原状回復費用が高すぎる。借主死亡の賃貸物件の連帯保証人の相談です。
7月上旬に遠方に一人で住む母が亡くなりました。負債が想像以上に多かったため、私と姉は相続放棄をすることにしました。それは、相続を専門に扱っていただいている弁護士さんにお願いして対応していただいているのですが、住居が賃貸一軒家だったため、その家賃や退去に係る費用なども相続放棄しようとしたところ、私自身が以前(約13年前)に賃貸契約時に連帯保証人になっていたために相続放棄したとしても、家賃の支払い及び退去に係る費用は払ってもらわないといけないと管理会社から連絡がありました。
確かに、連帯保証人のサインは自分の筆跡ですし印鑑証明も添付してあったので、忘れていただけでした。管理会社の言い分はもっともであったため、8月分の家賃を支払い、8月中に退去をするべく家財道具の処分をし、8月25日に退去の手続きをしました。しかし、風呂場のガラスが割れていたり、勝手口の鍵がなかったりしたため、『原状回復作業時に費用をご負担くださいね。』と管理会社の方から伝えられました。
そこまでは良かったのですが、後日原状回復に係る費用の見積もりをメールにてお送りいただいたのですが、費用が76万円(税抜)でした。
内容としては、ざっくりですが
・ハウスクリーニング代 22万円
・畳替え 26万円
・ガラス修復代/ドアノブ交換代 6万円
・ネズミがかじった建具の交換修繕 22万円
という内容です。
この賃貸一軒家は14年ほど居住しており、現在でも築50年ほどの家ですので、さすがに経年劣化も含めてクリーニング代と畳替え代は支払いはしなく良いですか?と尋ねたところ、
・貸出時の大家さんは亡くなっていて、そのお子さんが大家の為昔のことはわかりません
・大家さんもこんなに汚い状態で返却されるなんて思っていなかった
・もともと敷金を払ってないから全額払ってほしい
・この地域には慣習として国交省のガイドラインは関係なく、ハウスクリーニング、畳替えも借主負担となっている
・ネズミが出たのも聞いてないので、借主の管理不足
・そもそも、安い値段で貸していたし、家賃支払いの遅延もあったし、こっちは赤字だった
などという理由で全額負担の意思を変えませんでした。
母が長年お世話になっていたため正当に払うべきものは払い円満に返却したいと思ったのですがあまりに話が通じないと思い、これは弁護士の方が間に入っていただくことにより費用負担を軽減し、解決できるものでしょうか?
損傷の状態や契約内容等の詳細は分からないのですが、結論から申し上げますと、大家さんの主張は法的に認められないものが多く、弁護士を入れることで費用負担の軽減が期待できると思います。
最近お母様がお亡くなりになったということは、令和に入ってから契約更新があり、改正民法(R2.4.1施行)が適用されると思われます(仮に更新がなくても基本的な考え方は一緒です)。後記のとおり、改正後の民法には、従来からの原状回復の考え方が明文化され、通常使用による損耗や経年劣化、賃借人に責任のない損傷については、原状回復義務を負わないこととされています。
ですので、基本的には、賃借人が通常使用を超えて損傷してしまったような場合に限り、原状回復義務を負います。その具体的な全国ルールを定めたのがご指摘のガイドラインです。
本件では、貸出時の大家の死亡(子がその法的地位を承継しています)、敷金を支払っていない(原状回復義務と無関係)、慣習が国交省のガイドラインに優先(合理的理由なし)、ネズミは借主の管理不足(賃借人に責任なし)、そもそも安い賃料・家賃遅延あり(原状回復義務と無関係)など、大家の主張の多くは法的根拠を欠くものですので、ガラス修復代/ドアノブ交換代はやむを得ないと考えらますが、それ以外は交渉の余地があると考えます。
相続をお願いしている弁護士先生や、お近くの弁護士先生にご相談されることをおすすめいたします。
(賃借人の原状回復義務)
第六百二十一条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
ご回答ありがとうございます。
『死人に口なし』と言わんばかりに”今更”的な内容で来られたので困惑していましたが、やはり代理人を立てて法的に対応したいと思います。