共同ビル老朽化による建て替えに伴う立ち退き要求されている件について
私(40代主婦)の実家の話なのですが、50年ほど前に、実家を含めて4件の家の土地の上に、共同ビルを建てました
各自1階で個人商店を経営し、上を住居としています
50年の間に、ウチ一軒が土地を売却し、現在その場所はAを営んでいます
共同ビルの老朽化に伴い、Aが建て替えたいと3件に言ってきて、さらにそのまま他の3件の土地も買い取りたいと言ってきました
更地にしてマンションを建てたいとのことです
建て替え後はマンション1部屋を渡すとのことです
私としてはビルの老朽化に伴う建て替えは理解できますが、その後の立ち退きは納得できません
Aになんの権利があって他3件に立ち退きを要求できるのでしょうか(Aの土地が最も所有割合が大きいです)
母含め他3件はすでに80歳前後と高齢化しており、状況を理解する力は低下してきています
土地はJR駅前徒歩5分と立地はよく、なかなか売りに出ない場所でもあります
Aは売り上げが落ちてきた(事実)から廃業したい、ビルの権利を売りに出そうにも老朽化しているため売りに出せない(想像)かもしれません
相談したいのは
・老朽化しているためビルの建て替えは致し方ないがその後は土地を各々分割したい(23坪分の土地の権利は母は持っているようです)
・ウチの権利分の土地は、そのまま新たに店舗兼住居を建て直したい、可能かどうか
・Aは他3件の土地全て買い取りたいといっているがこちらは拒否できるのか
上記相談です、よろしくお願いします
本件においては、当初、土地は4者による単独所有であり、他方、建物は4者の共有状態であったことを前提とします。
また、土地の一部がAに売却されたことにより、現在、土地は4者およびAの共有状態となっていることを前提とします。
ご質問からは、Aが土地だけでなく、建物の共有持分まで取得したか否かが明らかではありませんが、仮にAが建物の共有持分を取得していた場合、Aは共有者として、他の共有者に対し、民法第258条に基づく共有物分割請求を行うことが可能です。
この場合、理論上は、Aが他の4者に対して持分割合に応じた代償金を支払うことによって、建物を単独取得することが可能です。
ただし、分割の方法は、持分割合だけでなく、従前の利用状況や各共有者の事情が総合的に考慮されたうえ、裁判所の裁量に基づき決定されるため、Aが多くの持分を有していたとしても、当然に他の共有者の権利を排除することはできません。
一方、Aが建物の共有持分を取得していない場合には、建物に関しては何ら法的な権利を有しておらず、分割請求を行うこともできません。当然、Aが一方的に建物を解体することも認められません。
次に、土地については、各々の単独所有であることから、当然、共有物分割請求の制度が適用されることはありません。
Aが他の土地を取得するためには、あくまでも各所有者との合意が必要であり、一方的にこれを取得することはできません。
したがって、Aによる土地買収の提案については、当然に拒否することが可能です。
最後に、建替後に各土地を分割して利用し、店舗兼住居を再建築することについては、建物の取壊しに関する建物所有者全員の合意が前提となります。
建物の取壊しについて全員の合意が得られ、他に特別の合意がないのであれば、各人が自己の土地を自由に利用することができるため、母の所有する土地に新たに店舗兼住居を建築することが可能です。
ただし、各々が独立して土地を利用することになりますので、建築に際しては、建築基準法上の制限に十分留意する必要があります。
まず結論として、A氏からの土地買収および立ち退きの要求に法的な強制力はなく、明確に拒否することが可能です。
【土地について】
土地はお母様を含む各所有者様の固有の財産(単独所有)であり、売却に応じる義務は一切ありません。
A氏の土地面積が大きいという事実は、この結論に何ら影響を及ぼしません。
【建物について】
A氏が建物の共有持分を持つ場合、法的に共有状態の解消を求める「共有物分割請求」を提起される可能性があります。
しかし、その場合でもA氏の希望通り、他の所有者の権利を取り上げて立ち退きを強制できるとは限りません。
裁判所は、お母様方が長年そこで居住・営業されてきた生活実態を極めて重く考慮しますので、A氏の請求が認められない可能性も十分にあります。
お母様がご自身の土地に店舗兼住居を建て直すことは、現在の共同ビルを所有者全員の合意に基づき解体することができれば可能です。解体後は、ご自身の土地を建築基準法の範囲内で自由に利用できます。
つきましては、他の所有者様方と意思統一を図り、A氏には安易に回答せず、専門家である弁護士に直接相談しながら慎重に対応されることを強く推奨いたします。