養育費調停 調査嘱託について
養育費調停が審判移行しております。
当方、申立人です。
現在、0歳児監護のため無職ですが、
相手方より前職場へ調査嘱託を申し立てたいと書面がありました。
しかし、相手方は前職場の詳細を何も知りません。
"調査嘱託の申立てをするに際しては、調査先・調査対象に関し、一定の情報があることが必要です"
↑とWEB上で見かけましたが、前職場の名称や住所の詳細を知らない場合、申立てること自体が出来ないのでしょうか?
調査嘱託は、裁判所を介して特定の機関•団体
に必要な調査を求める手続きのことを言います。
そもそも、どこに所在するどの団体かが特定されていないと、裁判所としてもどこの団体に調査を求めればよいかがわかりませんし、
その調査が必要か否か判断がつきません。そのため、調査嘱託を求める側が嘱託先を特定して申し立てる必要があります。
【参考】民事訴訟法
(調査の嘱託)
第百八十六条 裁判所は、必要な調査を官庁若しくは公署、外国の官庁若しくは公署又は学校、商工会議所、取引所その他の団体に嘱託することができる。
なお、あなたのご事案では、0歳児監護のため無職というご事情があるようですが、相手方があなたの前職場に調査嘱託の申立てをしようとしている狙いは、あなたの前職場での収入状況を詳らかにして、あなたの潜在的稼働能力を立証することにあるのではないかと推察されます(前職の収入状況からすれば、あなたが働こうと思えば、このくらいの収入が得られるはずであり、その想定収入額をあなたの収入として認定して養育費の金額を決めるべきだというような考えに基づく主張かと推察されます)。
このような考え方に対しては、乳幼児を監護しており、働くことが現実的に難しいような場合には、潜在的な稼働能力をもとに収入認定すべきではないとする裁判例があるので、参考までにご紹介しておきます。
【参考】東京高裁平成30年4月20日決定 判タ1457号85頁
「原審申立人については、現在無職であり、収入はない。」「原審申立人(妻)は、歯科衛生士の資格を有しており、10年以上にわたって歯科医院での勤務経験があるものの、本決定日において、長男は満5歳であるものの、長女は3歳に達したばかりの幼少であり、幼稚園にも保育園にも入園しておらず、その予定もないことからすると、婚姻費用の算定に当たり、原審申立人の潜在的な稼働能力をもとに、その収入を認定するのは相当とはいえない。」「なお、本決定で原審相手方に支払を命じる婚姻費用は、長女が幼少であり、原審申立人が稼働できない状態にあることを前提とするものであるから、将来、長女が幼稚園等に通園を始めるなどして、原審申立人が稼働することができるようになった場合には、その時点において、婚姻費用の減額を必要とする事情が生じたものとして、婚姻費用の額を見直されるべきであることを付言する。」