ご質問のケースは、一般的に「請負契約」(民法第632条)に該当すると考えられます。請負契約では、受注者(ご相談者様)は仕事の完成義務を負い、注文者(クライアント)は完成物の引渡しと引換えに報酬を支払う義務を負います。しかし本件では、クライアント側が監修の戻しを行わず一方的に制作を中止したうえ報酬の支払いを拒んでいるようです。このような場合でも、(1)そもそも制作工程や修正回数について合意がなされていたか、(2)修正が繰り返されたにもかかわらず具体的な指示が得られずに制作が困難となった責任がどちらにあるか、(3)クライアントによる制作中止が「注文者の都合による解除」(民法第651条第1項)にあたるかといった点を確認する必要があります。
まず民法第651条第1項は、注文者は仕事の完成前であっても契約を解除できる旨を定めていますが、その場合、注文者は受注者に対してそれまでの仕事の成果に見合う報酬および損害を賠償する義務を負うと解されています。したがって、もしクライアントが「監修の判断がつかない」などの事情で一方的に制作を打ち切ったのであれば、受注者であるご相談者様としては「当初の打合せや修正要望に沿って可能な限り対応した」「それでもなおクライアント側の判断で制作が止まった」という経緯を示すことで、途中まで制作した分に対応する報酬(3Dデータ制作費)を請求できる可能性があります。
また、完成物としての最終的なクオリティが問題視されていても、修正指示が不十分かつ曖昧であった結果、完成に至らなかった場合は受注者の責任ではない可能性があります。加えて、裁判例上も、注文者都合で途中解除された場合には、受注者はすでに行った作業部分につき報酬請求権を認められる傾向が見られます。
以上か、、裁判等で争う場合には、契約書の内容はもちろんですが当初のヒアリング・修正依頼の具体的な内容、どの段階まで制作が進んでいたかなどの事実関係を詳細に検討することが重要です。書面やメールでのやり取り、修正指示履歴などを整理し、「受注者として契約履行のために必要十分な努力をし、それをクライアント側が一方的に中断した」という点を明確に示せば、3Dデータ制作代の請求が認められる余地は十分にあります。
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