海外駐在中の給料不利益変更
現在、在日本企業から海外子会社に出向中ですが、日本法人の吸収合併の際に”待遇は特に変わらない”という書面をもらったにも関わらず、翌年度の給料改定の際、吸収された先の会社に合わせる形で手当や給料設計が変更になり、年収が100万円程度減少しました。
一番理不尽だと感じている点は、”日本での手取り(所得税や住民税が引かれた額での計算)”をベースに給料が設計されているにも関わらず、日本で受けられる子供の医療費や保育費は海外で全額負担となっている点です。
子どものワクチン接種などの医療費が全額自己負担になってしまうこと、日本人向け保育園の費用が月に15万円程度発生してしまうことなど、海外特有の支出が発生してしまっています。
給料の変更には合意をしていないため、一方的な不利益変更として会社に未払金を請求したいと考えています。法律的にそのような対応は可能でしょうか?
会社に労働組合がなく、窓口の人事部門に相談しても数ヶ月単位で放置、または返信をもらえない状況が続いているため、ご相談したいと考えております。
元の勤務先である日本企業が、別の日本企業に吸収合併され、その後、海外出向となったという事実関係を前提とします。
まず、吸収合併がなされた場合でも、労働契約は包括的に承継されるため、原則として、従前の給与やその他の待遇は維持されます。
もっとも、合理性ある就業規則の変更がなされた場合には、労働条件の変更が有効とされます。
その場合でも、就業規則とは異なる個別合意がある場合や、就業規則の変更により労働者に著しい不利益が及ぶ場合には、その変更は無効とされる可能性があります。
本件では、吸収合併の際に「待遇は特に変わらない」旨の書面が交付されていることから、待遇を引き下げない旨の個別合意があったと認められる余地があります。
さらに、年収ベースで100万円もの大幅な減額がなされたことを踏まえると、不利益の程度が著しいとして、就業規則の変更が無効とされる可能性があります。
次に、海外出向によって海外特有の支出が生じている点については、出向命令の適法性が問題となります。
出向命令は、業務上の必要性があれば有効ですが、労働者に重大な不利益が生じる場合には、裁量権の濫用として無効とされます。
特に、海外出向により医療費や保育費など生活コストが著しく増加しているにもかかわらず、海外手当等の適切な補填がなされていない場合には、出向命令の合理性が疑問視されます。
したがって、出向命令が無効であることを主張し、従前の地位や待遇への復帰を求めるとともに、減額分を請求することが考えられます。
もっとも、本件は吸収合併と海外出向という複数の要素が絡む事案ですので、適切な方針を決定するためには、「待遇は特に変わらない」旨の書面、就業規則および賃金規定など、関連する文書を精査して詳細な検討をすることが必要です。
したがって、関連する資料をご準備のうえ、弁護士に相談されることを強く推奨いたします。
ご回答ありがとうございます。
こちらの説明不足があったため、一点前提条件の訂正がございます。
>元の勤務先である日本企業が、別の日本企業に吸収合併され、その後、海外出向となったという事実関係を前提とします。
→元々駐在している状況で、吸収合併が行われ、給料が減額されました。
この場合でも同じく給料未払いとして、法的に主張は可能でしょうか?
海外出向中に合併がなされたという事実関係を前提としても、お答えした内容と同様です。
減額分の請求が可能か否かを判断するためには、関連する資料の確認が必須ですので、正式に法律相談をされる必要があるかと思います。