口座売買による民事の質問です。

先日口座売買による裁判で(私が売ってしまった側です)罰金なしの執行猶予3年の判決がくだされました。
刑事の方は終わりましたが相手方の弁護士の方から返金をして欲しいとの連絡がきております。
自分が売ってしまった口座(1件)で詐欺を行われていた為仕方ないとも思いますが、正直自分が詐欺を働いた訳でも金銭を搾取した訳でもないので被害者の方に支払う義務はないと思うのですがどうなのでしょうか?

ご自身が売却した口座が詐欺等に使われ被害が出た場合、詐欺に関与していなくとも全額につき賠償責任が認められた判例もありますので、賠償義務がないとして争うのは難しいかと思われます。

ご回答ありがとうございます。
支払いの義務はないと言われたことがあるのですが、支払う場合全額支払わなければいけないのですか?

口座売買によって、その売った口座が詐欺などに利用された場合には、以下のような裁判例があり、他の裁判例でも同じような判断がなされております。

【東京地裁平成27年3月4日判決】
「他人名義の預貯金口座は、いわゆる振り込め詐欺等の犯行の道具として使用されたり、犯罪による収益の隠匿に利用されたりすることから、犯罪による収益の移転防止に関する法律は、預貯金口座を他人に提供する行為のうち一定の行為について刑罰をもって禁止している。

もっとも、被告が上記の口座提供行為を行ったのが、最初の本件送金がされた平成19年3月8日より前であることは明らかであるところ、同日の時点においては、上記の規定は未だ施行されていなかったものであるが、当時、既にいわゆる振り込め詐欺等が社会問題化していたことは、公知の事実であり、上記認定の経緯からすると、被告は、その提供する本件口座が他人によって何らかの不正な行為に用いられることのみならず、本件のような詐欺的な取引の代金の送金先として用いられ、他人が口座の名義人になりすまして送金された金員を引き出してこれを取得することを容易に知り得たものと認められる。

以上によれば、被告は、過失によって本件詐欺行為を幇助したものというべきであり、不法行為責任を免れない。」

基本的には、詐欺行為を幇助した場合には、共同不法行為責任を負うことになりますので、原則としては、損害の全額を支払うことになります。ただ、過失による幇助ということになると思われるので、過失相殺の主張をすることは可能であると思われます。本件のような事案について対応をしたことがある弁護士にきちんと依頼をして対応をする必要があると思われます。

全額かどうかについては関与の度合いや詐欺への影響の度合いによっても変わってはきますし、任意交渉で減額の余地はあるかと思われます。