示談金は妥当か?アドバイスをお願いいたします。

先日19歳の娘がエスカレーターと駅のホームで、同じ男性に2回にわたりスカート内を盗撮される被害に遭いました。犯人は現行犯逮捕され、性的姿態撮影処罰法違反の疑いで捜査中です。

娘は浪人生で受験勉強中でしたが、事件後、以下のような精神的影響が出ています:
•夜間の不眠
•一人で電車に乗ることへの恐怖感
•盗撮時に携帯が当たった感覚のフラッシュバック
•アルバイトや塾への通学が困難に
•事件当時着用していたワンピースが着られない
これらの影響により、日常生活に支障をきたしています。

加害者側は弁護士を通じて示談を希望しており、私たちも早期解決を望んでいますが、加害者の行為を許すことはできません。そのため、示談金として80万円を希望しています。
(こちらが弁護士の依頼をするかどうかは、示談の内容で決める予定です。)

精神的被害の証拠として、以下の資料を提出可能です: 
•精神科での診断書
•大学共通テストの受験証明書
•塾やアルバイトの休み連絡(LINEの履歴)
•夫婦間での「眠れない」「電車に乗れない」とのやり取り(LINEの履歴)
このような状況で、示談金80万円は妥当でしょうか?逮捕時、他の盗撮写真もありましたので余罪もある状況です。また、示談交渉を進める上での注意点や、弁護士を依頼すべきかどうかについてもアドバイスをいただけると幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

性的姿態等撮影罪は近時新たに制定された犯罪であり、まだ明確な慰謝料相場が形成されているとは言えないところがあります。
 だだし、被疑者側としては、性的姿態等撮影罪の法定刑(三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金)を意識しつつ、示談交渉を行ってくることが想定されます。
 法定刑はあくまで科すことが可能な刑罰の範囲を定めたものであるため、実際に科される刑罰は法定刑の上限よりも低い場合がありますが、示談金をお決めになる上で一つの参考にはなるかと思います。
 なお、ネット上の示談金の情報は一つの参考にはなりますが、留意が必要です。
 そもそも、被疑者側•弁護人側からの立場から記載されていることも多く、被害者側(被害者支援をしている弁護士側)からするとネット情報は低額と感じることもあります(ネット上の相場情報よりも高い金額での示談•裁判経験もあります)。
 また、起訴の可能性(略式請求か公判請求か)、被害者として刑事処罰を望む度合い、刑事事件とは別に民事訴訟を提起する意向、被疑者側の経済状況等の事情によっても示談金の金額は変わって来ます。
 被疑者側に賠償資力があり、刑事処罰を回避する動機が強い場合には、100万円以上の示談金で示談が成立する可能性もあります。このような観点からは、お考えの示談金80万円の提示もあり得る金額と思われます。
 示談に際する留意事項としては、お嬢さんが行き来する場所や生活圏が推知できるような情報を被疑者側に知られないように留意した上で示談を締結すべきでしょう。
 このように色々考慮すべきことがありますので、可能であれば、被害者支援に精通した弁護士に相談•依頼し、適切なサポートをしてもらうのが望ましいように思います(弁護士に代理人になってもらえば、被害者側の住所としては、その弁護士の法律事務所の住所を記載できる等、被害者側の連絡先を被疑者側に教えずに示談することができ、被害者側の情報を守りながら示談することもできます)。
 なお、お嬢さんが成人しており、受験勉強中ということであれば、日弁連の委託援助制度という弁護士費用の援助制度が使用できる可能性があります。この制度を利用して弁護士にお嬢さんの代理人になってもらい、被疑者側と示談交渉等にあたってもらう方法もあるかと思います。

このたびはご丁寧なご回答をありがとうございました。
分からないことだらけで不安でしたが、法定刑をもとにした示談金の考え方や、被害者側の立場に立った具体的な実例などを教えていただき、大変参考になりました。
本来は区役所の無料相談を利用するつもりでしたが、キャンセル待ちでなかなか予約が取れず…そのような中で、今回このようにご丁寧にご回答いただけたことを本当にありがたく思っております。
また、「日弁連の委託援助制度」のような費用面での支援制度についても全く知らなかったため、教えていただけてとても心強く感じました。

ご多忙のところ真摯にご対応くださり、心より感謝申し上げます。いただいた内容をもとに、今後の対応にしっかり活かしてまいります。