養育費未払い、養子縁組後の支払い義務や強制執行は?
元妻が再婚、子どもが養子縁組をしたと面会のときに言われ、その時もう養育費はいらないと言われたので以降支払いはしていません。
ですが、それから5年経って今さら未払い分を払えと言われました。
口約束で何の証拠もありません。
養子縁組して以降、面会もやめてしまいました。
公正証書があるのですが、これは強制執行されてしまうのでしょうか…
公正証書がある以上、形式的には差押えができることになります。本来、公正証書や調停調書などの債務名義が作成されている事案では、養育費を変更する場合も書面を残すべきでした。
ただ本件では、お子さんが再婚相手と養子縁組していること、その時期に養育費の支払いが停止していること、といった周辺事情から、口頭の養育費免除の合意が立証できるかもしれません。まずは、養子縁組により当事者で養育費免除の合意が成立したことを理由に過去分の支払いを拒絶すること、及びもし公正証書に基づいて強制執行すれば違法な強制執行として請求異議などで対抗する意思があることを内容証明郵便などで伝えた方がよいかもしれません。もし強制執行の可能性があるなら、弁護士へ相談・依頼した方がよいと思います。
元妻の再婚及び再婚相手と子の養子縁組判明後の養育費の減免については、以下の裁判例(東京高裁平成30年3月19日決定)が一つの参考になります。
「夫婦間の関係及び親の未成熟子に対する関係では,扶養することがその身分関係の本質的要素となすことから,その間には,相手方に自己と同程度の生活を維持する義務(生活保持義務)があるとされている。
ところで,実母の再婚相手と未成熟子が養子縁組をした場合には,養父となった者は,当該未成熟子の扶養を含めて,その養育を全て引受けたものであるから,実母と養父が,第一次的には,未成熟子に対する生活保持義務を負うこととなり,実父の未成熟子に対する養育費の支払義務はいったん消失するというべきであり,実父は,未成熟子と養父の養子縁組が解消されたり養父が死亡したりするなど養父が客観的に扶養能力を失った場合等に限り,未成熟子を扶養するため養育費を負担すべきものと考えるのが相当である。」
「養育費変更の始期については,変更事由発生時,請求時,審判時とする考え方がありえるところ,いずれの考え方にも一長一短があり,一律に定められるものではなく,裁判所が,当事者間に生じた諸事情,調整すべき利害,公平を総合考慮して,事案に応じて,その合理的な裁量によって定めることができると解するのが相当である。」
→ 以下の事情等から養子縁組した時点に遡って養育費の支払義務が消失したと判断されています。
•義務者は、養子縁組の事実を知らなかった時期までは養育費減額の調停や審判の申立てをすることは現実的には不可能であったから、養子縁組の日から養子縁組を知った日までの養育費の支払義務を負わせることはそもそも相当ではない
•それ以後の期間についても、権利者は、養子縁組によって再婚相手が子どもの扶養を引き受けたことを認識していたことに照らすと、義務者が減額の調停や審判を申し立てなかったとしても、義務者の養育費支払義務が変更事由発生時に遡って消失することを制限すべき程に不当であるとはいえない
あなたとしては、弁護士に相談する等して、元妻側の発言(元妻が再婚、子どもが養子縁組をした)の裏付け確認をした上で、上記の裁判例等を参考に、元妻側に養育費の強制執行等を行わないよう求める通知を行う、元妻側が強制執行に出てきた場合には請求異議等の対抗手段をとることが考えられます。