証人の氏名を相手方から秘匿したい

職場の同僚に陳述書を書いてもらいます。
訴訟の相手方に同僚の名前が知れると、同僚が逆恨みされてしまうので
陳述書の陳述人氏名を代替氏名Aなどとしたいです。

① 秘匿決定申立書の申立人は、陳述書を依頼する原告氏名と押印でよいですか?
 申立ての趣旨は、「上記事件について、陳述人の氏名を秘匿するとの決定を求める」でよいですか?
 申立の理由は、冒頭を「陳述人の氏名について、被告に実際の氏名をしられると~」でよいですか?

② 秘匿事項届出書面の申立人は、陳述書を依頼する原告氏名と押印でよいですか?
 その下は、以下のとおりでよいですか?
 「陳述人につき、次のとおり秘匿事項等を届け出ます。
 氏名 (陳述人の実際の氏名)
 氏名に代わる代替事項 代替氏名A」

秘匿決定の対象となるのは「申立て等をする者又はその法定代理人」なので,陳述書の作成者が訴訟手続において何らかの申立てをする立場にない以上,秘匿決定は使えないのではないかと思います。なお,陳述書の作成者氏名を伏せる(例えば署名部分をマスキングする)といった方法で提出することは可能ですが、対象者の尋問を経ない限り,その信用性はゼロに近いと考えた方がよいです(一般的に人証に頼った主張立証には大きなハードルがあります)。

① ということは、
 加害者が被害者を包丁で刺した。
 被害者は加害者へ慰謝料と損害賠償を求める民事訴訟を提起した。
 目撃者は被害者から目撃内容についての陳述書を求められたが、
 加害者からの逆恨みを恐れている。
 という時に、
 陳述書の目撃者氏名は、加害者に知られてしまうのですね?

② 陳述書には、
 氏名のほかに、住所も必要ですか?
 住所を知られるのも恐ろしいので、居所として勤務先名でもいいですか?

①事案がよくわかりませんが,殺人未遂(包丁で人を刺すのは殺人未遂なので確実に刑事事件になります)のような事案では,民事訴訟よりも前に警察が動いて犯人を特定していることが多いため,目撃証人の尋問や陳述書が必要になるような事態は,相手が犯人性を争っているとか,当事者が互いに包丁を振り回していたといった特殊な事案ではないでしょうか(怪我の部位や程度なら診断書やカルテで必要十分でしょう)。例えば相手方が犯人性を争っている(「私はやってない」)事案では目撃証人は重要ですが,そうであれば,証人の情報を秘匿することはきわめて難しいといえます。そのような事案では,刑事事件の中で証人保護プログラムを活用して貰い,刑事記録中の証人の調書等を閲覧謄写する形で証拠化する方がベターという気がします。

②住所と氏名で特定するのが通例です。なお,証人尋問が予定されている人の陳述書であれば(尋問申請の際の証拠申出書に住所を記載するため)氏名だけでも十分でしょう。

有難うございます。とてもよく分かりました。
今回はストーカーである被告との民事事件です。
職場にも嫌がらせの手紙やファックス(私がひき逃げしたという内容)が届いており、そのことを職場の先輩に陳述書で証明してほしいと考えていたのですが、
先輩に証人尋問まではお願いできません。
(お休みを1日つぶしてしまうことになりますから。)
先輩の氏名住所を被告に知られると、今度は先輩までもが嫌がらせの対象になりはしないかと心配しているのです。
でも、先生のお話ですと、先輩の名前を知られずに、嫌がらせの証明をしてもらうことは難しそうですね。
証人の安全をはかる制度があるといいな。と思います。

そうそう、被告はまさしく「私はやってません」と主張しています。