経理担当者が無許可で資料送付・情報漏洩の懲戒解雇は可能か?
会社の経理担当が許可を得ずに資金繰表や役員報酬などの資料を特定の社員に送付し、
このあと全社員に共有していくと経営者側に発信し、結果経営者側が忖度して賞与の増加をした。
そのあとも特に契約などしていない私物を業務のために使用したと使用料の請求などをしてきています。
話し合いの場を設けても聞く耳を持たずこのような行為を続けています。
この場合この経理担当者に懲戒罰及び解雇通告はできるでしょうか?
尚、送付した資料は社内ではとどまらずに外部に漏れる恐れもあります。
就業規則で懲戒に関する定めがなされていることを前提にすれば、
懲戒解雇を含めた処分を行える可能性はあります。
ただ、具体的な態様による部分もありますし、解雇無効・バックペイのリスクを考えた場合、手順は踏んだ方がよいでしょう。
会社側として、当該従業員を懲戒処分に付すことは、就業規則の定め方にもよりますが一般的には可能かと思われます。
状況として、最初の処分で解雇をできるほど重い状況なのかを検討の上、場合によっては軽い懲戒処分により改善を求めることが必要となる場合もあるでしょう。
労働者は、労働契約に基づく付随義務として、信義則上、使用者の利益をことさらに害するような行為を避けるべき義務を負っており、その1つとして使用者の業務上の秘密を洩らさないという守秘義務を負っています。
本件では、資金繰表や役員報酬の資料は、業務上の秘密にあたると考えられます。
他方で、現時点において、特定社員への送付にとどまっており、「洩らしている」かどうかは、検討が必要と思われます。
もう1点、気になるのは、当該会社の経理担当者が、このあと全社員に共有していくと経営者側に発信し、結果経営者側が忖度して賞与の増加をした、とのことです。
かかる言辞は、脅迫罪や恐喝罪に該当し得る行為であり、こちらの方が懲戒事由に該当する可能性が高いとも考えられます。
いずれにせよ、懲戒事由に該当し、解雇が十分可能な事案と思われます。
他方で、A弁護士が指摘するように、解雇無効主張に備える必要がありますので、懲戒解雇にあたっては、手続きの履践も重要ですのでご留意ください。