中絶後の不十分な対応
中絶しろと相手家族全員に強要され、中絶費用払うと言っておきながら一銭も払わず連絡無視している人に対して慰謝料と別に謝罪文を書かせることはできますか?
あまりにも不十分な対応で家族全員に精神的苦痛を受けました。
相手本人
中絶費用折半については要求できると考えますが。慰謝料請求に関しては、ご記載の事情だけでは判断できません。謝罪文に関しては、相手本人に慰謝料支払い義務が有る場合に、当該義務を減免することを条件にしないと難しいです。
相手方家族
元々法的義務がないことからすると、家族への請求は困難だと考えられます。
中絶費用の折半を求めることは可能です。また、相手の対応が不誠実であることで、精神疾患を発症し、通院治療が必要になった等の事情がある場合別途慰謝料を請求することができる場合もあります。
謝罪文については強制をすることは難しいため、交渉の中で求めていくこととなるでしょう。
相手方の家族への請求は法的義務がないため難しいでしょう。
令和6年7月19日、大阪地裁において、
女性の避妊の求めを男性側が無視したことにより妊娠したというケースで、
「女性の性的な自己決定権を侵害する」と判断して、男性に慰謝料の支払いを命じた裁判例が出たようです(朝日新聞・2024年8月5日付朝刊【東京】・26面より)。
謝罪文の要求は、民法の仕組み上、名誉棄損の場合などに限定されているため困難ですが、相手方家族の関与の程度によっては、当該男性とともに、女性の自己決定権の侵害を理由として、共同不法行為責任の追及が可能な場合もあり得ようと思います。
上記の裁判例は、「避妊」関係ですが、「中絶」関係においても、同様に自己決定権の考えは妥当していく可能性があります。
女性の自己決定権の侵害を理由とした損害賠償請求構成は、社会の変化による新しい人権的な視点となると思われますが、1つの考えとしてそのような考え方も出てきていることを触れさせて頂きます。