判決前の犯罪で執行猶予中に逮捕された場合

執行猶予中に新たな犯罪を犯したら実刑になる可能性が極めて高いことはわかります。

ただ、同時期の別日にAとBの二つの犯罪を犯して、Aだけ被害届を出されて執行猶予判決が出て、執行猶予中にBの被害届が出されて、起訴された場合は判決はどうなるのでしょうか?

これも執行猶予中の犯罪になるのでしょうか?

執行猶予の期間内にさらに罪を犯した場合と過去の同時期に犯されていた余罪とでは、執行猶予の条件が異なります。

•執行猶予の期間内にさらに罪を犯した場合
→ 刑法25条2項の条件を満たすか否か(刑法25条1項よりも厳格な条件を満たす必要あり)

•過去の同時期に犯されていた余罪
→ 起訴手続上の都合等によって、たまたま別個に審判されるに過ぎないため、猶予の期間内にさらに犯された罪のように情状が重いとは言えない
→ 刑法25条1項の条件を満たすか否か

(最高裁大法廷昭和31年5月30日判決)
「おもうに、猶予の期間内さらに罪を犯した場合は、そのことだけで従前に刑の執行猶予を言い渡されたときの犯罪に比して情状が重いのであるから、かかる者に対して、刑法二五条二項によつてその刑の執行をさらに猶予する場合に、同条一項の場合よりもその条件を厳格にすることは、首肯することができる。しかし、確定裁判のあつたときのいわゆる余罪は、起訴手続上の都合等によつて、たまたま別個に審判されるに過ぎないのであつて、すでに裁判を経た罪と、いまだ裁判を経ない余罪との間には、猶予の期間内に犯された罪の場合のような情状の差はないのであるから、その間に刑の執行猶予の条件を別異にすべき合理的な理由は認められない。それ故、新設された刑法二五条二項は、猶予の期間内
さらに罪を犯した場合にその刑の執行猶予を言い渡すときの条件のみを規定したものであつて、いわゆる余罪につき刑の執行猶予を言い渡す場合の条件までをも規定したものではなく、余罪について刑の執行を猶予することができるかどうかは、刑法の所論改正後においても刑法二五条一項の定める条件を満たすかどうかによつて定まるものと解するのを相当とする。それ故、新設された刑法二五条二項は、猶予の期間内さらに罪を犯した場合にその刑の執行猶予を言い渡すときの条件のみを規定したものであつて、いわゆる余罪につき刑の執行猶予を言い渡す場合の条件までをも規定したものではなく、余罪について刑の執行を猶予することができるかどうかは、刑法の所論改正後においても刑法二五条一項の定める条件を満たすかどうかによつて定まるものと解するのを相当とする。」

【参考】裁判例検索から引用
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51344