家族経営の飲食店で解雇、未払い賃金は請求可能か?

僕は家族経営の飲食店を突然クビになりました。
7月24日の営業前にオーナーである母と経営方針で揉めて、その日の夜中にいきなりLINEでクビを告げられました。
2月1日から7月24日までのお給料はまだ支払われていません。
週5日営業で1日平均10時間ほど休みなく勤務していて、休店日にも仕込みなどで駆り出されていました。
その間の生活費は貯金を切り崩したり、消費者金融で借入をして賄っておりました。
現在50万円ほど消費者金融に借金があります。
家族経営なので、シフト表やタイムカードがなく証明する物がないです。
クビを告げられたLINEは残してあります。
労働基準監督署には相談したのですが、『家族経営である事』、『証拠が少ない事』などの点から旗色が悪いと言われました。

そこで、今回みなさんにお聞きしたい事は
・未払いの賃金を請求できるのか
・遅延損害金を請求できるのか
・解雇予告手当を請求できるのか
・不当解雇による慰謝料、損害賠償を請求できるのか
・裁判をした場合、勝ち目があるのか

母とはもう家族だと思っていないので、自分を守る為に戦いたいです。

どうかお力を貸してください。

ご相談の全てに共通する前提として、ご自身が働いて事業主が給料を支払うという契約関係が存在することを、相手が認めるか、ご自身が何らかの手段で証明する必要があります。正式な雇用契約書がなくても、業務に関連するLINEや給与明細書など、雇用契約があることを前提とした書類などから推認できる場合があります。これらがあるかどうかをご確認ください。
それに加えて、自身が実際に働いたことまで事実として認められれば、未払いの賃金が請求できます。
遅延損害金は、給料日と未払いの額が特定できれば請求可能です。

解雇予告手当を請求する根拠である労働基準法と、不当解雇を争う根拠である労働契約法は、“同居”の親族“のみ”を使用する事業には適用されません。逆をいえば、この条件に該当しなければ、これらの法律の適用を受けられます。
解雇を告げられたこと自体の証拠はあるようですので、ご自身とお母様の住所が違う場合や、家族以外の従業員がいるのであれば、解雇予告手当の請求は可能と思われます。
また、合理的な理由がない解雇は無効となるものと労働契約法で定められていますので、よほど自身にとってまずい事情がない限り、解雇を争う余地はあると考えられます。その場合、通常は、雇用契約が続いているとの前提のもと、解雇から解決までの給料(いわゆる「バックペイ」)という形式で請求するのが通常です。

裁判で勝ち目があるかどうかは、証拠の状況次第です。
まず、前提条件として、労働契約を締結したことを証明できる証拠が必要ですので、その手掛かりをかき集めることが重要です。

横山令一さん、迅速でとてもわかりやすい説明をしていただきありがとうございます。

横山さんからいただいた返信の中からまたいくつか回答、質問させてください。

うちのお店は家族経営という事もあり、雇用契約書などはありません。
そもそも経営素人の母がやりだしたお店なのでルールがめちゃくちゃです。
親族ではないアルバイトスタッフも数名いるのですが、履歴書を持って来てもらうなどの面接などはなく、知り合いが手伝っている状況です。
事前の説明などは全くなく、自分が時給いくらなのかすら知らないアルバイトスタッフもいました。

母とは別居しているので住所は別です。

解雇の理由は、
「考え方が違う」
「なんで自分の店なのに自分が楽しく思うように出来ず我慢しないといけないのか」
というものでした。
母は昔から考えるのが苦手で、直感的で「楽しければいい」というとても楽観的な性格です。
お店を始める時に1200万円ほど借入をしてスタートしました。
僕は1日でも早くお店の借金を減らそう、自分の収入を上げようと、どうやったら少しでも売り上げが上がるかなど『お金を稼ぐ』という事に真剣に向き合ってきた事が、『とにかく楽しくやりたい』という母とぶつかる事が多かったです。

今年の2月1日から7月24日までの給料は未払いですが、去年はお給料をもらっているのでその明細はあります。

お店の基準では僕の時給は1500円です。
計算すると、2月1日から7月24日までの未払いの合計は183万円となりました。

そこで質問です。
十分な証拠があるのが大前提だと思いますが、もし証拠を集められた場合、
・この183万円の未払い金全てに遅延損害金がかかりますか?
・月収は平均30万円程ですが、解雇予告手当は1ヶ月分の30万円程請求できますか?
・不当解雇による慰謝料、損害賠償は相場だと給料の半年から1年分とネットで見たのですが、どの程度請求できますか?
・労働基準監督署の助言で未払い金請求の手紙を7月末に出して返信期限を8月8日までとしたのですが、未だに音沙汰なしです。
母からは「裁判でも何でも好きにやってくれ」や、「お店で忙しくてお前の相手なんかしてる暇なんてない」と喧嘩腰で全く話し合いをしてもらえません。

