中絶とその精神的苦痛に対する慰謝料請求
婚約を約束していた彼の子を妊娠しました。おろしたくない意志を伝え、結婚して産もうという話になりました。しかしその2日後には彼から、婚約は出来ない、経済面から産むのもできないおろしてくれと言われました。そこから話し合いを重ねましたが、産婦人科にかかる朝の日にお腹を1発殴られ、おろせと怒鳴られました(証拠は無いのですが…)。産んだとしても子の認知もしないし、養育費も払わないと言われました。産みたい意思は伝えましたが、こういった状況によりおろさぜるを得ませんでした。その後、1人になりたいから連絡もしたくないと言われております。
初診と中絶費用に関しましては彼が全額払っております。
初めての妊娠、中絶、婚約破棄による精神的苦痛で仕事もままならない状況です。
おろさざるを得ない状況、精神的苦痛による慰謝料請求は可能でしょうか?
また、精神的苦痛という精神科や心療内科を受診し、証拠は必要でしょうか?
よろしくお願いいたします。
妊娠•中絶に関する裁判例の動向を分析すると、昭和→平成→令和と時代が変わるにつれ、合意のある妊娠•中絶の場合には男性側は損害賠償責任を負わないという女性側の自己責任的な考えから、男女の性の差に目を向けた考え(妊娠•中絶の女性側の負担•不利益を男性側も分担•緩和する行動に出なければならず、それが不十分な場合には男性側も損害賠償責任を負うという発想)や女性の性や子に関する自己決定権の尊重の考え(妊娠のリスクがあるような性交渉をするか否か、子を儲けるか否か、子を産むか否か等の自由で自律的な決定が歪められていないかという発想)にシフトして来ているように思われます。
妊娠や中絶を強要•強制したと扱われるようなケースでは、男性側に100万円を超える損害賠償義務を課す裁判例も見られます。
他方、妊娠や中絶を強要•強制したとはいないとされるものの、妊娠•中絶から生じる負担や不利益の分担が不十分、不利益の緩和に向けた行動が不十分、中絶の前後のコミュニケーション不足等を理由に男性側に損害賠償義務を負わせる裁判例が近時増えて来ているように思われます。
ご投稿内容からしますと、あなたのご事案でも、これらの裁判例のように、妊娠•中絶に関する慰謝料等の損害賠償請求が認めらる可能性があるかもしれません(裁判例の中には、精神科や心療内科の受診等の事情や証拠等が見られないケースでも慰謝料を認めているものが見受けられますが、妊娠中絶という体験に起因する精神科や心療内科の受診等の事情は精神的苦痛の有無•程度を立証するための有力な証拠になり得ます)。
いずれにしても、お一人で悩みを抱え込まれずに、お住まいの地域等の弁護士に直接相談してみることも検討なさってみてください。