中小企業庁向けの補助金用に作成した見積書の取り下げについて

私はフリーランスのWEBエンジニアとして活動しており4〜6月の契約が成立している状況で3月下旬に一方的に発注元から契約解除を申し渡されました。
上記とは別に、先方から10月までの発注に対する見積書を作成するように言われ、署名捺印して提出してあります。

見積もり作成の依頼が時系列的に契約解除の2週間程度前であったことから、この書類は実際に発注をする気もないのに補助金申請の便宜上作らされたと思っています。
そこで、先方に補助金の申請に当方の見積書を使わないことと、すでに提出されているなら今回の事態をこちらから審査等を行なっている機関に通報すると伝えました。

すると、以下のように返答が来ました。

> こちらにつきましては弁護士に確認をしましたところ、
> xx様がご連絡をされることを通じ仮に当社が補助金の決定取り消しとなった場合、
> 業務妨害罪に当たる行動となりますため、
> 当社としてはそういった形でxx様と本件が必要以上に争点が増えることを望んではおりませんため、
> ご理解ご協力のほどお願い申し上げます。

先方が言うように、私の名前で提出された書類で審査をしないように補助金を運用する機関に通報するだけで業務妨害になるのでしょうか?

業務妨害といっても4つの類型があり、妨害手段として、①虚偽の風説の流布(刑法233条)、②偽計(同条)、③威力(同234条)、④電子計算機損壊等(同234条の2)があります。本件で検討されるべきは、①でしょう。

虚偽の風説の流布とは、客観的真実に反する噂や情報を不特定多数又は多数人に伝播することをいいます。
本件では、10月までの見積書の作成依頼をされたにもかかわらず、その約2週間後に契約解除されたことは、客観的事実に反していません。そして、契約が解除されたのであれば、提出した見積書の効力は失われています。そうすると、ご相談者様の名前で提出された書類で審査をしないように補助金を運用する機関に通報することは、客観的真実に反する噂や情報を不特定多数又は多数人に伝播することにあたらないと考えられます。
したがって、虚偽の風説の流布にあたりません。

なお念のため、②も検討すると、偽計とは、人を欺き、あるいは人の錯誤又は不知を利用することをいいます。
本件では、10月までの見積書作成依頼⇒契約解除の流れを報告することは、発注元を欺き、あるいは発注元の錯誤又は不知を利用していません。
したがって、偽計にはあたりません。

以上から、業務妨害罪は成立しないと考えます。