横領発覚後、3年後に警察から連絡がありました。

3年前に3000万円の横領で会社から懲戒解雇されました。今現在まで全額分割での返済中でしたが、ここにきて警察から連絡があり背任罪の容疑で調書を取りたいと打診がありました。分割返済を受理されたので示談されたと思っていましたが、刑事事件となるのでしょうか?

示談契約の締結は、刑事事件手続において相談者さんに有利な証拠・事実となり得ますが、示談契約が成立したからといって全ての刑事事件が立件されない訳ではありません。
特に、被害者から被害届や告訴状が提出された場合、示談契約が成立していても、警察が捜査を行う可能性は否定できません。

少なくとも警察が調書を作成したいと連絡してきていることから、立件される可能性を踏まえて対応を検討されることをお勧めします。

詳細についてお知りになりたい場合、最寄りの法律事務所での相談も検討ください。

ネクスパート法律事務所の弁護士の北條です。

「分割返済を受理されたので示談されたと思っていた」という点ですが、これは民事上の損害賠償と、刑事上の責任追及を分けて考える必要があります。

1. 民事上の問題
会社があなた様からの分割返済を受け入れているのは、会社が受けた損害を回復するための「民事上」の合意です。

2. 刑事上の問題
一方で、横領や背任といった行為は、会社に損害を与えると同時に、社会のルールを破る「犯罪」でもあります。この犯罪について捜査し、罰するかどうかを決めるのが「刑事上」の手続きです。

会社が返済の合意をしたからといって、必ずしも「刑事責任を問わない(告訴しない)」と約束したことにはなりません。会社は、民事上の返済を受けつつ、刑事上の処罰を求めるために警察に告訴(被害の申告)をすることが可能です。今回、警察から連絡があったということは、会社が告訴状などを提出し、正式に刑事事件として捜査が始まったものと考えられます。

今後の流れとしては、警察や検察庁で取り調べを受け、最終的に検察官があなた様を起訴するか、不起訴にするかを判断することになります。
被害額が3000万円と高額であるため、何もしなければ起訴され、実刑判決(執行猶予がつかずに刑務所へ行くこと)を受ける可能性も考えられます。

しかし、非常に重要な点があります。それは、これまで3年間にわたり分割返済を続けてきたという事実です。これは、ご自身の行為を深く反省し、被害の回復に努めていることの証明となり、検察官や裁判官が処分を判断する際に、あなた様にとって有利な事情として考慮されます。
今後の対応として最も重要なのは、弁護士を通じて会社側と改めて交渉し、正式な示談を成立させることです。特に「刑事処罰を望まない」という内容を盛り込んだ示談書を交わすことができれば、不起訴処分となる可能性が高まります。

ご自身の将来にとって非常に重要な局面ですので、一人で対応されるのではなく、速やかに弁護士に相談し、今後の取り調べへの対応や会社との示談交渉について、専門的なサポートを受けることをお勧めします。