Lineの登録名は個人情報で、民事・刑事告訴の対象になりますか。
こんにちは。
ある出会い系サイトでの掲示板を利用しました。自分が会った男性についてどんな人かを書き込めるものです。他者も閲覧可能です。業社だったとか、詐欺など、感想やその人の特徴を書き込みます。
私はある男性について、書いたところ、後日個人情報を流したから刑事・民事告訴する、また容姿について侮辱を得たから侮辱罪も告訴するとのことでした。弁護士を通じて近いうちに連絡があるとメッセージを受けました。
その書き込みサイトでは、その男性の年齢30代などざっくりしたもの、都道府県、会った月を書きます。特徴については、私は男性の髪型(はげ)、業種(会社名は書いてません)、男性のLINEの登録名(本名か分からない、平仮名二文字〇〇)を書きました。他には、ドタキャンされ返信なし、と書き込みました。
書き込みは反省しています。
LINEの本名か分からない登録名、業種(例えば広告業をしている)でも個人を特定することに当たりますか?男性から言われた民事、刑事告訴になりますか?
よろしくお願いします。
1 民事上の請求について
(1)結論
損害賠償請求される可能性があります。
(2)理由
ⅰ同定可能性について(本人と特定できるか)
LINEの名前であっても、ほかの情報と組み合わせることで、同定可能性が出てくる場合があります。
裁判例でも、オンラインゲーム上の名前で、オフ会が開かれていたという事案で、同定可能性を認めたものがあります。
ⅱプライバシー権侵害に当たるのか
お相手は、個人情報云々というご主張ですので、プライバシー権侵害を主張するかもしれません。プライバシー権侵害は、①私生活上の事実、または事実らしく受け取られるおそれのある事柄であること、②一般人の感受性を基準に公開を欲しない事柄であること、③一般に未だ知られていないことらがであること、の要件を満たした場合に成立します。
お相手が出会い系サイトを利用していたという事実について、「一般人の感受性を基準に公開を欲しない事柄か」が問題となりそうです。これについてはずばりの答えはありませんが、要件を満たす可能性は十分にあると思います。つまり、プライバシー権侵害になる可能性は十分にあります。
ⅲ名誉感情を害しているのか(侮辱にあたるのか)
おあいてを「はげ」ということが名誉感情を害するのかですが、「態様、程度からして社会通念上許される限度を超える」と評価された場合に、名誉感情が侵害されたとされます。人によって評価は分かれるかもしれませんが、私の感覚では、頭髪の薄い方に「はげ」というのは、社会通念上許される限度を超えているように思います。よって、名誉感情を侵害している可能性があります。
ⅳまとめ
以上の検討から、ご相談者様がお相手の権利を侵害している可能性は十分にあります。そして、書き込みをご相談者様が行ったという十分な証拠があれば、損害賠償請求されるかもしれません。
2 刑事事件について
もし、お相手が刑事告訴したとしても、今回のような書き込みで立件して、ご相談者様が処罰される可能性は低いのではないかと思います。
ご回答をありがとうございます。
出会い系をやっている男性の中で
例)
・東京都住まい
・広告業
・50代
・髪型の特徴
・りく(登録名)
だけであれば、
①個人を特定するのは難しいですよね。この書き込み以外にプラスして情報があれば特定でき、損害賠償請求をうける可能性があるということですね?
②個人の特定とは、〇〇会社の□□さん、と第三者からも分かるものですよね(>_<;)
③また、侮辱罪は個人が特定できなくても、書き込んだ側が罪に問われますか。
質問があり、お手数をおかけしますが、よろしくお願いします。
まず、同定可能性に関する裁判例を調べてみましたので、引用します。
東京地判 平成29年9月15日
「ある記事によって名誉を毀損された者と原告の同定可能性については,原告と面識があり,又は原告の履歴情報を知る者において,その知識を手がかりに当該記事が原告に関するものであると推知することが可能であり,当該記事の読者の中にこれらの者が存在した可能性があるか否か,また,これらの読者の中に,当該記事を読んで初めて,原告についてのそれまで知っていた以上の情報を知った者がいた可能性があるか否かによって決すべきである(最高裁平成12年(受)第1335号同15年3月14日第二小法廷判決・民集57巻3号229頁)。」
「そうすると,原告を知る者において,「X1’やん」が原告を指し,本件ツイートが原告に関するものであると推知することは可能であり,本件ツイートの閲覧者の中にこれらの者が存在した可能性があり,また,これらの閲覧者の中に,本件ツイートを読んで初めて,原告についてのそれまで知っていた以上の情報,すなわち本件事実を知った者がいた可能性があると認めることができる。」
「これに対し,被告は,本件ツイートから判明する事実は,①「X1’やん」というツイッター・アカウント,②顔がほとんど認識できない顔写真(本件顔写真),③アナルセックスをしたこと,の3つしかなく,これらから原告を特定することはできない旨主張する。たしかに,本件顔写真等の本件ツイートから判明する事実のみによって,「X1’やん」が原告であると特定することは困難である。しかしながら,「X1’やん」と原告の同定可能性は上記事実のみを基礎として判断されなければならないものではなく,上記のとおり,原告を知る者において,従前から有していた情報に本件ツイートによって新たに入手した情報を併せて推論すれば,「X1’やん」が原告であると特定することは十分可能であるというべきである。」
このように、同定可能性については、書き込みをされた人と面識があり又はその人の履歴情報を知るものを前提として判断されています。
しかも、当該投稿のスレッドにおいて、別の投稿を併せ読むと、書き込みをされた人と面識がある人が、書き込みをされた人と推知することができるかもしれません。
先の裁判例を前提に回答します。
1 ①について
確かに、お書きになられている情報だけでは、特定は難しいかもしれません。
掲示板の流れ次第かなと思います。
引用した裁判例のように、書き込みをされた人と面識がある人を前提に判断されるので、
その人が、当該掲示板や出会い系サイトでの有名人だった場合に、危ないかもしれないと
思います。
2 ②について
①と重なりますが、全くの無知な人ではなく、書き込みをされた人の情報を持っている人が
基準となって特定されるか否かが検討されます。
3 ③について
誰に言っているか全くわからなければ、侮辱にはならないでしょう。
しかし、被害者が、「自身が被害者であるという合理的な説明」ができる場合、
侮辱罪が成立するのではないかと考えます。