どうか、お力を貸してください。

ご質問に回答いたします。
未払いの賃金に対する遅延損害金は、給料日を過ぎた全ての金額にかかります。
解雇予告手当の算定根拠は、解雇される前3ヶ月間に支払われた賃金の平均額です。この「支払われた」には未払いも含まれます。
不当解雇の解決金などを請求をする場合、通常は、解雇から解決までの未払いの賃金を請求する、という書き方をします。最終的な解決金の相場は事案によって左右されるので、お答えは差し控えさせていただきます。
相手が支払いの請求を無視し話し合いの余地もない場合、訴訟提起をお勧めします。提訴の相手が訴訟を無視した場合は、訴状に書かれた事実を認めたとみなされることがあります。
あとはその実益があるかどうかが問題でしょう。勝訴したとしても相手に資金がなければ回収は困難ですので。

横山さん、いつもありがとうございます。

「不当解雇の解決金などを請求をする場合、通常は、解雇から解決までの未払いの賃金を請求する」
とのことですが、これは解雇から解決までの期間が長引けば長引く程請求できる金額が増えるという解釈で間違いないでしょうか。

1日でも早く解決したいという気持ちはありますが、取れるならなるべくたくさん取りたいという気持ちがないわけではないですし、僕自身は未払い賃金請求の手紙を出したり解決する為に動いているのですが、相手側に応じる姿勢がなく長引いている現状ですので、こちらが戦略として長引かせようとしている訳ではない事は明白だと思います。

極論ですが、相手側が話し合いに応じない事を利用して、例えば解決まで5年間かかったとしたら、未払い賃金と解雇予告手当と遅延損害金に加えて5年分の解決金を請求できるという解釈で間違いないですか?

上限や時効、請求する為の条件などはありますか?

ネットや労基の方からの情報ですと、その間は収入がない事が条件になる場合が多いと言われたのですが、もし裁判になったり解決に時間がかかりそうな場合は解決するまでは転職など収入がない方がいいのでしょうか。

お店に勤めている時から元々別の仕事も掛け持ちしていて、今はその仕事だけは継続しています。
社員ではなく、ゴルフのコーチを業務委託という形で請け負っていて、月30万円程収入がありますが、この仕事はお店をやっている頃からやっている仕事なので大丈夫ですと労基の方からは言われましたが実際のところはどうでしょうか。

お店に勤めている頃は生活費を借金してやりたい事や欲しいものも全て我慢してきました。
歯列矯正の為に貯めていたお金も無くなってしまい、抜歯だけ済んでいるのですがお金がなく矯正ができないまま1年以上経ってしまっています。
裁判になった時に勝つための証拠や条件が揃えば、徹底的に最大限にお金を取って普通の生活を取り戻したいです。

無料なのに何度もお答えいただき本当に感謝しています。
ですが、このままずっと無料でお世話になるつもりはもちろんありません。
金銭的、精神的に余裕が出てきたら必ずお世話になった分、お返しさせていただきたいと考えています。

どうかお力添えをお願いします。

追記です。

お店は古民家の建物を前のオーナーから1000万円で買い取って営業しております。

前のお店はとても繁盛店でお客様もついている状態でスタートしたので「もしお店閉めるなら私に売ってね」と言ってくれている人が何名かいるので、お金を回収できない事はないと思います。

手段は選びません。
自分を守る為に徹底的に戦いたいです。

よろしくお願いします。

理論上は、解決までの期間が長引くほど、未払いの賃金として相手に支払いが命じられる金額は多くなります。
ただし、途中で他社に正社員として再就職するなど、復職の可能性が消えたと判断されると、そこまでで未払いの賃金の計算が打ち切られてしまうことがあります。
また、生計を立てるためにアルバイトなどで代わりの収入を得ることまでは否定されませんが、その場合、一定割合を上限に代わりに得た収入が未払いの賃金の金額から差し引かれることがあります。
そのため、必ずしも期間に比例するとは限らないことにご注意ください。
現在の労働基準法の上では、賃金の請求権の消滅時効は3年間で、給料日ごとに時効の起算が始まります。そのため、遅くとも、最初の未払い賃金の給料日から3年以内に訴訟を提起する必要があります。

横山さん、いつもありがとうございます。
毎回迅速かつ、とてもわかりやすいご説明で感謝しております。

本音は別としても、「解雇が不服である」「復職したい」という弱者的なスタンスでいないとこちらに都合が悪かったり、争う場合に旗色が悪くなるという解釈で間違いないでしょうか。

LINEでクビを伝えられた時に、初めは「もう一緒にはやれない」と来たのですが、これがもしかしたら曖昧な表現で「解雇する」という事にならない可能性があると思ったので、「それはクビという事?」と聞き直して改めて向こうから「クビ」と言わせてその文章を残してあります。

これが正しい立ち回りかはわかりませんが、裁判をする前に今のうちからこちらに有利になる材料を集める必要があると思うのですが、やるべき事はありますか?

母は賢くないですし、何も考えていないのでこちらが戦略的に仕掛ければ確実にボロが出ると思います。

横山弁護士から考えてこの裁判に勝機はあると思いますか?
あるのであれば、現実的にきちんとお金をお支払いしてお力を貸していただきたいです。