配偶者居住権の評価方法
父は、私の母と約30年前に離婚して約25年前にAさんと再婚しました。
3年前に父が亡くなり現在はAさんが実家でひとりで住んでいます。相続財産はこの実家だけです。
相続人はAさんと私と妹の3人となりますが相続登記ができていません。
私と妹は実家を売却して3人で分与したいと考えていますが、Aさんは配偶者居住権を主張して生涯実家に住みたいと主張しています。
この場合、Aさんが亡くなるまでの配偶者居住権が認められるのでしょうか。
実家を貸した場合の賃料相当から考えると数年間でも法定相続分に相当するのではないかと思い短期の居住権は主張できないでしょうか。配偶者居住権の評価では考えないのでしょうか。
また、現在、建物の不具合箇所が見受けられ、すぐに適正な補修をおこなわなければ建物が朽ちていく心配があります。その義務についても取り決めをしたいと考えています。
まず、配偶者居住権が成立するためには、「遺産分割によって配偶者居住権を取得されたとき」などの要件(民法1028条)を充足する必要があります。
配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間ですから、Aさんが死亡するまで認められます(民法1030条本文)。
ただし、遺産分割協議もしくは遺言に別段の定めがあるとき、又は家庭裁判所が遺産分割審判において別段の定めをしたときは、その定めるところによります(同条但書)。
本件では、遺産分割協議は未了とお見受けいたします。
ここで、配偶者居住権は「無償で使用及び収益をする権利」(民法1028条1項)であり、賃料を支払う義務を負うことはありません。しかし、「配偶者が配偶者居住権を取得した場合には、その財産的価値に相当する価額を相続したものと扱う」(法制審議会要綱(https://www.moj.go.jp/content/001246034.pdf)第1の2注1)とされているため、配偶者居住権の取得そのものは無償ではありません。
建物の不具合箇所の話も含めて、配偶者居住権の取得の対価をどのように取り決めていくのかが、遺産分割協議において重要になってくるのではないか、と思料します。
ありがとうございます。Aさんとは話し合いにならないので判決によるしか無いかと考えていますが実家以外の財産や資力もなく配偶者居住権がどう判断されるのか、ご意見を伺い検討したいと思います。
裁判所の判断を求めるのであれば、遺産分割調停や審判をすることになります(参照:https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_12/index.html)。
建物について固定資産税評価額をベースにする評価、敷地利用権について借地権等と同じように評価する考え方があります(参照:https://www.moj.go.jp/content/001222142.pdf)。