母親が滞在中の介護施設で、仲が悪い兄弟からの圧力で、母親との面会を拒否された場合の対処法は?
母親が87歳でショートステイという宿泊可能な介護施設を利用しております。軽い認知症ですが普通の会話はできます。私は長男で姉と二人兄弟ですが、姉と仲が悪いです。母親とは毎週1回程度、私が施設に通い面会していました。先月のとある日に母から連絡があり、翌日に施設に来てくれと言われました。翌日に施設に行って、いつもと同じように面会をしようとしたら受付の職員に「姉から姉以外の人間と面会させないよう連絡があったので、長男でも面会出来ません。姉はキーパーソンなので姉の言うことは絶対です。」と言われて施設の中に入れませんでした。理由も詳しく教えてくれませんでした。その日に母親から連絡があり、「面会に来た息子に合わせてくれと言っても施設の職員がそれは出来ないと相手にしてもらえなかった」と言っていました。その後にその施設の責任者と何度か交渉しましたが、「姉はキーパーソンなので姉の言うことは絶対です。」の一点張りで母親とは面会出来ません。実の母親に面会出来ないのは精神的に大きな負担で仕事に集中できません。解決策を弁護士の先生に教えていただきたいです。宜しくお願い致します。
近時、いわゆる高齢の親の囲い込みが社会問題化しており、報道もなされています。このような問題の解決方法として参考になる裁判例があるのでご紹介いたします。
横浜地裁平成30年7月20日決定 判時2396号30頁
【事案の概要】
本件は、債権者が、債権者及び債務者の父であるA(以下「A」という。)及び同母であるB(以下「B」といい、「A」及び「B」を合わせて「両親」という。)が入居している老人ホーム及び債務者が債権者と両親との面会を妨害していると主張し、人格権を被保全権利として、債務者及び同老人ホームを経営する会社は債権者が両親と面会することを妨害してはならないとの仮処分命令を申し立てたところ、横浜地方裁判所が、債務者及び前記会社のため各金2万円の担保を立てさせて認容する旨の決定をしたことから、債務者がこれを不服として保全異議を申し立てた事案である。
【被保全権利の存否について】
債権者は、両親の子であるところ、前記認定事実のとおり、両親はいずれも高齢で要介護状態にあり、アルツハイマー型認知症を患っていることからすると、子が両親の状況を確認し、必要な扶養をするために、面会交流を希望することは当然であって、それが両親の意思に明確に反し両親の平穏な生活を侵害するなど、両親の権利を不当に侵害するものでない限り、債権者は両親に面会をする権利を有するものといえる。
【保全の必要性について】
前記認定事実によると、両親が現在入居している施設に入居するに当たり債務者が関与していること、債務者が債権者に両親に入居している施設名を明らかにしないための措置をとったこと、債権者が両親との面会に関連して、家庭裁判所に親族間の紛争調整調停を申し立てる方法をとってもなお、債務者は家庭裁判所調査官に対しても両親の所在を明らかにせず、調停への出頭を拒否したこと、本件審尋期日においても、債務者は、債権者と両親が面会することについて協力しない旨の意思を示したことが認められる。
これらの事情を総合すると、債務者の意向が両親の入居している施設等の行為に影響し、債権者が現在両親に面会できない状態にあるものといえる。また、債務者の従前からの態度を考慮すると、上記の状況が改善する可能性は乏しいものといえ、今後も、債務者の妨害行為により債権者の面会交流する権利が侵害されるおそれがあるものといえる。