中絶費用の支払いに関する損害賠償

今年付き合ってた彼女が妊娠をしてしまい、相手から中絶しようと思ってると言われ自分も同意して中絶手術をしました。
中絶手術してから後日話し合いを行い費用は折半する事になりました。お金に余裕がなかったので分割で渡して行く事になりその次の月に一部を渡して次の月には会うタイミングがなく渡せてはいませんでした。
彼女からの連絡が1週間以上途絶えたのでもう連絡取るつもりや会うつもりもなくお金も返さなくてもいいから相手が音信不通になったと認識して自分も相手との連絡先を削除してしまいました。
それからしばらくして彼女から弁護士を通して損害賠償と中絶費用を請求する書面が届きました。
書面には彼女に望まない妊娠をさせ費用負担を条件に堕胎させ事後的に費用負担に関する合意を履行せず音信不通になり相手の性的意思決定権を侵害する不法行為にあたるので損害賠償されたみたいです。
自分が連絡を消してしまったのは事実ですが先に連絡を返さなくなったのは相手方であるのと、費用負担を条件に堕胎させたと書かれてますがお金の話しをしたのは中絶手術後でこれは事実ではないなと思っています。
この場合損害賠償請求100万円は妥当なのでしょうか?

妊娠•中絶に関する裁判例の動向を分析すると、昭和→平成→令和と時代が変わるにつれ、合意のある妊娠•中絶の場合には男性側は損害賠償責任を負わないという女性側の自己責任的な考えから、男女の性の差に目を向けた考え(妊娠•中絶の女性側の負担•不利益を男性側も分担•緩和する行動に出なければならず、それが不十分な場合には男性側も損害賠償責任を負うという発想)や女性の性や子に関する自己決定権の尊重の考え(妊娠のリスクがあるような性交渉をするか否か、子を儲けるか否か、子を産むか否か等の自由で自律的な決定が歪められていないかという発想)にシフトして来ているように思われます。
 妊娠や中絶を強要•強制したと扱われるようなケースでは、男性側に100万円を超える損害賠償義務を課す裁判例も見られます。
 他方、妊娠や中絶を強要•強制したとはいないとされるものの、妊娠•中絶から生じる負担や不利益の分担が不十分、不利益の緩和に向けた行動が不十分、中絶の前後こコミュニケーション不足等を理由に男性側に損害賠償義務を負わせる裁判例が近時増えて来ているように思われます(裁判例の中には、30〜60万円程度の認定に留まるケースも見られます)。
 
 相手方の認識するような事実関係なのだとすれば、裁判例の動向からすると、相手方の請求する金額(100万円)程度の賠償が認められる可能性もあるでしょう。
 他方、あなたの認識するような事実関係なのだとすれば、損害賠償が認められるとしても相手方の請求額よりも低額に留まる可能性があるでしょう。
 なお、「彼女からの連絡が1週間以上途絶えたのでもう連絡取るつもりや会うつもりもなくお金も返さなくてもいいから相手が音信不通になったと認識して自分も相手との連絡先を削除した」との判断は時期尚早だったと裁判所に扱われる可能性はあるかもしれません(あなたの主張するように、妊娠•中絶は合意があったものの、妊娠•中絶した女性に対する負担•不利益の分担•緩和が不十分だったと判断されるリスクはあるかもしません)。
 なお、今後の対応としては、①相手方の請求金額からの減額交渉をご自身で試みてみる、②あなたの方でも弁護士に依頼して減額交渉をしてもらう、③相手方の請求には応じず、相手方から訴訟提起等された場合には賠償義務や賠償金額を裁判上争うことが考えられるかと思います。

分かりやすく説明いただきありがとうございます。