退職後の損害賠償請求について
退職後にメールの履歴から私的利用として損害賠償請求される可能性があるかご相談です。
転職に必要な履歴書等の添付ファイルを昼休憩に作成し会社のPCから自分のPCにメールで何度か送信しておりました。
送信日時は昼休憩でない時間にもなっています。
会社のパソコンを使用して、転職活動に必要な履歴書を送信する行為は、形式的には就業規則に定める「会社設備の私的利用禁止」などに抵触する可能性があります。
また、それが勤務時間中である場合には、いわゆる職務専念義務に違反する可能性があります。
もっとも、会社が従業員に対して損害賠償請求を行うためには、会社に現実の損害が生じていることが必要です。
通常、履歴書の送信によって会社に現実の損害が生じることはなく、貴方が法的責任を追及される可能性は極めて低いと考えられます。
結論としては、過度な心配は不要といえるでしょう。
ネクスパート法律事務所の弁護士の北條です。
結論から申し上げますと、ご自身の転職活動のために会社のPCから履歴書を数回送信したという事実だけで退職後に会社から損害賠償請求をされ、
それが法的に認められる可能性は低いと考えられます。
会社が元従業員に対して損害賠償を請求するためには、その従業員の行為によって会社に「具体的な損害」が発生したことを会社側が証明しなければなりません。
今回の場合この「具体的な損害」を証明することが難しいと思われます。
考えられる損害としては、主に以下の点が挙げられます。
1. 会社の設備(PCや電気、通信回線)を使用したことによる損害
メールを数回送信するために使った電気代や通信費はごくわずかであり、社会通念上、法的な損害とまでは認められないことがほとんどです。
2. 職務に専念しなかったことによる損害
勤務時間中に私的なメールを送っていたとしても、その行為自体は短時間で終わるものです。その数分の行為によって、会社の業務に具体的な支障が生じ、売上が減少したといった損害を証明することは、会社にとって非常に困難です。
3. 会社の情報を漏洩させたことによる損害
これが最も重要な点ですが、あなたが送信したのはご自身の履歴書であり、会社の機密情報や顧客リストなどを持ち出したわけではありません。そのため、情報漏洩による損害は発生していません。
会社のPCを私的に利用することは、就業規則で禁止されている場合が多く、在職中であれば服務規律違反として懲戒処分の対象となり得ます。
しかし、それは損害賠償の問題とは別の話です。
以上のことから、会社が感情的に請求してくる可能性はゼロではありませんが、実際に裁判を起こしてまで損害賠償を求める可能性は低いでしょう。
もし会社から連絡があり、金銭の支払いを求められたとしても、慌てて応じる必要はありません。
万が一、正式な請求書などが届いた場合は、ご自身で判断せず、弁護士にご相談ください。