物損交通事故損傷原因の因果関係について

勤務先の管理物件であるフェンスに車をぶつけられました。
 運転者の任意保険会社から連絡を受けたのですが、「ドラレコ画像で確認したところ、もともと(当て逃げで)損傷していた。」との見解で保証は行わないという主張をしてきました。
 相手方の調査を請け負った担当者と会い、確かにもともとフェンスの網部分は傷んでいたことは確認し、同時に端の支柱のカバー部分の損傷は今回の衝突により生じたことも明確に判断できましたが、支柱の基礎部分の割れについては今回どの程度の影響があったのか、ドラレコ画像だけでは判断しかねる状態でした。
 そこで網部分をこちらが用意し、カバー部分と支柱基礎の工事を保険対応してもらうよう提案したのですが、「カバーは用意するが、支柱については損傷との因果関係を客観的に証明しない限り応じない。」という返答でした。
 過失とは言えこちらは一方的な被害者であり、補償不要と主張するのであれば、その影響の線引きについて証明すべきは被害側ではなく加害側が立証するのが道理だと思うのですが、考え方や類似の事案についてご教示いただけたら幸いです。

ネクスパート法律事務所の弁護士の北條です。

質問者様がお考えのように、「補償の範囲を限定したいのであれば、その理由を主張する側(加害者・保険会社側)が証明するのが道理だ」という感覚は、法的な考え方に近いものです。
損害賠償の交渉や裁判では、原則として権利や事実を主張する側がその根拠を証明する責任(立証責任)を負います。今回のケースに当てはめてみますと、
1. 質問者様側は、「相手の事故によってフェンスが壊れ、修理が必要になった」という損害の発生を主張します。
2. これに対し保険会社は、「その損害の一部(支柱基礎の割れ)は、今回の事故とは無関係の、もともとあった損傷(既損傷)だ」と主張して、賠償責任の範囲を限定しようとしています。

この場合、「支柱基礎の割れが今回の事故によるものではない」という事実を証明する責任は、本来、それを主張している保険会社側にあると考えるのが筋です。
保険会社が「客観的に証明しない限り応じない」と被害者である質問者様に証明を求めるのは、立証責任を転嫁しようとする交渉上の戦術である可能性があります。
しかし、現実の交渉では、保険会社が頑なな態度を崩さないことも少なくありません。その場合、お話合いを前に進めるために、質問者様側からも客観的な資料を提示することが有効な手段となります。
具体的な対応としては、フェンスの修理を依頼する専門業者(工事業者など)に現場を確認してもらい、「今回の衝突の衝撃で、支柱基礎にこのようなひび割れが生じることは十分に考えられる」といった内容の「意見書」や、損傷の原因についての所見を記載した「見積書」を作成してもらうことです。
この専門家の見解を客観的な資料として保険会社に提出し、改めて交渉することで、相手方の態度が軟化し、支柱基礎部分の修理についても補償の対象として認められる可能性が高まります。

事故に「よって」「損害」が発生したこと(あるいはその損害額)を証明する責任があるのは、被害者側です。
加害者は、疑問を呈するだけで足ります。
もともと何らかの傷があったことについて、双方に争いがないのであれば、それを前提にそこから事故によってどれだけの傷が増えたか、その損害(修理費)はどの程度かをきちんと証明する必要があります。

北條様- 詳しくご回答いただきありがとうございました。アドバイスいた
    だいた内容を可能な限り実践してみたいと思います。
匿名A様-視点の違う見解をいただき、大変参考になりました。
     心の隅で朧気に懸念していた(考え方)事を的確に指摘された気
    がします。
     子供じみた発想でお恥ずかしいですが、発生した損害(額)とし
    てが支柱全体の修復額を請求し、そこから因果が存在しない立証を
    相手に求めるという発想は成り立ちませんでしょうか。      
    

    
   

子供じみた発想でお恥ずかしいですが、発生した損害(額)としてが支柱全体の修復額を請求し、そこから因果が存在しない立証を相手に求めるという発想は成り立ちませんでしょうか。

相手には立証する責任はありませんので、支払わないと言われておしまいとなるだけです。