の交渉を続けられなくなります。
労働者側の交渉態度を見極めながら、復職を認めて復職後の処遇について協議するなどの交渉をすれば、
労働者側が態度を一変させて、最終的に妥当な解決金額で退職に合意するケースは実務上多くあります。
解決金の額は、①会社側がどの程度復職後の対象者の扱いを許容し得るか、②労働者側がどの程度復職後の職場環境に耐えられるか、のうち、
①が大きければ低い方向に動くでしょうし、②が大きければ高い方に動くでしょう。
金銭解決の交渉というのは、結局は交渉上の力関係で決まるものです。
会社側としては、「解雇ありき」で頑なに対抗するだけではなく、労働者側の置かれている状況や内心の心境も踏まえつつ、
上手い交渉術で妥当な落としどころを探るのが、解雇事件の扱い方法としては適切です。
特に、法的紛争をできる限り避けたい環境であれば、法的紛争を回避しつつ上手い落としどころを見つける交渉術が求められます。