社員の解雇が不当とされる可能性と裁判での対処法

当方、会社側の法務部の人間です。

先日、契約していた正社員の解雇に踏み切りました。その社員は仕事はよくできるのですが、人間関係等のトラブルが多々あり、勤務態度等もあまり良くはありませんでした(常識的な面で他会社の人間が引いてしまう程)。

正直な所、それが原因なのですが彼の今後の活動等を考慮し、口頭にて当月分給料+翌月分給料を支払うと言う事で一旦は落ち着いた様に見えたのですが、支払日になり、手当てを受け取った後に『不当解雇』を理由に裁判をすると言い出しました。

【質問1】
常日頃から事あるごとに裁判を持ち出す様な、いわゆる『裁判マニア』の様な方だったので、予想はしていたのですが、こちらに非はあるのでしょうか?

【質問2】
正直な所、会社の経営状況も芳しくなく、会社間の中でも彼が最も高給の中途採用でした。いざ裁判となった時、それらの給与明細等は『証拠文書』として有効なのでしょうか?つまり高年俸の方は解雇しやすいとお聞きしており。

【質問3】
解雇理由は協調性のなさという能力不足ですが。解雇理由としては弱いですか?

【質問4】
これは会社側は正直負けますよね?
解雇は最終手段と考えられていますので、これまでけん責や減給処分があるとか、再三指導してきたことなどの経過がない、最初の処分が解雇ということで、解雇理由はかなり弱いとも感じており。
この場合、期日の早い段階で、
裁判官からそれなりの心証開示っぽいことはあるでしょうか?
負けるのがわかってて1年以上も裁判をやり取りをするのも非効率ですし。

【質問1】
お書きいただいた内容からでは何とも言えないのですが、「裁判マニア」のような方となると、慎重に進めたほうがよかったでしょうね。
退職勧奨をして合意退職に持ち込んだほうがよかったものの、条件で折り合わなかったということかと思います。

【質問2】
高年俸の方だからといって、解雇をしても裁判所が会社側に有利な判断をするとは限りません。
むしろ、高い年俸を得ているくらいの人なのであれば、能力や働きぶりには問題がなかったとの評価もあります。

【質問3】
協調性不足というだけでは、一般論としては弱いと思います。
過去にどのような問題行動があったのか等にもよりますが、解雇が無効と判断される可能性はあります。

【質問4】
裁判といっても、通常の裁判もあれば労働審判もあります。
労働審判であれば、1度目の期日で心証がある程度開示されるとは思います。

【質問1】
『裁判マニア』というお言葉を聞いてピンと来たのが、平成30年3月28日付東京地方裁判所立川支部判決です。社内で録音を禁じる業務命令に違反したと懲戒処分後、会社が勤務成績不良で普通解雇した事案ですが、裁判所は、録音を嫌忌して自由な発言が妨げられれば職場環境が悪化するとして解雇を正当としました。この原告は、事ある毎に会話を録音すると言って実際に録音し続けていたため、職場環境の悪化を理由に解雇が有効とされた事案です。本件ではこれまでけん責や減給処分があるとか、再三指導してきたことなどの経過がないとのことですので確かにその点で会社に不利ではありますが、「人間関係等のトラブルが多々あり」とのことですから、事実上の口頭注意などは日常的に行われていた可能性もあるかもしれませんし、就業規則上の風紀違反なども解雇理由に加えることができるでしょう。裁判例と同様に職場環境が悪化するレベルであれば証拠の積み上げ方次第で、会社側に対する裁判所の心証を改善する余地はあるかもしれません。

【質問2】
高年俸だから解雇しやすいということはありません。高年俸に見合った責任の重さに対して実績が見合っていないとの証拠があれば使えますが、「その社員は仕事はよくできる」とのことですから、本件では該当しないでしょう。

【質問3】
「協調性のなさ」を一般論として指摘するだけでは解雇理由になりません。具体的な証拠を積み上げて、「協調性のなさ」の程度がどれほど激しいのかを示すことができるかどうかです。

【質問4】
訴訟であれば勝つか負けるかの問題で1年以上かかる可能性はありますが、解雇された労働者は解雇を争うのと同時に転職を考えますから、争いが長引くことを好まない傾向があります。そうすると労働者が訴訟ではなく労働審判を選択する可能性がありますが、労働審判では調停が原則なので勝つか負けるかではなく、裁判所が金銭解決で間を取りに行く傾向があります。その場合、勝てるとまで言えなくとも負けを小さくするためにできるだけ証拠を積み上げるという対策が考えられます。質問1でご説明したとおり、職場環境が悪化するレベルであれば証拠の積み上げ方次第で、会社側に対する裁判所の心証を改善することで、金銭解決の金額を低く抑えるよう努力するのは必要かと思います。

田中先生
ご丁寧なアドバイスありがとうございます。

会社側は不利なのは確定ですよね?
我が社は社長が子どものような感じなのでいつもこんな感じな揉め事になります。

⇨高年俸の方だからといって、解雇をしても裁判所が会社側に有利な判断をするとは限りません。
むしろ、高い年俸を得ているくらいの人なのであれば、能力や働きぶりには問題がなかったとの評価もあります

高年棒だから
期待外れであったとの理由で
即日解雇しやすい!
などど社長も幹部も言っておりますが
いつも裁判では負けております。
田中先生のアドバイスどおり
そういうことですね?

⇨ 協調性不足というだけでは、一般論としては弱いと思います。

会社批判も繰り返しているから解雇にした!
とも書いてありました。
会社批判ではなく、
会社改善のための話はしましたが。こんなのも解雇理由になりますか?

佐藤先生ありがとうございます。

⇨ 職場環境が悪化するレベルであれば証拠の積み上げ方次第で、会社側に対する裁判所の心証を改善することで、金銭解決の金額を低く抑えるよう努力するのは必要かと思います。

人間関係のトラブルというのも
実は社長が
感情的に、個人的に、思っているだけで。
"あいつは俺の意見にいつも歯向かうから
やりにくい"
との感じが強く。
私が見た感じ、
社内のトラブルというのも
それは正義感の強い方なので
社長や経営幹部と
会議でよく言い合いをしているなーとは
感じますが。
それが会社に損害を与えているかどうかは
なかなか客観的には判断しにくく。
社畜のイエスマンからすると
幹部に逆らうシーンはドン引きですが。

この感じですと、裁判官の心証は良くないですか?
会社側は厳しいですよね?

ご状況をうかがう限りですが、解雇無効になる可能性は相当程度あると思います。
会社批判といえば会社批判なのでしょうが、他方で会社改善のための発言だと言われてしまえばそれもそうでしょうし、厳しい状況にあるのは間違いないでしょう。