経歴詐称での解雇は可能か?不当解雇のリスクは?

経歴詐称で解雇にできますか?

履歴書での5年のサバ読みがわかりました。
有名メーカーに8年在籍も
3社を合算しての8年で、
前職は業務委託フリーの3年で、
前前職はその有名メーカ3年で、
前前前職は別の中小メーカー2年です。

【質問1】
この場合、解雇後に、不当解雇で訴えられた場合、履歴書が証拠になりますでしょうか? 
前職にヒアリングをしたりして、
うその経歴の日ありん記録を残さないといけないですか?

【質問2】
そもそも、こんな理由では解雇は無理ですか?こんな理由で解雇理由を作ると、裁判官は相手にもしないですか?

【回答1】解雇後に不当解雇で訴えられた場合には、履歴書が証拠になると思います。前職にヒアリングしても教えて貰えないことが多いので、きちんと本人にヒアリングをして認めさせるというプロセスを取った方がよいかと思います。

【回答2】まず、職歴詐称による解雇の基準ですが、職歴は使用者がその労働者を採用するかどうかの決定的な動機となる事情です。労働者を採用した後の仕事の内容や賃金など労働条件の決定に大きく影響するものです。その業務の経験がないのにかかわらず、あるかのように誤認させて、高額な賃金を不当に得ていたなどの事情がある場合には、使用者に対する詐欺行為に該当し、懲戒解雇とすることも充分に可能と考えられます。

あるいは、「未経験者を採用する方針」をとっていた使用者に対し、経験者であるにもかかわらず、未経験と偽って採用された場合には、企業秩序を損なうとして、解雇が有効と判断される傾向もあります。採用時により具体的な職務経歴(①従事したプロジェクトの内容、②職務、③地位などの詳細)については積極的に質問をしない限りは労働者側に申告の義務はありません。ですから、後で使用者が質問をしなかったことに関して責任を問うことはできないという点には注意をしておく必要があります。

また、仮に、経歴詐称によって採用された場合であっても、その後の勤務態度が良好であるような場合、労働契約の目的となる職務の遂行に支障はなく、また、企業秩序を損なうこともないとして、もはや会社に対して積極的に労働力の評価を誤らせる詐欺行為とはいえず、解雇を行う客観的かつ合理的な理由がないとされる場合があります。

このような場合には、労働者を採用した後の期間の経過と勤務に対する評価が問題となり、経歴詐称があったものの、試用期間を経てともかく当該従業員を本採用としたのであるから、当該従業員の詐欺によって会社は労働契約における重要な要素の錯誤に陥っていないとした裁判例(「第一化成事件」東京地判H20.6.10)もあります。