温泉旅館の入浴施設での転倒事故に対して安全管理責任を問いたい

2024年8月31日岩手県の温泉旅館の入浴施設で脱衣場から浴場に向かう下り階段(4段)で転倒し肩を骨折、救急車で病院に搬送され手術を含む治療を受けました。この温泉の注意書きには、泉質がアルカリ性でヌルヌルしており滑り易いので注意するよう記されていました。脱衣所から浴場に降りようと階段に差し掛かった時、左右何方にも手摺がないのに気付き、さらに注意しながら降りようとした瞬間、ゴムマットがヌルっとして、バランスを崩して転落してしまいました。私は、駅等でも手摺に手を掛けて降りているので、左右何方かに手摺が設置されていれば、全治3か月もの重症にはならなかったと思います。旅館側も滑って危険と認識していて、階段にはゴムマットの滑り止めを置いたり、客に対するアナンスもして安全への配慮は一応しています。しかし、それだからこそ、実際に滑ってしまった時の最後の拠り所である手摺を、最も危険な浴室内の階段に何故設置していなかったのか、この点において旅館の安全管理に対する責任を問えるでしょうか

類似の事案として、ホテルの大浴場の階段部分について、滑りによる転倒防止の安全対策が不十分であるとして債務不履行責任が認められた事例(盛岡地裁平成23年3月4日判決 判例タイムズ1353号158〜166頁)があります。

この裁判例では、ホテルが負っている義務として、「利用者に分かり易く転倒への注意喚起の表示をしたり、床についてさらなる滑りへの対策をしないのであれば、利用者の動線上に手すりを設置したりするなど、利用者が注意を払うことと相まって、トータルとして転倒を防止することができる程度の対策を講じたりすべき義務がある」と判示しています。
 そして、「温泉施設全般に関する注意喚起とは別に、分かりやすく本件階段部分に注意喚起に関する表示をすべきであったと思ったと考えられる。しかし、本件階段部分には注意喚起の表示はされていなかった」「また、本件階段部分の床について、ジェットバーナー仕上げにして溝をつけただけで、それ以上の滑りへの対策は特にされていなかったし、本件階段部分付近に手すりも設置されていなかった」等と判示されています。
 なお、あなたのご事案(階段にはゴムマットの滑り止めを置いたり、客に対するアナンスもされていた)との差異には留意が必要です。
 このような裁判例も踏まえ、旅館側は対応してくることが想定されます。そのため、話し合いでの解決が可能なレベルか、訴訟提起の可能性•解決見込み等についても、弁護士に直接相談してみるとよいかと思います。なお、あなたが加入されている保険(火災保険、自動車保険等)の特約に日常事故に関する弁護士費用特約が付いているかも確認してみて下さい。

請求できる可能性はありますが、
ポイントとなってくるのは、
・階段が設置された時期
・階段の高さ
・同種事故の有無
・利用者側の過失の有無
となります。

現場の状況含めて、個別のご相談をご検討なさってみてください。
診断書の費用など、掛かった費用に関しては、きちんと書類を残して置き、
リスト化しておくとよいでしょう。