夫の不貞相手に慰謝料請求は可能か、手続きと相場は?

夫の不貞行為の相手女性に対し、慰謝料請求を検討しております。
現時点で、相手方に関する情報が限られているため、請求が可能か、また慰謝料の相場・妥当な金額についてご相談したく存じます。

(1)発覚の経緯
2ヶ月前に偶然、夫のLINEトーク履歴を目にしたことにより、特定の女性との不貞行為が約5年前から継続していたことが発覚しました。
トーク履歴は別端末に保存済みです。夫に気づかれないよう探偵社への調査を検討していましたが、精神的ショックから心身に不調をきたし、調査前に夫へ直接確認する形となりました。
(2)夫の供述内容
夫は不貞の事実を全面的に認めております。
相手女性とはマッチングアプリで知り合い、恋愛感情はなく、主に金銭授受を伴う性行為の関係であったとのことです。
・期間:約5年間
・頻度:月1回程度(累計約50回)
・場所:ラブホテル
・金銭授受あり
・相手女性の本名・住所・職業等は不明

(3)相手女性に関する情報
マッチングアプリ上では、夫が既婚者であることを明示していました。
相手女性は離婚歴があり、3人の子を養育するシングルマザーと記載されていました。
また、LINEトークの内容から、相手女性が夫に家庭があることを認識していたこと、自身が養育費を受け取りながら子を育てていることが確認できます。
現時点で判明している相手方の情報は「車両とナンバー」のみです。

(4)夫婦関係および現在の状況
結婚22年、子どもなし。
発覚前は夫婦仲は良好でしたが、現在は関係が悪化しております。
ただし、経済的事情および世間体を考慮し、離婚は考えておりません。
不貞行為発覚後、私は精神的苦痛から心療内科に通院・治療を受けております。
夫への慰謝料請求は家庭内での金銭移動に過ぎないため行わず、今後の生活の中で償いを求める方針です。

相談事項
1. 夫の自白およびLINEトーク履歴のみを証拠とした場合でも、相手女性への慰謝料請求は可能でしょうか。
2. 相手女性の氏名や住所が不明な現時点で、どのような手続き・調査が必要になりますか。
3. 請求が可能な場合、慰謝料の相場または妥当と考えられる金額の目安を教えてください。

夫・不貞相手女性ともに、既にマッチングアプリを退会しており連絡手段はLINEだけです。また双方ともに、本名を含めLINE以外の個人情報は知らないそうです。

1 慰謝料請求の可否
不貞相手の特定というハードルを越えれば、慰謝料請求は十分可能と考えられます。
不貞行為の存在は、夫の自白と、既に保存済みのLINEのやり取りから十分立証可能かと思われます。
相手方の故意(過失)についても、夫は既婚である旨アプリで明示している上、LINEでも認識が読み取れるとのことなので、立証はしやすい部類かと思います。
あとは、損害(精神的苦痛)の発生について、診断書や通院記録等を収集・保管しておくと良いかと思います。

2 不貞相手の特定方法
特定方法としては、以下のものが考えられます。
① 夫からのさらなる聴取
マッチングアプリのプロフィールURL・スクショ、銀行・送金アプリの履歴(口座名義・ID)、携帯番号、待ち合わせ場所など。
② 車両ナンバーからの照会
弁護士が慰謝料請求事件として受任した場合、運輸支局に対する弁護士会照会によって、車両の所有者を特定することが可能です。
③ 探偵、興信所の利用
探偵の素行・居所調査によって、住所等が特定できることがあります。

3 慰謝料額の相場
不貞慰謝料は、不貞の態様、婚姻期間の長短、離婚の有無、被害者の通院状況等の様々な事情が総合的に考慮されます。
そして、結果として離婚しないとなると、慰謝料額は低額になる傾向はありますが、ご質問者様記載の増額要素(約5年の長期、月1回×約50回、既婚認識あり、通院治療あり)を前提とすると、妥当な慰謝料請求額は100~200万円あたりかと思われます。

相談事項
1. 夫の自白およびLINEトーク履歴のみを証拠とした場合でも、相手女性への慰謝料請求は可能でしょうか。

→本件のように、
・夫が不貞の事実を全面自白している
・不貞の内容・期間・頻度が具体的である
・LINE履歴という客観的な証拠が存在する
という条件が揃っていれば、相手女性への慰謝料請求は十分に法的に可能です。

