誹謗中傷の開示請求中に依頼人が死亡した場合の対応について

誹謗中傷による開示請求中に、依頼人が亡くなってしまった場合はどうなりますか?

開示取り下げになりますか?それとも親族が引き継ぐことになるのでしょうか?

コンテンツプロバイダに対する裁判外の(任意の)開示請求を行っている途中で依頼者が死亡した場合、弁護士委任契約が当然に終了することになるため(民法653条1号)、開示請求自体が終了することになるでしょう。

一方、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示命令を申し立て、その手続中に申立人が死亡した場合は、当然に手続が終了することはなく、相続人が申立人の地位を受継することになります(非訟事件手続法36条)。
申立人に代理人弁護士が就いている場合、弁護士の代理人としての地位は消滅しませんが(非訟事件手続法24条による民事訴訟法58条1項1号の準用)、上記のとおり被相続人との関係では弁護士委任契約が終了しているため、代理人弁護士が引き続き手続を進めるためには、相続人との間で新たに委任契約を締結して手続代理委任状を提出する必要があります。
ただ、相続人による受継の手続が完了するまでは事実上手続が進まないため、例えば、コンテンツプロバイダに対する投稿時/ログイン時のIPアドレスの開示命令申立である場合は、受継後に開示を受けられたとしても経由プロバイダのアクセスログ保存期間に間に合わない可能性が出てくることに注意が必要です(コンテンツプロバイダに対する電話番号/メールアドレスの開示命令申立てや、経由プロバイダに対する氏名・住所の開示命令申立てについては上記のような問題は生じにくいでしょう)。