"性的暴行を受けた被害者として、示談金の交渉について教えてください"
仕事の訪問先(犯人宅)で同性から性的暴行を受けました。
服の上から身体を執拗に触られ、陰部も触られました。
逃げようとしましたが、玄関側を封じられ、無理に抵抗すると暴行される恐怖から逃げ出すことができず、複数回に渡り陰部を触られました。
その後更に本格的な行為に及ぶ目的で部屋の中へ連れ込もうとされましたが、そのタイミングでどうにか逃げることができました。
既に警察へ相談し犯人は強制わいせつ罪?で逮捕されましたが、示談を申し入れられました。
ネットで相場を調べましたが、当時名刺(写真付)を渡していたため、その日以降その情報を元にストーカーに遭わないかなどの恐怖や、仕事への影響、精神的なダメージが大きいこと、また別件でも性犯罪で逮捕されており反省していないことなどを鑑み、出来る限りの示談金交渉をしたいと考えております。
このようなケースだと、一般的には上限いくらくらいまで交渉できるものでしょうか?
ご教示いただけましたら幸いです。
被疑事実はおそらく不同意わいせつではないかと思われますが、示談額は事案や加害者側の資力等によって異なります(50万〜200万円程度の範囲内で示談されているケースが多いのではないかと思います)。
性犯罪の性質上、被害者と被疑者(加害者)が直接連絡し合うのが望ましくない場合もあり、その場合には、弁護士を代理人にして交渉することが考えられます。
性犯罪に遭った被害者の方々に対するサポートの制度として、①委託援助(刑事事件対応に関する費用のサポート制度)、②民事法律扶助(損害賠償請求等の民事事件に関する費用のサポート制度)等があり、あなたのご事案でもこれらのサポート制度の適用を受けられる可能性があります。
犯罪被害に精通している弁護士であれば、この犯罪被害者法律援助という制度のことを知っていますので、お住まいの地域等の弁護士会や法テラスに問い合わせ、犯罪被害の専門相談を受けてみることもご検討下さい。
この委託援助制度を利用して、弁護士にあなたの代理人になってもらい、できる限りの増額を目指して相手方との示談交渉にあたってもらうとよろしいかもしれません。
清水先生
ご丁寧にご回答、サポート制度のご案内、
有難うございます。
文面で判断するのは難しいかと思いますが、
本事案で加害者側弁護士より示談交渉100万円以下の提示があった場合、
当方より100万円〜200万円程度まで交渉をすることは可能と思われますでしょうか?
ご教示いただけましたら幸いです。
仮に、民事で損害賠償請求訴訟を提起した場合、ご指摘程度の損害賠償が認定される可能性はあるかもしれません。
ただし、示談交渉の場合、加害者側に支払えるだけの資力があるのか、加害者本人以外に資金の協力をしてくれる人がいるのか、強制執行の対象となるような財産を有しているのか、他に損害賠償をしなければならない被害者がいるのか等の加害者側の資力事情によっても増額の可能性は異なってきます。
そのため、一概には言えないところがあり、示談交渉での解決を目指すのであれば、理屈上の認定金額の多寡のみならず、加害者側の資力事情も踏まえた交渉を試みる必要があります(加害者側の資力にも限りがあるため、他に被害者がいるような場合、他の被害者の示談が先行してしまうと、その分だけ自分が支払を受けられる金額が減ってしまう事態も起こりかねないため、留意が必要です)。
また、刑事事件中に示談に至れず、民事訴訟を提起する場合、その分の弁護士費用や時間•労力を要することになるため、費用対効果の観点も重要かと思います(なお、不同意わいせつ罪で公判請求される場合、損害賠償命令の申立てを活用することで、刑事事件の判決をした裁判所に損害賠償額の認定をしてもらう方法もあるため、公判請求の見込みがあるのか等も交渉の際の検討要素かと思います)。
以上のような見立てももった上で示談交渉にあたるのが望ましいと思いますので、委託援助制度を利用して弁護士に交渉を依頼をすることも前向きに考えてみて下さい。