定期借家での浸水被害による早期退去の法的可能性について
現在、3年契約の定期借家に1年7ヶ月住んでいます。
住んでいる部屋は半地下で、強めの雨が降ると度々共用廊下が浸水し、玄関からの浸水(屋根はあるので完全に配管の逆流)、風呂やトイレ、洗濯機の排水溝からも逆流してきてしまい、入居して4ヶ月後と今年の7、8月連続で合計3回巾木の半分くらいの床上浸水をしました。(水嚢で排水溝を塞ぐなどの対策はしていますがそれでも浸水してきます)
初めて浸水をした時から対処して欲しいとずっと頼んでいたのですが、一向に改善されず、床上浸水は3回、共用廊下のみの浸水(足首くらいの水位)は5回以上に渡って発生しているため、浸水のせいでまともに生活ができないことを理由に退去したいと申し出たところ、天災なのでこちらに瑕疵はないし契約上定期借家なので退去は無理と言われてしまいました。
一年以上前から対処してくれと頼んでいたのにも関わらず何もしないのは管理義務を果たしていないということでは無いでしょうか?
毎回浸水するたびに布団や家財を買い替えたり(火災保険に保証がおりないか問い合わせたところ対象外なので毎回自費)、下水排水が溢れた床を掃除するのが大変で、雨が降るたびに浸水しないか心配になり、管理会社への不信感も拭えないので今すぐどうにかして退去したいのですが難しいでしょうか?
長期間にわたり管理会社とメールでのやりとりをしていますが、毎度返ってくる内容は配管の施工会社を探しているが断られてしまって施工に進めない、退去は認められない、契約満了までの家賃は払ってもらうなど同じ内容を言い回しを変えてのらりくらりしているように感じており、話が全く進まず頭を抱えています。
やりとりで1ヶ月以上前に私は◯月◯日に退去させていただきます。と明記しているので、その日に退去した場合、裁判を起こされる可能性はありますか?
定期建物賃貸借の場合、原則として中途解約は認められていません。
例外として、「転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。」(借地借家法第38条7項)という規定もありますが、ご投稿のケースは同項の要件をみたさない可能性もあり、別の視点からの対応も検討しておくべきでしょう。
ご投稿のケースでは、賃貸人側が修繕義務を果たしていない可能性があります。賃貸人が修繕義務を果たさない場合における賃借人の対応方法としては、以下のように、いくつかの方法があります。
①賃貸人は賃借人に対して「賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。」(民法第606条1項本文)とされており、裁判で修繕を求める方法があります。
②「賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき」や「急迫の事情があるとき」には、賃借人は賃借物の修繕を自ら行い、修繕に要した必要費を賃貸人に請求することもできます(民法第607条の2、608条)。
③賃料の減額請求という方法もあります。「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される」(民法第611条1項)。
④賃借人の修繕義務の不履行によって生じた損害について、債務不履行に基づく損害賠償請求を行う(民法第415条)。
⑤債務不履行に基づく賃貸借契約の解除を行う(民法第541条、542条1項)。
「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。」(民法第541条)。
より詳しくは、賃貸借契約書、浸水被害に関する証拠等を持参の上、お住まいの地域等の弁護士に直接相談してみて下さい。