有責配偶者で、妻や子に障害がある場合の離婚請求について
有責配偶者からの離婚請求は原則認められないとよく聞きます。
ただ別居期間も長期化し、子がある程度大きくなり、離婚することで非有責側が苛酷な状況にならなければ、離婚が認められることもあると認識しています。
判例をいくつか見た上で疑問なのですが、
妻(非有責)や子供が障害や、病気を持っている場合、有責配偶者からの離婚請求が棄却されている判例が何件かありました。
こうなった場合、たとえ子が成人していて別居が15年以上など長期化していても、離婚が認められないのでしょうか?そうなると有責配偶者が離婚できるのはいつ?一生難しいですか?
別居時は健常でも、別居している間に病気や障害を患ったりすることもあると思うのですが、これも同様に離婚がほぼ一生できないくらい、難しくなるのでしょうか?
未成熟子がいる場合でも有責配偶者からの離婚請求が認められた判例として、最高裁平成6年2月8日判決があります。
「有責配偶者からされた離婚請求で、その間に未成熟の子がいる場合でも、ただその一事をもって右請求を排斥すべきものではなく、前記の事情を総合的に考慮して右請求が信義誠実の原則に反するとはいえないときには、右請求を認容することができると解するのが相当である。
これを本件についてみるに、上告人と被告人との婚姻関係は既に全く破綻しており、民法770条1項5号所定の事由があるといわざるを得ず、かつ、また被上告人が有責配偶者であることは明らかであるが、上告人が被上告人と別居してから既に13年11月余が経過し、双方の年齢や同居期間を考慮すると相当の長期間に及んでおり、被上告人の新たな生活関係の形成及び上告人の現在の行動等からは、もはや婚姻関係の回復を期待することは困難であるといわざるを得ず、それらのことからすると、婚姻関係を破綻せしめるに至った被上告人の責任及びこれによって上告人が被った前記婚姻後の諸事情を考慮しても、なお、今日においては、もはや、上告人の婚姻継続の意思及び離婚による上告人の精神的・社会的状態を殊更に重視して、被上告人の離婚請求を排斥するのは相当でない。
「そして、現在では、上告人と被上告人間の4人の子のうち3人は成人して独立しており、残る三男Dは親の扶養を受ける高校2年生であって未成熟の子というべきであるが、同人は3歳の幼少時から一貫して上告人の監護の下で育てられてまもなく高校を卒業する年齢に達しており、被上告人は上告人に毎月15万円の送金をしてきた実績に照らしてDの養育にも無関心であったものではなく、被上告人の上告人に対する離婚に伴う経済的給付もその実現を期待できるものとみられることからすると、未成熟子であるDの存在が本件請求の妨げになるということもできない。」
→ 未成熟子とは、未成年とイコールではなく、成人していても心身に障がいがある等の事情で自立した生活を営むに至っていないような場合には、未成熟子にあたり得ます。
ただし、そのような場合でも、上記判例のように、相当長期の別居期間、未成熟子の年齢や生活状況、有責配偶者側による子の養育への関与(相当額の養育費の継続的な支払等)等の事情によっては、離婚請求が認められる余地はあるように思われます。
妻や子に障害がある場合であってもその一事をもって有責配偶者からの離婚が絶対に認められないということはありません。
長期間の別居もそうですし、金銭的な援助等や妻子の生活状況等の諸般の事情次第で有責配偶者からの離婚が認められる可能性はあります。
一度弁護士に相談をされると良いでしょう。