口頭での名誉毀損・窃盗/器物損壊
知人Aと知人Bのトラブルです。1年ほど前の出来事です。泥沼です。
知人Aが所有していた物を、誰かに盗られました(後日、盗られたのではなく近くに隠されていたことが判明)。
知人Aは、状況的に知人Bの仕業だろうと考え、注意喚起のために他の多数の知人に「知人Bに物を盗られた。これは窃盗罪に該当する。近くに大事なもの置かない方が良い。皆も気を付けて」と言いまわったようです。
このことを知った知人Bから、「知人Aが噂を流しているんだろ?知人Aがやっている行為は名誉毀損に該当する。告訴する」と言われたそうです。知人Aは「そのような事実は無い」と否定したようです。
確かに伝えた人数は多かったものの、公の場で大声で言ったり、ネットに書いたりはしていないそうです。
①ネットに書き込んだわけではないので、知人Aの行為は名誉毀損には該当しないですよね?
知人Aは「犯罪の事実を証明できれば、名誉毀損には該当しない」というネット記事を見たようで、窃盗について告訴をして、知人Bの犯罪の事実を証明すると言っているようです。
②事件から1年以上経過しています。窃盗罪と器物損壊罪で微妙なラインなので、とりあえず非親告罪である窃盗罪で告訴しておいて問題ないでしょうか?
③もし窃盗罪ではなく器物損壊罪であると指摘された場合、「犯人を知らない」と言えば問題ないでしょうか。
(知人Bがおそらく犯人だろうという程度にとどまり、本当の犯人が誰かは未だわかりません)
④「犯人を知らない」と言ってしまうと、「確たる証拠もないのに知人Bが犯人であると噂を流した」ということで、逆に名誉棄損を認めてしまうことになるのでしょうか。
ややこしい事例で申し訳ございませんが、何卒よろしくお願い申し上げます。
知人Bが窃盗をしたと疑われる具体的状況、窃盗の具体的内容によりますが、言い伝えや憶測だけでは告訴したところで警察も対応を躊躇する可能性があります。告訴するにしても、知人Bが窃取したことを示す立証をどうするのかが問題となるでしょう。
知人Bからの名誉毀損の反論については、知人Aが不特定多数者に窃盗の噂を流布していたとなれば、知人Bが真実窃盗をしていない場合、成立する可能性はあると思います。
③のご質問については、器物損壊罪であると指摘された場合というのは、どういう意味でしょうか?
弁護士 金光誉樹 先生、ご回答ありがとうございます。
とても参考になりました。
また、分かりづらい文章で申し訳ございません。
■「隠す」という行為は器物損壊罪に該当するとネットで見ました。
■器物損壊罪の場合、親告罪のため、犯人を知った日から6か月以内に告訴する必要があると思います。
■本件は発生から1年以上経過しているため、「犯人を知らない」ということで告訴する必要があるかと思います。
■名誉毀損罪の場合、違法性阻却事由として、公共性/公益性/真実性というものがあるとネットで見ました。
知人Aが「犯人を知らない」ということで器物損壊罪で告訴した場合、真実性の要件を満たさず、
知人Bから「犯人を知らない(=たいした証拠もない)のに噂を流布したのであれば、名誉毀損罪が成立するのではないか」と反論されることを懸念しておりました。
ただ、金光先生の回答を拝見すると、
【「流布した時点で」真実かどうか分からない(真実性を証明する証拠が無い)状態であったとしても、「結果的に」真実であると証明されれば(知人Bの犯罪事実を証明することができれば)、名誉毀損は成立しない】ということだと思ったのですが、この理解で間違いないでしょうか?
長文で申し訳ございませんが、よろしくお願い申し上げます。
まず、「犯人を知らない」ということで、器物損壊罪で知人Bを告訴することはできません。
知人Bに私物を隠されたということで告訴するためには、当然、知人Bが私物を隠したことを裏付ける(少なくとも推認させる)事実・証拠を挙げる必要があるでしょう。
また、名誉毀損罪は、真実であっても成立します。
真実であっても、むやみに人の社会的評価を害する事実を公にするべきではないという考え方が名誉毀損罪の根底にあります。
真実性の証明による名誉毀損罪の不処罰の基本的規定は、刑法230条の2第1項にあります。
この規定では、以下の要件を満たす場合に、名誉毀損罪が不処罰になることが規定されています。
①名誉毀損行為が公共の利害に関する事実であること
②名誉毀損行為の目的が専ら公益を図ることにあること
③事実の真実性が証明されたこと
これは、あなたの質問で挙げられている公共性/公益性/真実性に対応するものです。
①公共の利害に関する事実とは、開示されることで公共の利益が増進される事実と解されます。
そのため、一般の人の私生活(プライベート)に関する事実については、原則として公共の利害に関する事実ではありません。例外的にその人の社会的影響力・社会的活動の性質(芸能人や政治家、スポーツ選手など)によっては、公共の利害に関する事実に該当することがありますが、知人Bはそのような人ではないと思います。
したがって、本件では、知人Aが告訴することは難しく、むしろ知人Bからの反論が認められる可能性があります。もし勤務先などで私物が隠されたということであれば、防犯カメラの設置などで今後の防止策を考える必要があります。
とても詳細なご回答、ありがとうございます。
疑問が全て解決いたしました。
感謝の気持ちでいっぱいです。