経歴詐称を理由にした幹部社員の解雇は可能か?
私はベンチャー企業人事部の立場です。
社長の指示で
解雇をしたい社員がいます。
年収1500万円の
中途採用の幹部の方ですが、
社長との折り合いが悪くなり、
社長指示で解雇にできないのか?と。
そこで、
解雇理由を探していたところ、
その中途採用者の履歴書の経歴詐称が
見つかり
採用の決め手となった
有名自動車企業の在籍期間を
5年も長く書いていました。
これを理由に解雇は出来ますでしょうか?
今回
その経歴詐称を理由に解雇にできないのかと考えております。
(前に、その中途採用者が、
"実は履歴書の経歴をまとめて書いてしまって"
という話を飲み会でしたことがあったそうで、今回、それを理由にできないのかと検討です。)
解雇できる場合があると思われます。
ですが、いくつかご質問者様に確認なのですが
①経歴に関する資料提出は何があるのか(履歴書、前職の在籍期間のわかる資料など)
②就業規則の懲戒解雇事由として、経歴詐称が記載されているか
③雇入れにおいて重視した度合いはどうか(形式的に経歴なのか、経歴を含めた能力なのか)
④発覚したのはいつか
⑤発覚後に、どのような対応をとったか(こちら側が有耶無耶にするような態度ではなかったか)
⑥ご質問者様の会社での在籍期間はどの程度なのか
⑦通常の社員との経歴を考慮した年収差部分はどの程度なのか
については気になるところです。
解雇については、様々な制限があるので十分に調査する必要があります。
なお、解雇となると、もしも無効になった場合にはバックペイといって争っている期間中の給料相当額を支払う必要が出るリスクがあります。
そのため、相手方にまずヒアリングの上で弁明の機会を付与しつつ、解決金を若干支払うなどして勧奨退職の形をとったほうが、こちらのリスクも減らすことができますし、相手にとっても懲戒解雇では退職金がもらえない可能性(就業規則にもよる)があるので、利があります。
早期解決を目指すのであれば、そのような対応もありうるところです。
ちなみに、経歴詐称は場合によっては私文書文書偽造罪に当たる場合もあり得ます。
いずれにせよ、早い段階で弁護士との面談の上、ご依頼を検討されることをお勧めいたします。
ご参考になれば幸いです。
ご相談の件について、経歴詐称を理由に解雇できるかどうかは、法的には
1)「詐称の内容の重大性」
2「それが採用に与えた影響の大きさ」
が重要な判断基準になります。
結論から言えば、在籍期間を5年長く偽ったことが、採用の可否を大きく左右するような重要な事項であれば、解雇が認められる可能性はありますが、慎重な手続きと証拠の整備が必要です。
労働契約法16条では、解雇には「客観的合理的理由」と「社会通念上の相当性」が必要とされており、履歴書の記載に虚偽があるからといって、必ずしも解雇が有効になるとは限りません。
特に問題となるのは、
1)故意に虚偽を記載したことが明らかで、
2)その記載が採用決定に直接的に影響を与えた
という2点です。
今回のように、有名企業での在籍期間を5年水増ししていた場合、それが「幹部候補としての豊富な経験」や「信頼性」に関する評価の根拠であり、もし真実を知っていれば採用しなかったと合理的に言えるならば、重大な詐称とされ得ます。その場合、懲戒解雇や普通解雇が可能とされる可能性はあります。
ただし、本人が「まとめて書いてしまった」などと説明し、悪意がなかったと主張しているような場合や、採用時に会社側が職歴の裏付け確認を怠っていた場合には、解雇が無効と判断されるリスクがあります。
また、在職中にすでに虚偽を知っていたが放置していた場合、会社が追認したとみなされ、解雇理由として弱くなります。
さらに、懲戒解雇とする場合は、就業規則に「経歴詐称」が明記されているかどうかが極めて重要です。また、本人への事前の弁明機会を設け、その記録を残すなど、手続的な正当性も厳しく問われます。
したがって、まずは経歴詐称の証拠を客観的に収集し、それが採用決定にどれほど影響したのかを社内で検証した上で、懲戒ではなく普通解雇や退職勧奨による円満解決も視野に入れた判断が現実的です。解雇が法的に無効とされれば、給与の支払義務や損害賠償の問題も生じるため、労務専門の弁護士と連携しながら進めることを強くお勧めします。