2. 相手女性の氏名や住所が不明な現時点で、どのような手続き・調査が必要になりますか。

→弁護士法23条の2に基づく弁護士会照会により調査可能です。ナンバープレートから運輸支局(国交省)または「自動車検査登録情報協会(AIRIA)」へ照会によって、所有者・使用者の氏名・住所などが開示される可能性があります。また、旦那様から相手方についての情報をお聞きすることも可能かと思います。

3. 請求が可能な場合、慰謝料の相場または妥当と考えられる金額の目安を教えてください。

→約5年・月1回ペースという長期間・継続的な関係があること、相手女性が既婚であることを認識していたこと、金銭授受を伴うなど、関係の反社会性・悪質性が強いこと、結婚歴が長いこと(22年)も考慮すると、300万円~400万円程度が実務上妥当または十分に請求可能と考えられます。

*ただし、相手女性の経済力によっては、実際の回収可能額が低くなる可能性もあります。

現時点で、相手女性に関する夫が把握している情報はLINE上のやり取りのみであり、本名・住所・電話番号等の個人情報は不明です。夫・相手女性ともに、既にマッチングアプリは退会しています。
夫は不貞の事実を全面的に認めて反省しており、今後相手女性との関係を完全に断つ旨を表明していますが、念のため、まだ相手女性とはLINEは繋がったままにしてあります。
相手女性はまだ私が不貞を把握していることを認識していません。

1. 相手女性の住所を特定するために、夫が相手女性に会う約束を取り付け、その際に探偵に尾行・撮影をさせて住所を割り出す方法は、違法とされる可能性があるでしょうか。

2. 仮に、相手女性が夫に対して虚偽の申告をしており、実際には相手女性に配偶者がいた場合、相手女性の配偶者が夫に対して慰謝料請求を行う可能性はあるでしょうか。想定される配偶者の不貞請求、過失の有無、立証上のポイント等についてご見解を伺えましたら幸いです。

1 探偵による尾行・撮影による住所特定の可否
探偵による住所特定は、調査方法が適法な範囲にとどまる限り違法ではありません。
すなわち、公道等の公共の場所からの尾行・外観撮影は原則適法であり、住居敷地内への侵入、屋内・窓越しの撮影、盗聴・盗撮等の私的領域への侵害行為は違法の可能性があります。したがって、夫が相手女性と会う約束を取り付け、探偵が公道上から尾行・撮影して住所を割り出す方法は、手段が適法であれば問題ありません。

2 相手女性が既婚者であった場合の夫への慰謝料請求の可能性
相手女性が既婚である場合、その配偶者は、夫と相手女性の双方に対して不貞行為に基づく慰謝料請求を行うことが可能です(民法709条)。
ただし、夫に以下の事情があれば、過失の有無や慰謝料額に影響します。

・相手女性が独身であると虚偽申告していた
・夫が既婚と知らなかったことに合理的理由がある

もっとも、相手女性が既婚であることを容易に確認できたにもかかわらず漫然と関係を続けた場合は、夫の過失が認められ、慰謝料(50~150万円程度?)が発生し得ます。

1 探偵による尾行・撮影の適法性
他の先生がおっしゃるとおり、調査方法が適法である限り、適法です。
ちなみに、探偵の調査費用は高額になる傾向がある一方、望んだ結果が得られないこともままあります。
そのため、確実に住所を特定できる状況を作った上で、その日に限って調査を依頼するのがよいでしょう(探偵さんごとのスタイルはありますが)。
なお、信頼できる探偵の判断基準としては、一般的に以下のことが挙げられています。
① 探偵業の届出を行っているか(必須)
② HP等に会社・事務所の所在地が公開されているか
③ 探偵業者の協会・団体に加入しているか
③ 会社・事務所での面談を回避しようとしていないか、相談内容をしっかり聞いてくれるか
④ 契約内容がはっきりしているか、料金が過度に安価・高価でないか

2 夫への慰謝料請求の可能性
不貞相手が既婚者であった場合、その夫から相談者様の夫への損害賠償請求自体は可能です。
そして、本件で損害賠償が認められるか否かは、相談者様の夫の故意・過失(不貞相手が既婚であることについて認識していたか、注意していれば認識できる状況にあった)の有無に左右されます。アプリやLINEにおいて不貞相手が既婚であることを窺わせる内容があったり、指輪を付けている等の事情があった場合には、
相談者様の夫に過失が認められる可能性があります。